部下からも会社からも信頼される中間管理職の教科書(手塚利夫著 2016年 同文舘出版)今、立ち返りたい部下との関わり方
こんにちは、伊藤です。
今回ご紹介するのは「部下からも会社からも信頼される中間管理職の教科書」(手塚利夫著 2016年 同文舘出版)です。
著者の手塚利夫氏は1999年いすゞ自動車の子会社において、「キャリア開発」取締役になり、2001年同社を退職し、その後株式会社スコラ・コンサルトと共に自動車・電機・機械などメーカー系企業を主体に風土改革支援を行なっている風土改革コンサルタントです。
「中間管理職」の多くは、「課長・マネージャーなどの内示をもらったときが一番うれしかった」と、ため息をつきます。
動いてくれない部下に気遣いをしなくてはならない、会社からもお客様からも無理難題を押しつけられる、他部門との連携がうまく取れない、職場の同調圧力に屈してしまう……。
中間管理職という役職にマイナスなイメージを連想してしまう方も、多いのではないでしょうか。
本書では、そんな「板挟み」状態でしんどいリーダーが、ムリなく自然に人を動かすコツをQ&A形式で分かりやすく紹介しています。
今回は、マネジメントにおいても大切な「人を動かすコツ」について焦点を当てていきます。
今一度この本を読んで、「部下や周囲とのかかわり方、考え方」について学び、自分や身の回りで起きるコミュニケーションを再認識できればいいと思います。
1. 「仕事に厳しく、人に優しく」
部下育成の場面で、よくこんな言葉を耳にします。
「なぜ、私の部下は言われたことすらできないのか。」
このような悲痛の言葉は、多くのマネージャーが心で叫んだことがあるでしょう。
確かに、私も前職のユニクロでマネージャーをしていた時代に、同じような苦悩を感じたことがあります。
例えば、お客様に気持ちよく買っていただくために商品整理を行うのですが、商品整理を行うスタッフに「ここからここまでの範囲を○時までにやってみよう!」と伝え、その時間になって確認をしに行くと、全然終わっていない…。このような現象がよく起きました。
初めから「依頼した内容ができる」とは難しいということは認識していましたが、何度も伝えても現状は変わらない…。
そんな時に思うのです。「なぜ、言われたことすらできないのか」と。
しかし、この言葉を部下に発言する前に、一度自分の中で立ち止まってみようというのが、本書のメッセージです。
私も、過去のユニクロ マネージャー時代を想像し、立ち止まり振り返ってみます。
振り返る際に、大切になる問いがこちらです。
そもそもその部下への教育や周囲の環境づくりは日頃行っていたか?
部下育成をする際には、マネージャー自身がこの問いを胸に手をあてて考えるべきだと思います。
確かに、時には厳しく指導することも大切ですが、部下のやる気がそがれてしまっては意味がありません。
本書いわく、
部下のやる気を引き出すために大切なことは「仕事に厳しく、人に優しく」です。
部下ができていないことを曖昧にしないで、真正面から向き合い、一緒に考えることが「仕事に厳しく」。
そして、できない理由や苦手な部分を改善できるように協力することが「人に優しく」である。
このバランスが非常に大切であると筆者は言います。
2. 仕事の依頼の仕方
次に、職場でありがちなシーンを想定してみましょう。
あなたは上司です。職場にお客様を迎えるカウンターにモノが置いてありました。
部下のAさんに、
「Aさん、これを片付けておいてください」
と伝えたら、Aさんはカウンターのモノを片付けづけました。
しかし、モノを上から下に動かし、お客様から見える位置に乱暴に置いただけでした。
あなたは、「Aさん、ここはだめだよ。お客様の目についてしまうから不快な思いをさせてしまうよね」と注意しました。
すると、Aさんから「片付けてくださいと言われたので片付けましたが…。」という言葉が返ってました。
また、別の日にカウンターにモノが置いてありました。
その場に居合わせた部下のBさんにあなたはどのように伝えるでしょうか?考えてみましょう。
この問いに画一的な正解はないと思いますが、このように伝えると良いかもしれません。
「Bさん、カウンターにモノが置いてありますね。お客様を迎えるカウンターが物置になっていては不愉快な思いをさせてしまいますね。我々としてもお客様を気持ちよく迎えたいですよね。」
この言葉を伝えた後、Bさんはカウンターからモノを片付けるだけではなく、お客様の目につかないところに移動させ、なおかつ、カウンターがホコリで汚れていたので綺麗に拭き、小さな花瓶に水を入れて花を一輪飾りました。
なぜ、AさんとBさんの行動は、これほどにも異なるのでしょうか。
それは、仕事を依頼する際の「目的」や「背景」を明確に伝えているためです。
伝え方次第で相手の行動は、大きく変わるものです。本書では、
部下やほかの人に仕事を頼むときには、何をやるのかを説明するのに1割、その目的や背景を伝えることに9割の時間を使うと良い
と書かれています。
つまり、「これをやってください」よりも「何のためにやるのか」を十分に説明すべきだということになります
なぜなら、背景や目的を十分に伝えずにやることだけを伝えると、「言われたことだけをやる」という思考が根付き、最悪の場合「言われた通りにやるだけで、私には責任はありませんという!」という無責任な仕事への姿勢も醸成されてしまうかもしれないためです。
3. おわりに
いかがでしたでしょうか。今回は「部下や周囲との関わり方・考え方」について見てきました。この本は部下との関わり方以外にもチームをどう構築していくか、上司との付き合い方など中間管理職が抱えているような課題も多く紹介されています。
最後に、著者の手塚さんが考える「信頼されるリーダーの3つの心得」を紹介します。
- 「部下の話をただ聴くだけではなく、受け入れる姿勢で聴く」
- 「課題に取り組む過程や、部下のモチベーションにも着目し、結果だけを見ない」
- 「会社がやって欲しいことを示しつつ、個人のやりたいことを重ねていく」
本コラムで紹介した内容をぜひ現場のご参考にしていただければと思います。
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