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失敗の科学―失敗から学習できる組織、できない組織 ( マシュー・サイド著 2016年 discover21 )失敗は「してもよい」ではく、「しなくてはならない」

こんにちは。荻原です。

本日は「失敗」をテーマに書かれた名著「失敗の科学ー失敗から学習できる組織、出来ない組織」をご紹介します。

 

 

著者のマシュー・サイド氏は、オックスフォード大学哲学政治経済学部を首席で卒業後、卓球選手としても活躍し、10年近くイングランド1位の座を守りました。また、英国タイムズ紙の一級コラムニストでもあります。

さて、本題に入る前に皆さんは「失敗」についてどのような認識を持っていますでしょうか?
プラスのイメージでしょうか?それともマイナスなイメージでしょうか?

私は完全にマイナスなイメージしかありませんでした。なぜなら、「失敗=過ち」という認識が強いからです。
辞書で「失敗」という単語を調べてみても

「物事をやり損なうこと」
「方法や目的を誤って良い結果をえられないこと」

と出てきます。

辞書からも、プラスのイメージを持った言葉ではないということがわかります。

しかし、世の中には「失敗」をプラスに捉えている言葉も存在します。みなさんも一度は上司や先輩から聞いたことがある言葉かもしれません。

「成功するために失敗は欠かせない」

本当にこの言葉は真実なのでしょうか?

社会人になってから繰り返し聞いてきたこの言葉ですが、この書籍を通して、「成功するためには失敗は必要不可欠なものである」という確信が持てました。
もし失敗が続いている、失敗って怖いな、失敗なんてしたくない!と思っている方がいらっしゃれば、本書は良い気付きを与えてくれることでしょう。

 

1. 成功するために失敗は欠かせない

本書では、数多くの事例を元になぜ失敗が成功のために欠かせないのかが語られています。
今回はその中でも2つの事例をご紹介します。

■事例1:数学者VS社内メンバーの失敗
まずは、大手洗剤メーカーの洗剤噴霧用ノズル開発の話です。
皆さんはユニリーバという会社をご存知でしょうか?洗剤などを扱う大手メーカーです。「LUX」などのシャンプーが有名であります。彼らは以前から、洗剤を生産する過程でノズルの噴霧部が詰まりやすく一定の生産性を保てないという課題を抱えていました。事態を打開するため、優秀な数学者を複数名集め、数学的な観点から全く新しいノズルを開発するプロジェクトを立ち上げることにしたそうです。数ヶ月の後、複雑な計算を重ねた結果、理論上完璧なノズルの開発に成功しました。しかし、悲しいことに結果は散々だったそうです。

事態を重く見たユニリーバは今度は、数学者ではなく、社内メンバーにノズル開発を依頼しました。彼らは複雑な計算式は全く分かりませんでしたが、失敗を分析することができました。のべ449回に及ぶ失敗の末、ようやく完成させたノズルは数学者たちが当初予想したノズルとは全く異なる形になったそうです。

 

■事例2:質VS量
次に、陶芸教室で行われた実験です。研究者は陶芸教室に通い始めた生徒を2グループに分けました。
Aグループは最終的なアウトプット作品を「質」判断すると告げ、Bグループは「量」で評価すると告げました。
一見、制作のたびに熟考し最良のものアウトプットするAグループ(質グループ)が最も良い作品を作れると考えやすいですが、実際に最も質の高い作品を制作することができたのは、グループBの量グループであったそうです。

事例1、2ともに共通していることは、都度結果からフィードバックをもらいながら試行回数を重ねているということです。そして、失敗回数が多いことです。

ユニリーバでは、試作したノズルがどのような結果をもたらしたのか。結果、詰まったのか、詰まらなかったのか。

陶芸教室では、自分の制作した作品がどのような形になったのか。結果、形が滑らかになったのか、思った形にできなかったのか。

確認しながら失敗を繰り返しています。

しかし、ここで特に注意しないといけないのは、どちらも失敗からフィードバックを貰える環境であったという点です。闇雲に回数をこなせば結果を出せるわけではないということには注意が必要です。

では、結果から得られるフィードバックすら捻じ曲げてしまう認知の歪みが存在するとしたらいかがでしょう?

