なぜ、あなたの仕事は終わらないのか(中島 聡著 2016年 文響社)~“余裕”を生み出すスピード戦略~

こんにちは。荻原です。
本日は、Windows95の開発に携わった伝説のプログラマーであり、現在はシリコンバレーでUIEvolutionのCEOを務める中島聡氏の著作「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」をご紹介したいと思います。
「また今回も締め切りギリギリになってしまった…」そんな経験、皆さんにもありませんか?
本書はプログラマーの事例が多く含まれていますが、実は営業をはじめとした、あらゆる職種の方にとって実践的で役立つ内容となっています。
それでは見ていきましょう。
目次
1. 仕事が終わらない人に共通する“2つの落とし穴”とは?

皆さんは、締め切り間際になって慌てふためいた経験はありませんか?
著者がマイクロソフト時代に気づいたのは、仕事が終わらない人には共通の傾向があるということです。
その代表的なものが、「ラストスパート志向」と「完璧主義志向」です。
たとえば「ラストスパート志向」の人は、締め切り直前に集中して仕上げようとする傾向があります。営業現場で言えば、「ギリギリになってから提案書に手をつける」ケースが典型です。その結果、予期せぬお客様対応に時間を取られて間に合わなくなる、そんな傾向のある人です。
一方で、「完璧主義志向」の人は、仕上がった資料に対して「もっと良くしたい」と手直しを繰り返し、納期をオーバーしてしまうタイプです。
営業で言えば、設計外の要素を盛り込みすぎてプレゼンに間に合わない…といった状況に陥る傾向にあります。
こうした傾向の根本には、「作業時間の見積もりの甘さ」があります。
著者は、仕事の見積もりを数学のテストに例えて説明しています。
数学のテストは前半に基本問題、後半に応用問題が用意されています。基本問題はただの計算なので、どれくらいで解けるのかがわかりやすいです。
しかし、応用問題となると、解答にかかる時間が予測しづらくなります。仕事が期限までに終わらない人は、この応用問題を甘く見ているのです。
営業の現場で言えば、自社フォーマットを活用した資料作成は「基本問題」にあたります。一方で、お客様に合わせたカスタマイズや、新しい提案内容の検討は「応用問題」です。
この応用問題にどれくらい時間がかかるかを見誤ると、プレゼン当日になって「まだ資料が完成していない…」という事態になってしまうのです。
本来なら、複雑な提案内容の検討や、お客様特有の課題分析といった「応用問題」に先に取りかかり、どれくらい時間がかかるのかを把握する必要があります。そうすることで、余裕を持ったスケジュールを組むことができるのです。
2. 効率のカギとなる「スラック」

仕事が終わらないとき、皆さんはこんなことを思ったことはありませんか?「もっと時間の余裕を持っておけばよかった…」
この心理的な余裕のことを、著者は<s「スラック」と呼んでいます。
睡眠不足が続いているときや、仕事に不安を抱えているときなど、私たちはこのスラックを持ちづらい状況に陥りがちです。人はスラックがない状態が続くと、どんどん生産効率が落ちてしまうものです。
そして、「もっと頑張らなければ」と思うあまり、効率的な仕事の仕方に気づかず、がむしゃらに仕事にまい進してしまうのです。
著者はこの状況を、視野が狭くなって他の選択肢が見えなくなる状態として「トンネリング」と名づけています。
営業担当者の場合、このトンネリング状態に陥ると、さらに深刻な問題が起こります。お客様への提案の質が下がり、商談での判断力も鈍ってしまうのです。「今月の数字がやばい…」「あの案件、どうしよう…」と不安に駆られ、焦って行動することで、かえって成果から遠ざかってしまうことがあります。
ここから脱するには、心の余裕を持つことがカギとなります。
3. 「ロケットスタート時間術」とは

