リクルートの営業コンサルが教える 自分で動く若手営業の育てかた(的場 正人著 2023年 日本経済新聞出版)〜「今どきの若手」を知ることから始まる真の人材育成〜
こんにちは。荻原です。
今回も引き続き、トップセールスの本棚をインタビュー形式でお届けしていきます。本日、インタビューに答えてくださったのは、アルヴァスデザインでチーフプロデューサーとして活躍中の岩脇さんです。
営業マネジメントに役立つ一冊として「リクルートの営業コンサルが教える 自分で動く若手営業の育てかた」をご紹介いただきました。
「今どきの若手がわからない」と感じているマネジメント層必読の内容がつまった一冊について、岩脇さんに詳しくお話を伺います。
是非、ご一読ください。
目次
1. 岩脇さんが推薦する『自分で動く若手営業の育てかた』の魅力とは?
荻原: 本日は、よろしくお願いします。はじめに、今回ご紹介いただく書籍について簡単にお教えください。
岩脇: はい、今回ご紹介するのは『リクルートの営業コンサルが教える 自分で動く若手営業の育てかた』という本です。著者は的場正人さんで、リクルートマネジメントソリューションズのエグゼクティブコンサルタントとして営業組織強化に携わっている方です。
この本の特徴は、タイトル通り「自分で動く若手の育てかた」について具体的に書かれていることです。営業職にフォーカスしているため、営業マネジメントに悩んでいる方には特に参考になると思います。
荻原: なるほど。リクルートの営業コンサルが書かれているということで、実践的な内容が期待できそうですね。
岩脇: そうですね。実は冒頭に印象的な一文があります。
それは、「私は営業がとても面白く、価値があり、成長できる仕事だと心から信じています」という一文です。営業の価値を広めていきたいという思いが込められている点で、アルヴァスデザインが掲げる理念とも共通するものを感じました。
また、本書は、営業テクニックやマネジメント理論を教える本ではなく、「今どきの若手を知ること」から始まり、どうすれば彼らが自分で動けるようになる環境作りができるかに焦点を当てています。
荻原:非常に気になる内容ですね。
2. 現代の営業環境はなぜ難しくなったのか?
荻原: 特に印象に残ったのはどの部分になりますか?
岩脇:第一章の「若手を知る」部分が圧倒的に勉強になりました。ここに他では得られない価値を感じました。
荻原:具体的にはどのような内容でしょうか?
岩脇:今の若手と昔の若手が全然違うということを前提に、その違いを3つの観点で説明しています。
それは「仕事」「職場環境」「若手そのもの」の変化です。
まず「仕事」の変化についてです。
本書では、「営業の仕事が明らかに難しくなっている」という指摘があります。これは若手だけでなく、営業職全体に言えることです。
荻原: 具体的にはどのような点で難しくなっているのでしょうか?
岩脇: 一番大きいのは、商品やサービスの差別化が非常に困難になっていることです。昔であれば、例えば携帯電話ならドコモ、au、ソフトバンクの3社程度で、「うちは電波がいい」「うちは●●のコンテンツが充実している」といった明確な差別化ポイントを示しやすかった。
でも今は、どの会社も似たり寄ったりのサービスを提供しているので、競合他社との違いを顧客に理解してもらうのが非常に困難になっています。マーケティングの3C分析で言うと、競合他社(Competitor)と自社(Company)の重なる部分がほとんどなくなってしまっているのです。
荻原: なるほど。なんだか今のYouTuberを想起させられました。昔は、クオリティーよりも動画そのものに価値があり動画を出せば注目されやすかったですが、今は数多のクリエイターがいてそれなりのクオリティーがないと差別化が困難になっていますよね。
岩脇: まさにその通りです。スマホさえあれば誰でも始められるので、今のYouTubeに参入障壁はありません。ただ、その中で「僕のYouTubeは他と違ってこうです!」と言えるコンテンツを作るのは本当に難しい。よほど突出したものでないと差が見えづらくなっています
もう一つの大きな変化は、新人にとって「ちょうどいい業務」がほとんど残っていないことです。
荻原: それはどういうことでしょうか?
岩脇: 例えば、以前なら資料の印刷やホッチキス止め、備品管理、会議の議事録作成など、段階的に仕事を覚えられる業務がありました。しかし、効率化やテクノロジーの進歩により、そういった「ちょうどいい業務」が自動化されたり簡素化されたりしています。
結果として、新人がいきなり高度な業務に取り組まざるを得ない状況になっている。これは新人にとって非常に厳しい環境だと言えます。
3. 変化した職場環境と若手の特徴
荻原: 職場環境の変化についてはいかがでしょうか?