2. 自己肯定の魔力

失敗を加速させてしまう要因はいくつも存在します。今回は特に営業担当者が陥りやすい認知の歪みを招く、「認知的不協和」について考えていきたいです。

認知的不協和、これはビジネス書にも登場するのでご存知の方もいるかも知れません。心理学の用語であり、

自分の信念と事実が矛盾した際によって生じるストレスや違和感を自身の認知を歪めることにより解消させる心理現象

のことです。無意識的に行われることもあり、なかなか自身では気づきにくい特徴があります。

身近な例を一つみていきましょう。
Aさんはもっと仕事で成果を出すために、早起きを習慣化させ、朝から読書をしようと考えたとします。しかし、なかなか生活習慣を変えられず、いつものように夜更しをしてしまったとしましょう。この場合、理想の自分と現実の自分には大きな乖離が生じます。自分自身がだらしない人間であると自らを攻めるのは精神的にも苦しいので、「自分は夜型人間だから早起きの習慣を身につけられないんだ」と考え、自らを正当化しようとすることが増えます。
しかし、日がたつにつれ、自分がなぜ夜型人間であると感じるのかを忘れていきます。これが認知の歪みです。結果、自らの認知は歪み、あるはずのない幻が記憶として定着してしまうのです。

そしてこれが、認知的不協和です。
恐ろしいですよね。もちろん上記はあくまで例ですが、近いことを経験したことがあるのではないでしょうか?

本当かな?と感じた人のために、本書に載っていた事例を1つご紹介したいと思います。
嘘みたいな本当の話です。

1954年、後に認知的不協和を提唱することになるフェスティンガーはとある奇妙な新聞見出しを見つけました。そこには、「霊能力者が神から世界滅亡のメッセージを受け取った」とありました。これは、人の心理を観察する最高のチャンスであると思い、彼は潜入することにしたそうです。霊能力者の元に潜入すると、そこには多くの人々が集まっていたそうです。中には仕事を辞めた方もいたそうです。

もちろんメッセージ(予言)は外れました。通常であれば、霊能力者のことを詐欺師呼ばわりして激怒しそうなのですが、信者達は真逆の行動を取ったそうです。何事もなかったように行動し、幻滅することはなかったそうです。恐ろしいのは、集まった内の何人かは、霊能力者が世界滅亡を止めたと思い、以前よりも信仰心を強めたというのです。

いかがでしたでしょうか?
少し極端な例だったかもしれません。しかし、認知的不協和の厄介さと力を確認できたと思います。

では、なぜ認知的不協和が失敗からの学習機会を阻む原因になってしまうのか?
それは、自らを正当化することで、結果からのフィードバック(体験)を捻じ曲げてしまうためです。

しかし、悲しいことにこうした認知の歪みは組織内部でも行われることがあります。
次の章では特に営業担当者が陥りがちな事例を一つ見ていきたいと思います。

3. 営業担当者AさんとBさんの事例

営業担当者をベースに事例を考えてみましょう。
営業担当者であれば、一度は経験したことがあると答える方が多い「テレアポ」を事例に考えてみたいと思います。

■営業担当者Aさん
テレアポは「質」が大事であると考える完璧主義タイプ。とにかく電話一件一件の質にこだわり、架電前のシュミュレーションも欠かしません。しかしその分、架電本数は多くはありません。また、失敗を否定的に捉えている側面があるため、失敗をしても進んで先輩や上司に報告をしません。そのため、失敗をすると自分で解決方法を模索し、改善に努めます。しかし、なかなか成果が上がらないので、悩んでいます。最近では、「自分にはテレアポのような単純作業は向いていないのではないか」と考え転職を検討し始めています。

■営業担当者Bさん
テレアポは「量」をこなすことが大事であると考える試行錯誤タイプ。一日に1件でも多く架電をしようと努めます。失敗は成長には必要不可欠であると考えるため、失敗をしても、上司や先輩に報告し、フィードバックをもらうことを徹底しています。また、失敗をする度に「なぜ失敗をしてしまったのか」を自己分析しつつ、上司や先輩からもらったフィードバックを次の架電で活かそうとします。最近では、成果が出始めており、周り評価も上がってきています。「自分にはテレアポが向いている」と感じるようにもなりました。

営業担当者AさんとBさんそれぞれ共通して「成果を上げようと努めている」という点には何も違いはありません。違いがあるとすれば、試行回数と失敗に対する認識くらいです。

もちろん、失敗は怖いものです。しかし、失敗をしたからこそ学べるものはあれど、学べないものはありません。

たくさん失敗すれば、それだけ多くのフィードバックを獲得することができます。多くのフィードバックが成長には欠かせない、だからこそ、成功に失敗は欠かせないのではないのでしょうか。

4. おわりに

こうしてみると、巷で言われている「成功するために失敗は欠かせない」は本当であったことが分かりますね。しかし、同時に闇雲にトラインアンドエラーを繰り返せばよいわけではないということも分かったかと思います。大切なのは、失敗をしても挫くけることなく、「その失敗から学び、次に活かす」これを続けることなのではないでしょうか。
是非、皆さまの営業の力づけになれば幸いです。

 

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