ALVAS JOURNAL

<トップセールスの本棚>すごい言語化(木暮太一著 2023年 ダイヤモンド社)~やりがいは“そこにあるもの”ではなく“言語がつくりだすもの”である〜   

皆さんは頭の中にある、ぼんやりと渦巻く思いや感情をうまく言葉にできないと感じたことはありませんか。

例えば、今話題の映画を見て、感想を求められたとき。

頭の中では色々と感じているのに出てくる言葉は

『すごく面白かった』
『すごく良かった』

のみ。

本当は

・あのシーンのどこに心を動かされたのか
・主人公のどの価値観に共感したのか
・なぜ面白いと感じたのか

細かな感覚がそこには必ずあるはずなのに、それをうまく言葉にできない。
何も感じていないのではなく、感じているのに言語化できていない状態に陥る。

これはよくある日常の一場面かもしれません。

しかし、この言語化できていない状態が続くことは、仕事の質や自身の意思決定、ひいては人生そのものにも影響していく可能性があるのではないか、本書を通じてそのように感じました。

そこで今回は、本書を読んで特に印象に残った3点について考えていきたいと思います。

 

目次

1. 私たちは頭の中の5%しか言語化できていない

本書の出発点は、「私たちは自分の思考の大部分を言語化できていない」という点にあります。

ハーバード大学のジェラルド・ザルトマン教授によれば、人は自分の意識のうちわずか5%しか認識できておらず、残りの95%については自分で認識できずに何となくそう思うレベルに留まり、言語化はされていないそうです。

つまり私たちは自身の頭の中にある大部分を言葉にできていないため、本来考えていることの多くが相手に伝わらず、認識のズレが生まれてしまいます。

この言語化できていない状態は相手に対してだけではなく、自分自身の思考が整理されていないことも意味します。

その結果、問題に対する対策を打つことができず、目指したいゴールへの道筋も見えにくくなってしまいます。

例えば「成長したい」、「ビッグになりたい」といった言葉を使うことがありますが、その内容が具体的に言語化されていなければ、何をすれば成長したことになるのか、何を達成すればビッグになったと言えるのかわからず、行動に落とし込むことができません。

ここから言えるのは、言語化できていない状態では思考も行動も前に進まないということです。

本書の著書である木暮氏は言語化とは単に言葉にすることではなく「明確化すること」であると述べています。

言語化とは頭の中にある曖昧な思考を整理し、意味をはっきりさせ、定義するプロセスです。それによってはじめて目標達成のために何をすれば良いのかが分かり、行動や意思決定に繋がっていきます。

よく「語彙力を増やせ」「心を掴むようなキャッチコピーを考えろ」と言われますが、それらも中身が明確化されていなければ意味がありません。
言語化されていない状態では思考が進まず、行動にも繋がらないのです。

2. やりがいは言語化によって生まれる

言語化できていない状態は、仕事におけるやりがいにも大きく影響します。

自身の仕事にやりがいを感じている方は、どれくらいいるのでしょうか。

本書では同じ「レンガを積む仕事」をしている3人の職人が登場する寓話が紹介されています。

1人目の職人は『レンガを積むように言われたから、仕方なくレンガを積んでいる』と答え、
2人目の職人は『自分の家族を養うために、レンガを積む仕事をしている』と答え、
3人目の職人は『私はいま歴史に名の残る大聖堂をつくっているのです』と答えました。

3人は同じ仕事をしているにもかかわらず、仕事に対する意味づけは大きく異なります。

ここからわかるように同じ行動であっても、自身がどう認識し、どのように言語化しているかによって、仕事の価値ややりがいは大きく変わってくるのです。

私自身これまでの社会人生活を振り返ると、やりがいを感じられた瞬間は「誰かのために価値を提供できている」と実感した時でした。

そしてその時の私は、自分の言葉でその価値をきちんと表現することができていた状態だったと思います。

一方で前例に沿って進めることが重視され、「なぜこのやり方なのか」を考える機会が少ない業務や、形式や流れがあらかじめ決まっており、実施すること自体が目的化されているものなど、この作業にはどのような意味があるのか自分の言葉で言語化できないもやもやを感じながら取り組んでいた業務もありました。

