<トップセールスの本棚>私が間違っているかもしれない(ビョルン・ナッティコ・リンデブラッド著 2025年 サンマーク出版)~正解を手放すことで見える景色~

こんにちは。荻原です。
本日もインタビュー形式でお届けするトップセールスの本棚。インタビューに答えてくださったのは、アルヴァスデザインのナレッジマネジメント部にて活躍中の土岐さんです。ご紹介する書籍は「私が間違っているかもしれない」です。
本書はスウェーデンで44万部を記録し、33カ国に翻訳されている世界的ベストセラーです。元エコノミストが17年間の僧侶生活を経てたどり着いた「心を穏やかにする教え」について、アルヴァスデザインのナレッジマネジメント部で活躍中の土岐さんに語っていただきました。
ぜひ、ご一読ください。
目次
1.「世界的ベストセラーとの出会い」

荻原:本日は、よろしくお願いします。はじめに、土岐さんのおすすめの一冊について簡単にご紹介をお願いします。
土岐:私がご紹介したいのは『私が間違っているかもしれない』という本です。著者はスウェーデン人のビョルン・ナッティコ・リンデブラッドさんです。33カ国語で翻訳されていて、スウェーデンでは年間1位、台湾でも年間1位を記録している世界的なベストセラーです。
荻原:それだけ世界中で読まれている本なのですね。どのようにしてこの本に出会ったのですか?
土岐:Xで見かけたことがきっかけでした。タイトルに惹かれて、面白そうだと思い手に取りました。著者は元エコノミストです。26歳で役員目前まで上り詰めるほどの超エリートの道を歩んでいたのですが、ある時、「何か違うかもしれない」「着せ替え人形のようにエリートの皮をかぶる自分がいる」ことに気が付きました。そんな直観が下りてきた5秒後には決心し、仕事を辞め、エリートの道を外れて、森林派の僧侶になったという異色の経歴の持ち主です。
荻原:エコノミストから僧侶へ。かなり劇的な転身ですね。なぜエコノミストを辞める決意をしたのでしょうか。
土岐:著者は自分のことを「着せ替え人形のようだった」と表現しています。スーツを着てピカピカのブリーフケースを持ち、出勤前の準備をしている時に「さあ、ショータイムの始まりだ」と武装して出かける。
でも心の中では「会社に行くのが嫌だ」「自分の実力が足りていないことをいつか見透かされるのではないか」という不安でいっぱいだったそうです。
荻原:外側の成功と内側の感覚が、まったく一致していなかったのですね。
土岐:会社から求められていることは「株主の財産を最大化すること」でしたが、著者は「株主って誰だ?会ったこともないのに、なぜ彼らの財産を最大化することが自分の働く一番の動機にならなければならないのか」と疑問を抱いていたそうです。そんな状態で押しつぶされそうになった時に、ふと行ったのが瞑想でした。
2.「15分の瞑想と5秒の決断」

荻原:瞑想をきっかけに、人生が大きく動いたのですね。
土岐:はい。ただ、瞑想の真似事をしても、最初は全然うまくいかなかったそうです。10分か15分ほど瞑想して、ようやく最後にちょっとだけ落ち着いてきたかなという感覚が生まれた時、「次の一歩を踏み出す時だ」という言葉がはっきり目の前に現れたそうです。決心するのに5秒もかからなかったと書いてあります。
荻原:5秒ですか。驚くほど早い決断ですね。
土岐:はい。そして、数日後には上司に辞職届を出していたそうです。15分瞑想して、5秒で決断。そしてスウェーデンに帰国し、大学で1年間文学を勉強した後、インドに渡り、国連の世界食糧計画でエコノミストとして働きます。その後、タイで僧侶になるコースを受けて、そのまま森林派の僧侶としての生活を始めました。
荻原:森林派というのは、どのような宗派なのですか?
土岐:森の中で共同生活をしている仏教宗派です。17年間にわたって僧院での生活を送ったそうです。
荻原:それは相当長い期間ですね。
土岐:その間、お金を一切持たず、お布施だけで生活していたそうです。そして46歳の時、20年前、5秒で決心した時のように、同じくらいはっきりと心の声が聞こえたそうです。今度は「僧侶をやめる」という決断でした。
荻原:入る時も出る時も、同じように突然なのですね。
土岐:俗世に戻った後、ALSと診断されます。俗世に戻ってからの病と共にある生活の変化にも、彼に向けられた人生からの問いが詰まっているような気がしますね。2022年にご逝去されましたが、最期まで感謝とともに人生を受け入れていたと綴られています。
3.「魔法の呪文:私が間違っているかもしれない」

荻原:この本のタイトルにもなっている「私が間違っているかもしれない」という言葉には、どのような背景があるのでしょうか?
土岐:本書の中に「魔法の呪文」という章があるのですが、これがタイトルの伏線回収になっています。僧院では週に1度、一晩中瞑想する日があったそうです。
荻原:徹夜の瞑想は、厳しそうですね。
土岐:そんな夜に、僧院で「同師」と呼ばれる偉い方が講義をするために姿を現しました。その方は「今夜はみんなに魔法のマントラを授けよう」と言ったそうです。
荻原:どのような言葉だったのですか?
土岐:「今度誰かと衝突しそうになって、心に葛藤が芽生えた時に、この呪文を3回、真摯に自分に聞かせるように繰り返してほしい。そうすれば、夏の朝の草の露のように不安は蒸発するだろう」と前置きした上で、こう言ったそうです。「私が間違っているかもしれない。私が間違っているかもしれない。私が間違っているかもしれない」と。
荻原:非常にシンプルな言葉ですね。
土岐:著者は20年経っても、この言葉を折に触れて思い出すと書いています。どんなに困難な時でも、思い出した時はいつもうまくいく。自分のことを謙虚で建設的な方向に導いてくれる言葉だと。
荻原:自分が正しいと信じ込んでいると、相手を否定してしまいがちですが、「私が間違っているかもしれない」という前提に立つことで、自分の前提そのものを問い直せるきっかけになりますね。
土岐:まさにそう思います。いわば「無知の知」に近い感覚なのかもしれません。
4.「ありのままを受け入れる、でも翻弄される」

