ALVAS JOURNAL

ドラッカーと会計の話をしよう(林總著 2010年‎ KADOKAWA/中経出版)~利益はガソリン、目的地は別にある~

こんにちは。荻原です。

今回も引き続き、トップセールスの本棚をインタビュー形式でお届けしていきます。本日、インタビューに答えてくださったのは、12年間、経営者として会社を率いてきた代表取締役CVOの高橋さんです。

経営における会計の本質的な役割と、利益の捉え方に関する新たな視点を提供してくれる一冊「ドラッカーと会計の話をしよう」をご紹介いただきました。
是非、ご一読ください。

 

目次

    1. 「ドラッカーと会計の話をしよう」はどんな書籍?

    荻原:本日は、よろしくお願いします。はじめに、おすすめの書籍について簡単にご紹介お願いします。

    高橋:私が本日、ご紹介するのは『ドラッカーと会計の話をしよう』という本です。著者は林總さんという方で、2010年に出版された書籍です。

    この本の中心的なメッセージは、「利益を出すこと自体が会社の目的になることはない」というものです。会社経営における利益やコストの捉え方について深く掘り下げており、数字の裏にある経営者の意思決定や価値観を理解することの重要性が説かれています。

    一般的に会計を学ぶ際には財務諸表の読み方から勉強をスタートする人が多いのですが、この本はその前段階として、会計の本質的な意味を考える機会を与えてくれます。正しい会計を学ぶ上での重要な基盤を築くことができる一冊だと思います。

    荻原:なるほど。ビジネスは会計が命とも言われますからね。著者の林さんはどのような経歴の方なのでしょうか?

    高橋:林さんは、中央大学を卒業後、外資系の会計事務所や監査法人でキャリアをスタートされました。その後、ご自身で会社を設立し、管理会計システムの設計・導入のコンサルティングや講演活動を行われている方です。公認会計士としての専門知識を持ちながら、実践的な経営コンサルティングにも携わっている方ですね。

    荻原:かなり実践的に会計を学ばれた方なのですね。

    2. 「ドラッカーと会計の話をしよう」との出会い

    荻原:この本との出会いを教えていただけますか?

    高橋:本書は、アルヴァスデザインのパートナーでドラッカー学会理事でもある藤田勝利さんからご紹介いただきました。ドラッカーの理論を学んだ人が薦めるほど、本書には重要な視点が詰まっているのだと感じ、本書を手にしました。

    本書で印象に残った部分は色々あるのですが、一番共感できたのは、著者が公認会計士として8年ほど仕事をする中で感じた疑問が書かれている部分でした。というのも著者は原価計算システムの設計などを手がける中で、「数字の計算はできるようになったけれど、それが実際の経営にどう役立っているのかわからない」という壁にぶつかったそうです。

    経営者は期末に意図的に物を購入するなどして、利益を操作することも可能だからです。そうなると、財務数字から会社の内部活動の実態が見えなくなってしまうというわけです。

    荻原:確かに元も子もない話ですが、実際に操作は可能ですね。

    高橋:そうですね。著者はこれを医師に例えていました。医師が体の仕組みや手術のやり方は詳しいのに、患者の気持ちを理解できない。技術的な知識だけでは、本当の医療に携わる人間として十分ではないように、数字だけを読み解けるようになっても、会社の中にある「志」のようなものは見えてこない。そんな気づきから、著者はドラッカーの思想と出会い、会計の捉え方を変えていったようです。

    荻原:医師の例えは非常にわかりやすいですね。確かに病院で「この医者は信頼できる」と感じる場合と、「この医者に診てもらって大丈夫かな」と不安に思う場合がありますよね。

    高橋:そうなんです。もちろん技術的な知識や体のことに対する理解は必要ですが、それだけでは不十分なんですよね。会計も同じで、数字を読み解く技術だけでなく、その背景にある経営の意思や目的を理解することが重要です。

    3. 「ドラッカーと会計の話をしよう」の核心とは?

    荻原:本書の中で特に印象に残ったポイントはどのようなところでしょうか?

    高橋:私が最も印象に受けたのは、「利益の本質的な役割」についての考え方です。私なりの解釈になりますが、利益はガソリンのようなものだと思っています。

    ドライバーにとって、ガソリンを切らさないことは重要です。ガソリンがなければ車は動かないからです。しかし、ガソリンを入れること自体が車に乗る目的ではなく、目的地に向かうための手段にすぎません。

    会社経営も同じで、利益は切らしてはいけないものです。経営者が利益ゼロになりそうな時に、一時的にガソリンスタンドに寄って回り道をするのは責任として必要なことです。しかし、そのガソリンスタンド自体は目的地ではなく、再び本来の目的地に向かうための手段にすぎません。

    会社経営でも同様に、利益がなくなってきたら、短期的に利益を蓄えるための活動が必要になることはあります。ただし、それ自体が目的化してはならないのです。会社が大切にする「何のために」というフィロソフィーを忘れてはなりません。

