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<トップセールスの本棚>インサイト(桶谷 功著 2005年 ダイヤモンド社)~顧客の心のホットボタンを探せ〜

こんにちは。荻原です。

今回は、アルヴァスデザインでマネージャーとして活躍中の松下さんに、営業・マーケティングに役立つ「1冊」をご紹介いただきます。ご紹介いただくのは『インサイト』
2005年に書かれた本書ですが、デジタル全盛の現代だからこそ、定量データでは捉えられない“人の気持ち”に立ち返る必要があると改めて気づかされます。

マーケティングの世界では数字やデータが重視される傾向がありますが、本書は「数字では表せないもの」に焦点を当てた一冊です。消費者が思わず行動を起こしてしまう心理、それがインサイトです。営業担当者にも大いに役立つ視点が詰まっていますので、是非、ご一読ください。

 

目次

    1. 書籍「インサイト」の魅力とは?


    荻原:本日はよろしくお願いします。早速ですが、今回選ばれた『インサイト』について教えてください。

    松下:著者は桶谷功さんで、2005年に初版が出た書籍です。桶谷さんはもともと大日本印刷に在籍され、その後独立してマーケティングコンサルタントとして活躍されている方です。この本は「インサイト」という概念を体系的に紹介した一冊として知られています。

    荻原:「インサイト」という言葉、最近よく耳にしますが、具体的にどういう内容の本なのでしょうか?

    松下:そうですね。一言でいうなら、「数字では捉えきれない消費者心理をどう掴むか」を解説した本です。マーケティング担当者向けの内容ではありますが、実は営業担当者にも読んでほしいと思っています。

    荻原:営業担当者とっても役立つ内容なのですね?

    松下:はい。お客様と対話するとき、提案を組み立てるとき、新しいサービスの売り方を考えるとき。こういった場面で、この本の考え方が非常に役立つと感じています。

    2. 数字では捉えきれないものを見る


    松下:本書で最も印象的だったのは、「マーケティングは科学であり、数字で表せないものは無視する傾向がある」という指摘です。

    荻原:確かに、数字やデータは説得力がありますからね。

    松下:ええ。でも、インサイトはその逆を行きます。数字で表せないような奥深いポイントを探り出そうとする。「数字では表せなくても、人にはそういう心理がある」という前提で考えるのです。

    荻原:現代は複雑化しているから、数字だけでは立ち行かないということでしょうか?

    松下:はい、それも大いに関係していると思います。インサイトの威力は凄くて、例えば、これまで頭打ちになっていた施策が、インサイトを捉えることで変わるきっかけになります。また、数字だけでは見えなかった視点、心理の奥底まで捉えられるようになるというのが重要だと感じています。私自身、日々の業務で「この数字の背景には何があるのだろう?」と立ち止まって考えるようになりました。

    3. インサイトとは何か?~消費者が思わず動く心のホットボタン~


    荻原:本書で語られているインサイトというのは、どう定義されていますか?

    松下:「インサイトとは、消費者が思わず動く心のホットボタン」と表現されています。深く考えずに、自然と行動を起こしてしまうスイッチのことです。

    荻原:「思わず」というのがポイントなのですね。

    松下:その通りです。本音にはいろいろなレベルがありますよね。表には出さないけれど心の底では思っていることや、本人も気づいていないような心理など….。その中でも、「思わず行動を起こしてしまう」というポイントがインサイトです。

    荻原:具体例はありますか?

    松下:本書で紹介されているハーゲンダッツの事例が分かりやすいです。当時、アイスクリームは子供が楽しむものという固定概念が主流でした。その中で、「大人もアイスクリームの楽しさや幸せを味わいたい」という心理を捉えて、プレミアムアイスクリーム市場を作り上げました。

    荻原:なるほど。高級感のある大人のアイスというポジショニングですね。

    松下:はい。他にも、シックのカミソリの事例があります。カミソリは差別化が難しい市場でしたが、「切れてない!?」というインパクトのあるCMで、商品名を一気に覚えてもらうことに成功しました。男性の「カッコよくありたい」という心理、男らしさというインサイトをうまく捉えた事例です。

    荻原:確かに印象的なCMでしたね。成功事例の背景にはインサイトがあることが多いということですね。

    4. インサイトの見つけ方~感受性と直感を大切に~


    荻原:インサイトを見つけるのは、かなり難しそうですね。見つけるためのポイントはあるのでしょうか?

    松下:はい。本書では、「インサイトを見つけるには、感受性と直感が何より大切」と書かれています。つまり、数字で測ろうとか、ロジカルに行こうといったことが頭の中に先行していればしているほど見つけにくいのです。

    荻原:数字やロジックとは逆のアプローチが必要ということですか。

    松下:まさにそうです。ラベリングしてしまうと、そこでしか見なくなってしまう。本書では、インサイトを見つけるための具体的な方法もわかりやすく紹介されています。

    荻原:具体的にはどんな方法でしょうか?