荻原:著者は僧院での共同生活からも多くの学びを得た、と語られているそうですね。その部分もぜひ教えてください。
土岐:本書には「変わり者たちとの共同生活」という章があります。
森林派の僧侶になるということは、年中無休の共同生活を送るということです。しかも一緒に暮らすのは、それまで出会ったことがないような変わり者ばかりだったそうです。
荻原:確かに、個性的な方が多そうです。
土岐:その中で著者が学んだのは、「人間関係に過度に煩わされないための解決法は、ありのままの相手を受け入れること」だったそうです。誰かに対して「こうあるべきだ」と思ったからといって、その人がその通りの人間に生まれ変わることは絶対にない。だから、相手をありのまま受け入れることを徹底しようと。
荻原:当たり前のようでいて、実践するのは難しい教えですね。
土岐:「他者に過度に期待しない」という言葉はよく聞きますが、それよりもさらに踏み込んで「ありのままを受け入れる」というのは、ほとんど無償の愛に近い境地だと感じます。自分のありのままも受け入れてもらうためには、まず相手のありのままを受け入れていくことが大切なのだと思わされました。
荻原:17年間も修行されたのであれば、俗世に戻ってからは穏やかに過ごせたのでしょうか?
土岐:その部分が面白いところで、沢山の方と共鳴している理由にもなっていると思うのですが、「俗世に戻ると全然役に立たない!」と苦労されたことが書かれています。17年間かけて自分の内面を整えることに時間を使ってきたのに、社会に戻ると全然うまくいかないこともあって。何度もブッダの教えを思い出しながら俗世を生き抜こうと奮闘する様子が描かれています。
荻原:僧侶としての修行を積んでも、完全に悟りを開くわけではないのですね。
土岐:そこがこの本の魅力だと思います。私は本を読む前、僧侶の方というのはもっと悟っているイメージを持っていました。でも著者は、かなり翻弄されていたのです。その姿を見ることで、僧侶でもこんなに翻弄されるのであれば、私たちが翻弄されるのは当たり前だと思えるようになります。
5.「正解を出さなくてもいいという安らぎ」

荻原:この本は、どのような方におすすめですか?
土岐:なぜこの本がこれだけ世界中で売れているのかを考えた時、今の時代、正しいことが正義というか、間違ったことを言うとすぐに炎上してしまうような風潮がありますよね。そんな中で「私が間違っているかもしれない」という前提でいていいよ、言ってもらえることに、安らぎを感じる人が多いのではないかと感じました。実際に私が、この本を読み終えて最初に感じたのは、安堵感でした。「不完全なあなたでも大丈夫だよ」とやさしく背中を支えてもらっているような感覚、と言えるかもしれません。
荻原:確かに、常に正解を求められる時代だからこそ、響くのかもしれませんね。
土岐:ですので、「いつも完璧な正解を出さないといけないダメだ!」ということに辛くなってしまっている人や、「私は決して間違ってはえてはいけない」と自分を正論で縛り付けて余白を失っている方に読んでほしいです。この本を通じて、人生で大切にしたいことや、人生には終わりがあり、その時間は有限であるということを感じながら生きていけるようになると思います。
荻原:押し付けがましい内容ではないのですね。
土岐:その通りです。この本の中で、著者が何かを押し付けてくることは一切ありません。深い仏教哲学が分かりやすいストーリーで綴られているという感じです。私自身、仏教哲学はビジネスシーンにおいて最強だと思っています。この本はその入り口として、とても読みやすい一冊になっています。
荻原:最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
土岐:誰かと意見が衝突しそうになった時、まずは一呼吸置いて、それから「私が間違っているかもしれない」と心の中で3回唱えてみてください。それだけで、相手への見方や自分の姿勢の変化に気づくことができるはずです。
正解を出すことにこだわるのではなく、自分が間違っている可能性を受け入れる。その柔軟さ、しなやかさが、結果的により良い人間関係や仕事の成果につながっていくのではないでしょうか。
荻原:素晴らしいお話をありがとうございました。「私が間違っているかもしれない」という言葉を胸に刻んでおきたいと思います。
土岐:こちらこそ、ありがとうございました。
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【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
荻原エデル
社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。
土岐優
石川県金沢市出身。音楽大学(ハープ科)卒業後、ファンマーケティングのリーディングカンパニーに勤めたのち、プロデューサーとしてアルヴァスデザインに参画。2024年10月よりナレッジ・マネジメント部を立ち上げ、ナレッジコーディネーター兼ラーニングデザイナーとして奔走中。趣味は内面探求、読書、マインドフルネス瞑想。好きな言葉は「強がらなくても大丈夫。どんなあなたも大好きだから。」