岩脇: 二番目の「職場環境」の変化では、上司や先輩が忙しすぎて若手を指導する余裕がないという点が挙げられています。特に問題なのは、若手がこの人から学びたいと思うようなエース級の人ほど、仕事が集中して忙しくなってしまうことです。
昔なら「先輩の背中を見て学べ」という指導法が機能していましたが、今はその先輩自身に余裕がない。加えて仕事の難易度が上がっているので、背中を見ているだけでは理解が困難になっています。
荻原: 確かに。今は全員が忙しくて、特に営業のエースほど多忙ですよね。
岩脇: 三番目の「若手そのもの」の変化で最も印象的だったのは、「正解がないことに挑む経験が不足している」という指摘です。
例えば、テレビ番組でいうとクイズ番組が流行っているそうですが、クイズというのは必ず正解があります。今やインターネットで検索すればなんでも答えが見つかる環境で育った世代は、正解がある問題に慣れている一方で、正解がない課題に取り組んだ経験が少ないのです。
荻原: なるほど。でも社会に出ると、正解がないことが多いですよね。
岩脇: まさにそこが問題です。営業の仕事は基本的に正解がありません。商談で「この時になんて言えば良いか教えてください」と若手に言われても、相手によって最適な対応は変わります。でも若手の思考回路としては、正解を欲しがってしまう。
この特徴を理解せずに指導すると、うまくいかないということが本書では強調されています。
4. 解決策は「環境を整える」こと
荻原: では、このような変化に対してどのような対策が有効だと書かれているのでしょうか?
岩脇: 本書で一貫して言われているのは、マニュアルを与えるのではなく「環境を整えてあげる」ことが重要だということです。
具体的には、まず「一人前の定義」を関係者間で揃えることが挙げられています。
例えば「半年後までに一人前になりましょう」と言っても、私が思う一人前と荻原さんが思う一人前、会社が求める一人前は違いますよね。
荻原: 確かに、そこの認識がずれていると指導も効果的になりませんね。
岩脇: その通りです。だからこそ、OJTに関わる人だけでなく、一緒に働く部署の人も含めて「一人前像」を明確にし、認識を合わせておく必要があります。
同時に、それぞれの人の役割分担もはっきりさせて、どんな仕事をどのように与えるのが適切かを設計する。こうして環境を整えることで、スムーズな成長が可能になるということです。
荻原: 従来の「気持ちで伝える」「背中を見せる」といった精神論に偏った指導ではなく、より体系的なアプローチということですね。
岩脇: そうです。今の環境変化を受け入れた上で必要なことは、熱意を持って伝えることではなく、一人前像を揃える、役割をしっかり分担する、適切な仕事を設計して与える、といった環境設計です。
この考え方は非常に納得感がありましたし、出発点である「若手のことを知ろう」という部分から一貫して論理的に組み立てられているのが印象的でした。
5. 『自分で動く若手営業の育てかた』はどんな人におすすめ?
荻原: この本は、どのような方におすすめできますか?
岩脇: まず、若手育成に苦労している方にはもちろんおすすめです。次に、育成に直接関わっていなくても「今どきの若者のことがよくわからない」と思っている方にもおすすめしたいですね。
職場に若手がいる方、さらに言えば職場でなくても若手と接する機会がある方で、「最近の若者はなんであんなことするの?」「理解できない」と感じている方には、特に第一章だけでも読んでいただきたいです。
荻原: 第一章でその疑問が解決されるということですね。
岩脇: はい。「あ、そういうことなのね」という腹落ち感が得られると思います。その先の具体的な解決策まで知りたくなったら第二章以降をどうぞ、という感じです。
本書を読むことで、世代間の認識のギャップを埋めることができ、より効果的なコミュニケーションや指導が可能になると確信しています。
荻原: 私も「今どきの若手の特徴」を知ることから始まる人材育成という考え方がとても新鮮でした。これまでの精神論的なアプローチとは一線を画する、非常に実践的な内容だと感じました。
本日は、若手育成に関する新しい視点を教えていただき、ありがとうございました。特に「環境を整える」という発想は、多くのマネジメント層にとって参考になると思います。
岩脇: こちらこそありがとうございました。この本を通じて、多くの方が若手との関わりかたを見直すきっかけになれば嬉しいですね。
本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒リクルートの営業コンサルが教える 自分で動く若手営業の育てかた
【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
荻原エデル
社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。
岩脇泳喜
石川県出身。
前職では大手医療系人材会社にて、新規事業である健康経営事業の営業責任者として従事し、後発の事業ながら2024年には業界No.1の顧客数を達成。その後アルヴァスデザインに入社。
20代まではポンコツ営業パーソンだったため、そこからの成長角度は誰にも負けない自信あり。
二児のパパで、野球好き。DeNAファンで、年に3、4回は横浜スタジアムに応援に行っている。