では、どうすれば仕事を効率的に終わらせることができるのでしょうか?
「そんな方法があるなら教えてほしい!」と思われる方も多いのではないでしょうか。
著者が半生をかけて導き出した仕事の方法を「ロケットスタート時間術」と呼んでいます。
この手法の考え方はとてもシンプルです。
指定された期間の最初の2割で、まずは仕事に全力で取り組んでみて、全体にどれだけの時間がかかるのかを把握するということです。
具体的に説明してみましょう。
例えば、重要なお客様向けのプレゼンテーション資料を10日間で仕上げるタスクがあるとします。この「ロケットスタート時間術」では、最初の2日間(つまり全体の2割)で、一気に8割の完成を目指して取りかかるのです。
「それはさすがに無理なのでは?」と思う方も多いでしょう。
ですが、ここが重要なポイントです。
営業の現場では、急な打合せやトラブル対応など、計画通りに進まないことが日常茶飯事です。最初の2日間で“全体のボリューム感”をつかむことが、時間を味方につけるために欠かせません。
もし2日間で思ったより進まなければ、「このスケジュールは厳しいな。早めにヘルプを頼もう」「お客様に期日調整の相談をしよう」と、余裕を持って対処ができます。
逆に、8割近く仕上がっていれば、「あと8日もある」と安心してクオリティを高めたり、プレゼンの練習に時間を使ったりすることができます。
つまり、初動の2日間は“進捗確認”であり、“リスク管理”でもあるのです。
著者は、この最初の2割で仕事に全力で集中するとき、「今日は普段の○倍の集中力で取り組む」という具体的な目標設定をすることが重要だといいます。
例えば、営業担当者であれば「新規開拓の資料作成を今日は普段の3倍のスピードで仕上げる」「プレゼンテーション資料を2日で完璧に仕上げる」といった具体的な目標を設定するのです。
このように数字で目標を明確化することで、普段とは違う集中状態を作り出すことができます。また、営業の現場では突発的なお客様対応が入ることも多いため、最初にまとまった作業を一気に進めておくことで、後から余裕を持って調整できるようになるのです。
4. スタートダッシュを成功させる4つのポイント

「ロケットスタート時間術、やってみたいけれど、具体的にはどうすればいいの?」と思われた方もいるのではないでしょうか。
著者は、この手法を成功させるために4つのポイントを挙げています。
一つ目は、朝早くから仕事を始めること。
「早起きは苦手で…」という方も多いかもしれませんが、朝は最も集中力が高まり、外部からの邪魔が入りにくい貴重な時間帯です。営業担当者にとって、日中はお客様対応や会議で時間が細切れになりがちですが、朝の時間なら集中して資料作成や戦略立案に取り組むことができます。
著者自身も朝4時から仕事を始める習慣を持っているといいます。いきなり4時は無理でも、いつもより30分早く起きて重要なタスクに取り組むことから始めてみてはいかがでしょうか。
二つ目は、マルチタスクをやめること。
「あれもこれも同時に進めなくては…」と思いがちですが、実はマルチタスクこそが、は仕事の進みを遅らせるが進まなくなる最大の要因です。例えば、重要な提案書を作成中に、お客様からのメールの通知が気になって確認し、返信して、気づけば思考が分断されていた…そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
営業担当者は特に、複数の案件を同時に担当することが多いため、「○○様からの返事は来ている?」「明日の商談の準備もしなければ」などと常に気が散るリスクがあります。
しかし、集中すべき時間は、目の前のタスクに全力で取り組むことが重要です。
三つ目は、完璧を求めすぎないこと。
真面目な営業担当者ほど「お客様に完璧な提案をしなければ」「資料に一点の曇りもあってはいけない」と思いがちですが、実は完璧主義は仕事を遅らせる大きな要因になってしまいます。
スマートフォンのアプリも、最初にリリースした後で何度もアップデートを繰り返していますよね。営業活動も同じで、最初から100%の完成度を目指すよりも、まずは「与えられた時間内で最大限の成果を出す」ことを心がけ、お客様のフィードバックを受けながら改善していく方が効果的なのです。
四つ目は、適度な休息を取ること。
脳の疲れを取るための短時間の仮眠はとても効果的です。特に、午後のお客様との重要な商談前などは、15~20分程度の仮眠を取ることで、集中力と判断力が格段に向上します。
著者によれば、眠気が残らず目覚めのよい仮眠の時間は18分だといいます。営業活動で「少し疲れたな」と感じたときは、無理をせず短時間でも休憩を取ることで、その後のパフォーマンスが大きく変わることを実感できるはずです。
このように、ロケットスタート時間術の真髄は、高速で仕事を終わらせることではなく、「余裕」を生み出すことにあるのです。
営業担当者にとって、この余裕は非常に大きな意味を持ちます。急なお客様対応が入っても慌てることなく、質の高い提案ができる。プレゼンテーション前に十分な準備時間を確保できる。そして何より、お客様との商談で落ち着いて対応できるようになるのです。
5. おわりに

いかがでしたでしょうか?
本日は、世界を変える発明を生み出した伝説のプログラマー中島聡氏の渾身の著書についてご紹介しました。
「ロケットスタート時間術なんて、私にはハードルが高すぎる…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。でも、まずは明日の朝いつもより30分早く起きて重要な提案書に集中してみる、といった小さなことから始めてみるのはいかがでしょうか。
時間に追われる営業スタイルから、時間をコントロールする営業スタイルへ。そんな変化を実感できる日が、きっと近いうちに訪れるはずです。
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【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
荻原エデル
社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。


