ALVAS JOURNAL

<トップセールスの本棚>涙の箱(ハン・ガン著 2025年 評論社)~トラウマの積み重ねが人を強くする~

こんにちは。荻原です。 今回も引き続き、トップセールスの本棚をインタビュー形式でお届けしていきます。本日、インタビューに答えてくださったのは、代表取締役CVOの高橋さんです。
本日のトップセールスの本棚でご紹介する書籍は「涙の箱」。2024年にノーベル文学賞を受賞したハン・ガンが描く、大人のための童話です。

100ページに満たない短編の中に、「経験や感情の蓄積が人の器を大きくする」という深いメッセージが込められています。忙しい日々の中で内省するきっかけを与えてくれる一冊の中から、特にキャリアの節目に活かせる3つの視点をお伝えしています。

是非、ご一読ください。

 

目次

    1. 何を流しても涙を流す子供の物語—最後の5ページに凝縮されたメッセージ  

    荻原:本日は、よろしくお願いします。高橋さんがおすすめする書籍について教えてください。

    高橋:社内のメンバーから紹介されて読んだ本なのですが、『涙の箱』という作品です。ノーベル文学賞を受賞した韓国人作家、ハン・ガンが書いた小説です。100ページにも満たない短編ですが、非常に深い内容が詰まっています。

    荻原:どのような物語なのでしょうか?

    高橋:昔々ある村に、何を見ても涙を流す子供が住んでいました。風が吹いても涙を流す、美しい景色を見ても涙を流す、人と出会っても涙を流す。そんな子供のもとに、涙をコレクションしている男性が現れて、「君の涙をください」と言います。ところが、その日を境にこの子は涙が出なくなってしまいます。その後、涙を集めに来たコレクターと一緒に過ごしながら、涙が流れるのを待つ、という展開になります。

    荻原:不思議な物語ですね。

    高橋:コレクターとその子供のたわいもない会話や、子供が見た景色の美しさが丁寧に描写されています。具体的な会話が書かれている一方で、そこには非常に抽象的で詩的な情景が並んでいます。読み手の想像力を刺激する、そんな作品です。

    荻原:読者の解釈に委ねられている部分も多いのですね。

    高橋:はい。どう解釈するかは読み手に委ねられている部分が大きいのですが、最後の5ページで一気にメッセージが具体化してきます。前段階の抽象的な流れがあったからこそ、最後が深く響く構成になっています。

    荻原:最後まで読むことで、何か大きな気づきが得られるということですね。

    高橋:そうです。私が感じたのは、一つ一つのトラウマや経験が、いつか蓄積した先に、その人の強さや純粋な気持ちにつながっていくということ。そういうメッセージが最後に集約されていると感じました。前段階の美しい情景描写があったからこそ、最後のメッセージが心に響きました。

    荻原:聞いているだけで読みたくなってきますね。

    2. トラウマの積み重ねが人を強くする—経験が価値になる瞬間

    荻原:高橋さんはこの本を読んで、どのような気づきを得られましたか?

    高橋:私が感じたのは、いろいろな経験の蓄積が人の器を大きくしていくということです。そして、器が大きくなればなるほど、その感情というのが外に出なくなってくる。

    荻原:確かにそれは言えていますね。

    高橋:子供の方が感情豊かですよね。年を取れば取るほど、感情がよくわからなくなる傾向があります。それは単純に表情筋が緩んでいるだけではないと思います。

    経験を重ねると、うまく感情を外に出さずに処理する術を覚えてきてしまうのではないかでしょうか。この本を読む中で、そうした成長の過程や心の変化について深く考えるきっかけをもらえました。

    荻原:この本から得た気づきを、実際にどのような場面で活かせると感じましたか?