    別の例えでいうと、利益は空気のようなものです。空気がなければ人間は死んでしまいますが、空気を吸うために生きている人はいませんよね。より幸せになるために生きているわけです。利益と空気はそういった意味で似ていると思います。

    荻原:ガソリンや空気に例えるのは初めて聞きました。とても分かりやすかったです。

    高橋:ガソリンの例えは自分なりに本書の内容を解釈したものですが、空気の例えは、この話をした際に生命保険会社の方から「それはまさに空気のようなものですね」とフィードバックを頂きました。確かにそうだなと思って、以来よく使うようになりました。

    ただ、これは私の総合的な感想であって、本書にこの例えがそのまま書かれているわけではありません。本書は前半で利益の捉え方、後半でコストの捉え方について述べられていて、最後に経営の真髄について触れられています。自分で解釈する力が求められる本だと思います。

    荻原:なるほど。でも非常に面白いお話が聞けました。ありがとうございます。

    4. 「ドラッカーと会計の話をしよう」から得た気づきと行動の変化


    荻原:この本を読んだことで、実際に経営において何か変化はありましたか?

    高橋:利益の話をするタイミングとしないタイミングを使い分けられるようになりました。

    以前から売上や利益の話ばかりするのは避けていましたが、本書を読んでからは「利益について話すべき時」というのが明確になったように思います。

    例えば、コロナ禍の2020年頃、私たちの会社でも給料を削る必要が出てきた時期がありました。その時、「給料の高い人から順番に削っていく」という話をしたことを覚えています。こういった厳しい決断をする際も、利益はあくまで手段であり、会社の目的ではないという視点を持ち続けることができました。

    また、コスト削減について本書では重要なことが書かれています。「5,000,000ドルのコストを一割削減するのと、50,000ドルのコストを一割削減するのとでは、労力はそれほど変わらない。だったら、より大きな5,000,000ドルのコストに焦点を当てるべきだ」という考え方です。

    さらに、コスト削減の一番インパクトのある方法は「その活動をやめること」だとも書かれています。会社で何かをやらないと決めることは実は非常に重要なのです。

    何よりも、「コストカットは会社を滅びに誘う」という視点が印象的でした。会社が本当にやるべきはコストの管理ではなく「富の創造」です。価値を創造することでしか、本当の収益は得られないということですね。

    荻原:なるほど。利益の捉え方だけでなく、コスト削減の考え方についても深い洞察がありますね。「富の創造」という言葉はかっこいいですね。

    高橋:そうですね。「富の創造」は「価値の創造」と同じことだと思いますが、非常に私も好きな言葉です。

    5. 「ドラッカーと会計の話をしよう」はどんな人におすすめ?

    荻原:この本はどのような方におすすめですか?

    高橋:事業マネジメントの立場にある人には非常におすすめです。社長だけでなく、事業部長クラスの方にもぜひ読んでほしい一冊です。できればマネージャー以上の方にも読んでいただくと良いと思います。ただ、一般的な課長クラスの方には少し難しい内容かもしれません。

    本書は基本的に「考え方」について書かれているのですが、実践的な「やり方」にも紐づきやすい内容になっています。コスト削減の考え方や、会社として何をやらないかを決める重要性など、実務に直結する洞察が多いです。

    特に、数字だけでなく、その背景にある経営の意思決定や価値観を理解したい方には大きな気づきを与えてくれるでしょう。会計を単なる技術としてではなく、経営の本質を映し出す鏡として捉えたい方にこそ読んでいただきたい一冊です。

    荻原:高橋さんのお話を聞いていると、この本はただの会計本ではなく、経営哲学に近いものを感じます。利益を「ガソリン」や「空気」に例える視点は、多くの経営者や事業責任者の方々に新しい気づきを与えてくれそうですね。最後に、本書の学びを、仕事に活かすとしたら何から始めると良さそうでしょうか?

    高橋:そうですね。例えば、

    • 事業の目的が「利益を出すこと」にすり替わっていないか?
    • コスト削減が目的化していないか?
    • 「富の創造」を意識した経営ができているか?

    これらを見直すことからスタートするのはいかがでしょうか。経営の本質に立ち戻るきっかけになるかもしれません。
    ぜひ一度、本書を手に取ってみてください。

    荻原:本日は、ありがとうございました。

    本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒ドラッカーと会計の話をしよう

    〇トップセールスの本棚とは?
    【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
    営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
    ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。

    荻原エデル

    社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
    趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。

    高橋 研

    代表取締役 CVO
    早稲田大学大学院理工学研究科終了後、株式会社ファンケルに入社。
    その後、30歳を節目に営業の世界に飛び込み、多くの会社の教育支援に携わる。
    2013年株式会社アルヴァスデザイン設立。2018年「実践!インサイトセールス(プレジデント社)」出版。

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