しかし本書の内容を踏まえると、たとえ一見単調に見える作業であっても、「これは誰にどのような価値を提供しているのか」を自分の言葉で捉えなおすことができれば、その作業に新たな価値を見出し、その人にとっての仕事の意味合いや向き合い方は大きく変わっていくのだと感じました。

本書で述べられている通り、言語化は単なる整理ではなく、行動を変える起点であり、自身の思考や仕事の価値を深めるための重要なプロセスであると言えます。

3. 言語化とは明確化である

ではその「言語化」は具体的にどのように行えばよいでしょうか。

先ほど言語化することでやりがいが生まれるという話をしましたが、そのためには言葉を曖昧なままにしないことが重要です。

木暮氏は「言語化=明確化」と述べています。
つまり、ただ言葉にするだけではなく、その言葉の意味をはっきりさせる必要があるということです。

例えば、

「いい成果を期待しているよ」
「コミュニケーションは大切だ」
「価値を提供しよう」

これらは言語化したと言えるでしょうか。

上記は日常でよく使われる言葉ですが、人によって解釈が異なる、非常に曖昧な表現です。日本語は便利な反面、「なんとなく分かった気になる言葉」が多く、意味の輪郭がぼやけたまま使われてしまいがちです。

そのために木暮氏は言葉を定義することが必要だと述べています。
そしてその方法は「必要条件をあげること」だといいます。

先ほど触れた「成長」を例に考えてみます。
「成長とは、××である」と定義しようとすると途端に難しく感じます。

そこで木暮氏はどんな要素があれば、「成長」だと言えるのか、必要条件を挙げていく必要があると述べています。

例えば、私にとって成長の必要条件は、

ある事柄に対して、

・できなかった事、知らなかった事が解消されていく実感が得られること
・「苦手=避ける対象」から「対応可能な課題」へと認識が変化すること
・俯瞰して捉え、自ら判断し行動に移す力がつくこと

この3つです。
これらが満たされた時、私は成長したと捉えています。

このように定義することで自分が何を目指しているか、何をもって成長したといえるのかが明確になります。

そして、その基準を持つことで、日々の行動や判断にも一貫性が生まれ、目指したいゴールへの道筋が見えていきます。

あなたにとっての「成長」とは何でしょうか。

その言葉を、自分の言葉で定義できたとき、「成長」はただの抽象的な概念から、何をどのように行動するか考えるための基準へと変わっていきます。

逆を言えば、言葉を定義しなければ、それを目指すこともできないのです。

4. おわりに

いかがでしたでしょうか。

本書を通じて、言語化は仕事の価値を捉え直し、やりがいへと変えていく力を持っていると改めて実感しました。

私はこれまで、「この仕事は何のために行っているのか」を自分の言葉で説明できないことに、どこかもどかしさを感じる場面がありました。

しかしそれは、仕事に価値がないのではなく、自分の中で言語化できていなかっただけなのだと思います。
言語化できないものは、存在していないのと同じです。

どれだけ考えていても、どれだけ感じていても、それを言葉にできなければ、自分の中でも相手に対しても価値として扱うことができません。

だからこそ、日々の業務の中で「この仕事は誰のために、どのような価値を提供しているのか」を自分の言葉で捉え直すことが重要なのだと感じています。

もし今、目の前の仕事にやりがいを感じられていないとしたら、まずは自分の仕事の価値を言葉にしてみることをおすすめします。

やりがいとは、仕事の中に最初からあるものではなく、自分の中にある価値を言葉として定義したときに初めて生まれるものです。

そして言葉にできた時、これまでと同じ仕事であっても、見える景色は変わっていくのではないでしょうか。

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【毎週月曜日配信】営業担当者なら読んでおきたい一冊を、毎週厳選してご紹介しています。
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池田優梨香

宮城県出身。2026年4月アルヴァスデザイン入社。
趣味はジム、旅行、読書。心休まる時間の確保を大切にしています。

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