    松下:まず大前提として、「頭ではなく、直感と体を使うこと」です。会議や数字を見た後は要注意で、理論的な思考モードから意識的にスイッチを切り替える必要があります。

    荻原:スイッチを切り替える、ですか。

    松下:はい。次に重要なのは「消費者に戻る」こと。客観的に「企画担当者はこう思うだろう」と外から見るのではなく、自分が消費者だったらという視点で、その人自身になりきるのです。

    荻原:なりきる、というのはかなり大変そうですね。

    松下:エネルギーが必要ですね。さらに、

    ・体と五感を使って体験してみる
    ・ターゲットになりきって使ってみる
    ・売り場に行って買ってみる
    ・ターゲットの集まる街に行く
    ・トレンドを体験する
    ・関係のないジャンルの共通項を探る
    ・身近な人に聞く

    こういったアクションを通じて、スイッチを意識的に切り替えていくことが大切と書かれています。

    荻原:これを本当にやり切ろうとしたら、相当な覚悟がいりますね。

    松下:おっしゃる通りです。でも、やり切った先にしか見えないものがあるのかなと。
    自分の思考や感覚をいつもと違う場所に持っていくことで、ようやく「これかもしれない」と感じる瞬間が訪れる。
    逆に言えば、そこまで突き抜けたからこそ、見つかるインサイトがあるのだと受け取りました。

    5. インサイトを実務に活かすために


    荻原:インサイトを見つけた後、実現させていくのも難しそうですね。

    松下:本書の著者も、社内で実現させていく、関係者を巻き込んでいくことの難しさについて書いています。様々な関係者の心を動かしていく必要があるのですよね。

    荻原:どんな力が必要でしょうか?

    松下:4つの力が挙げられています。「ミーティングや会議を仕切る力」「論理的にまとめる力」「プレゼンテーション力」「熱意の力」です。この4つがしっかりと備わった状態で、関係者を巻き込みながら作っていくことが大事だと。

    荻原:すべて必要そうですね。

    松下:そして、ここで重要なのが定量データの使い方です。定量データを分析してインサイトを見つけ出すのではなく、見つけたインサイトを定量データと照らし合わせて検証する。この順番がポイントだなと思います。

    荻原:なるほど。まず仮説としてのインサイトがあって、それを数字で検証するということですね。

    松下:そうです。相手にとっての価値は何なのかを、きちんと考え直すことが大切です。
    弊社の高橋(代表取締役CVO)がよく実践している「お客様と対話する際に、自社の製品にすぐつなげず、一歩立ち止まって実際の業務に携わる方々にヒアリングをしてから提案する」というプロセスも、まさに相手になりきってみるという実践だと思います。

    6. この本は、どのような方におすすめできますか?


    荻原:この本は、どのような方におすすめできますか?

    松下:マーケティング担当者にはもちろんおすすめですが、日々営業している方で、マンネリ化を感じている人に特におすすめです。「この提案をしておけばいい」という型にはまってしまっている人ですね。

    荻原:型にはまってしまっている人に良さそうですね。

    松下:インサイトの観点を踏まえると、自社のサービスや製品を使って、もっと面白いことができるかもしれない。もっと違うアプローチができるし、もっと違う価値を見出せるかもしれない。そう思えるきっかけになります。また、仕事に対して主体的になれるのではないかなと思います。

    荻原:伸び悩んでいる人にも良さそうですね。

    松下:そうですね。伸び悩んでいる理由の一つが「インサイト」を捉えられていないというのは、確かに考えられますね。
    この本を読んだ後は、提案資料のつくり方が変わったり、顧客へのヒアリングで「もう一歩深く聞いてみよう」と思えるようになったりと、実務に直結する変化が実感できると思います。
    そのため、ある程度のことができるようになった人にも、なかなか成果が出ない人にも、どちらにもおすすめできる本だと思います。

    荻原:最後に、松下さんご自身は、どのようにこの考え方を仕事に活かそうと思っていますか?

    松下:インサイトという考え方自体を大事にしたいと思っています。数字だけで測るのではなく、相手が思わず動きたくなる根底にあるものは何だろうと考える。我々で言えば、思わず弊社に問い合わせをしたくなる、その「動きたくなる」の根底は何だろうと。

    荻原:タイトル一つ、文章一つにしても、変化が起きてきそうですね。

    松下:それから、日常で自分が何かに申し込むとき、どんな気持ちで申し込んだか、というのをメモしておく。自分が体験しているときに、しっかり切り取っておくことも大切だと感じています。その時の気持ちを可視化しておく。一歩踏みとどまって、本当にその対象者になりきれているだろうか、数字だけで判断していないだろうか、そういうチェックリストを自分の中に持っておきたいですね。

    荻原:効率だけではない、定性的な面にもフォーカスするということですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

    松下:こちらこそありがとうございました。相手にとっての価値は何なのか、思わず行動したくなるポイントは何なのか。この視点を持つことで、仕事の質が変わってくると思います。ぜひ、インサイトという考え方を実務に取り入れてみてください!

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    〇トップセールスの本棚とは?
    【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
    営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
    ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。

    荻原エデル

    社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
    趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。

    keiko matsushita

    株式会社アルヴァスデザイン・マーケティング担当。
    大学卒業後、大手電機メーカーでシステム営業を経験。
    2014年よりアルヴァスデザインへ参画。
    旅と犬をこよなく愛する1児の母。

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