    高橋:キャリアの節目で活きてくると感じました。転職のタイミング、学生が社会人に変わるタイミング、役職が変わるタイミング。そういった節目では、いろいろな感情が渦巻きますよね。
    自信がないとか、自分にこれが本当に適しているのだろうかとか、これが正解なのかとか‥。そういうときに、自分のこれまでを肯定できるきっかけになる。これは素敵なツールだと思います。

    荻原:過去の経験を肯定的に捉え直すことに役立つのですね。

    高橋:はい、その通りです。そして、他の人の人生に思いを馳せるきっかけにもなりました。自分と意見が合わない人がいたとします。すると、「一体何を言っているのだろう」と感じることもありますよね。でも、その相手の言動の裏には必ず歴史があって、そのこだわりは何かの体験から来ているはずなのです。

    荻原:相手の背景を理解することが大切ということですね。

    高橋:きっとこの人も大変だったのだろうな、と思いを馳せられるかどうかは、関係を築く上で非常に大事です。この本は、そうしたことを立ち止まって考えられるきっかけを与えてくれます。

    3. 忙しい現代人こそ読むべき一冊—内省とWhyの言語化がもたらす力


    荻原:この本はどのような方におすすめですか?

    高橋:忙しい日々を送っている人ですね。交感神経が過多になっている人。常に戦闘体制になってストレスが溜まっている、そうした現代人におすすめです。

    荻原:それは、多くの方が当てはまりそうですね。

    高橋:私自身もそうなのですが、忙しい毎日を送っていると、つい目の前のタスクに追われて、自分自身を振り返る時間は後回しになりがちです。
    たとえば、これまでの経験を棚卸ししてみたり、過去の自分の頑張りをあらためて認めてあげたり。頭では「大切」とわかっていても、なかなかその時間を取れないものです。
    そういった意味で、この本は、立ち止まって内省するきっかけをそっと与えてくれる存在だと感じました。読み終えたあとに、ふと自分自身と向き合いたくなる、そんな力がある一冊です。

    荻原:それは素敵ですね。

    高橋:はい。そして、この“自分の過去をどう捉えるか”という視点が、実は自分の価値観や行動の「なぜ(Why)」を見つける鍵になると感じました。
    内省を通じて、「自分はなぜこの仕事をしているのか」「なぜこの判断をしたのか」といった問いに向き合えるようになる。そのプロセスが、Whyを言語化する力につながっていきます。

    荻原:内省を通じて、自分のWhyを見つけるということですね。

    高橋:その通りです。日々の選択や判断の背後には必ず理由があるはずですし、それを言葉にできるかどうかが、リーダーとしての説得力や信頼感にもつながっていくと思います。

    荻原:たしかに、Whyを語れる人には、軸のようなものを感じますね。

    高橋:そう思います。Whyを言える人は、一貫性がある人だと思います。自分がやっていることの意味や価値、目的を自分の実体験をもとに語ることができる。
    こうした話が言語化できると、周りの人の感情も動き出して「応援したい」に変わっていくのですよね。理解ではなくて、共感・共鳴するということです。

    荻原:なるほど。まさに、共感を生むリーダーのあり方ですね。
    最後に読者の方々へメッセージをお願いします。

    高橋:この本は、自分の過去や感情に向き合うきっかけを与えてくれます。そして、それを丁寧に言語化していくことで、自分の軸や価値観が見えてくる。
    そのプロセスは、リーダーとしての土台をつくるうえでも非常に大きな意味を持つと思っています。
    忙しいときこそ、少し立ち止まって、自分のWhyに耳を傾けてみてほしい。そんな時間を持つきっかけになれば嬉しいですね。

    荻原:本日は貴重なお話をありがとうございました。経験の積み重ねを肯定的に捉え、それを言語化していく。そうした視点が印象的でした。

    本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒涙の箱

    〇トップセールスの本棚とは?
    【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
    営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
    ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。

    荻原エデル

    社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
    趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。

    高橋 研

    代表取締役 CVO
    早稲田大学大学院理工学研究科終了後、株式会社ファンケルに入社。
    その後、30歳を節目に営業の世界に飛び込み、多くの会社の教育支援に携わる。
    2013年株式会社アルヴァスデザイン設立。2018年「実践!インサイトセールス(プレジデント社)」出版。

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