成長する管理職~優れたマネジャーはいかに経験から学んでいるのか~(松尾 睦著 2013年 東洋経済新報社)
こんにちは、猪嶋です。
本日のトップセールスの本棚では、「成長する管理職~優れたマネジャーはいかに経験から学んでいるのか~」をご紹介します。
マネジメントの初心者だった当時、このタイトルに惹かれて、手に取ったことをよく覚えています。まさにマネジメントにおける正解を探していたのかもしれません。ただ、その後すぐにマネジメントには正解がないということがわかりました。(笑)
「優秀な営業パーソンが、必ずしも優秀な営業マネジャーになれるわけではない」という壁にぶつかっている方は少なくはないと思います。私もその一人で、日々悪戦苦闘しております。毎日が、自問自答の繰り返しで、正解がない中、試行錯誤の連続です。
ここでは、本書における『優秀なマネジャーとして成長するために必要な経験とその経験がどのような能力を醸成しているか』に関する内容をお伝えいたします。
「営業マネジャーとしてもトップを目指したい!」という気持ちが強い方にとって、『マネジャーとしての自己能力開発』という視点で日々の経験値を自覚的に高めていくことに役立てていただければ幸いです。
目次
1. 優秀なマネジャーとして成長するために必要な経験
優秀なマネージャーになる過程において、とても大切なことは「一皮むけた経験」です。
本分野は、多くの研究がなされており、この経験を「課題・苦難・他者」でカテゴリー分けされたものが存在します。(本書18ページに記載されていますが、本コラムでは割愛させていただきます。)
本書における研究の中で「優秀なマネジャー」になる過程では、以下の3つの経験が重要であると示唆しています。
(1)他部門や外部組織と越えて連携した経験
(2)事業の再編、制度改革、戦略の企画・立案など、変革に参加した経験
(3)部下(後輩)を育成した経験
また、ここで補足していきたいことは、(1)と(2)については、自ら積極的に機会を作ろうとしない限り経験できない事柄であるということです。
皆さんは、これらの(1)~(3)に該当するご経験をされたことはありますか?ご経験がある方は、まさに、「一皮むけた経験」をされたと言えますね。
2. 優秀なマネジャーの能力開発に必要な経験と強化される能力の関連性
本書における研究の中で、『優秀なマネジャーは、「①情報分析力」によって現状を把握し、「②目標共有力」で目標を浸透させ、「③事業実行力」で価値を生み出していく』と整理しています。
これらの能力を高めるためには、仕事を通じてさまざまなことを経験していく必要があります。
ここで、前章でお伝えした(1)~(3)を経験すると、「優秀なマネージャーが持つ3つ能力の内、どの能力が強化されるのか」という関係性を考えてみることにします。
- 情報分析力・・・(1)他部門や外部組織と越えて連携した経験
部門を越えて連携した経験により、「お客様や競合の情報を収集し、物事の原因を見定め、広い視野で現状を把握する力」が高まる
- 目標共有力・・・(3)部下(後輩)を育成した経験
仕事を通して部下を育てたり、彼らのモチベーションを上げて組織としての一体感を醸成したりする経験によって、「単にビジョンや目標を示すだけでなく、それを部門内に浸透させ、メンバーを巻き込む力」が高まる
- 事業実行力・・・(2)事業の再編、制度改革、戦略の企画・立案など、変革に参加した経験
「ビジネスチャンスを見極めて事業化し、新しい価値を実現する力」が高まる
能力開発に必要な経験を理解した上で、それをさらに具体的な事例に落とし込んで理解を深めていきましょう。
3. 1つの経験を確実に学びに変える意識
人は無意識下であっても、ある程度の経験を積めば、「自動的にある能力が身につく」と言えます。
しかし、裏を返せば「得たい能力」や「伸ばしたい能力」の強化につながる経験は自ら掴みにいかなければなりません。まさに、「学び取る」という感覚です。
私自身は、本書を読んで大きく変わったことがあります。
それは、「経験を振り返ること」です。具体的には、本書でも触れられております『経験学習サイクル』を念頭にして、1週間の出来事を①成果創出②人材育成の2軸で振り返っています。
私にとって、成果と人材育成に関する出来事は「得たい能力」「伸ばしたい能力」を高めてくれる経験そのものだからです。
その結果、狙った学びを得ることができ、その蓄積が増えるにつれて、自身のマネジメントスタイルも進化していることが実感できています。
冒頭でもお伝えした通り、マネジメントには正解がないので、日々振り返りと学びですね。
また、このルーティンを行い始めてから、振り返りから得た自分の考えを共有し、それに対する “フィードバック”をもらうために、自分からメンバーへコミュニケーションを取りに行くことが増えました。
結果として、相互に意思疎通をする機会が増え相互理解も深まったと感じます。加えて、最初は自分から部下へのコミュニケーションというベクトルでしたが、「部下から自分へコミュニケーションを取ってくれること」も増えました。
この双方向のベクトルが整ったことで、マネジメントが円滑にできるようになりました。これは、経験から学ぶことを通じた「副産物」だと思っています。(※“フィードバック”もマネジャーに不可欠な営みですので、別の機会で紹介します。)
4. 積極的な経験によって得たマネージャーとして大切なもの
前述のとおり、優秀なマネジャーに必要な3つの経験のうち、2つが自ら積極的に機会を得ようとしなければ得られません。
つまり、自ら経験できる機会を作ることで、優秀なマネジャーへの道を切り開いていくことが重要です。待っているだけでは、成長のチャンスを逃すとも言えますね。
自身の経験では、「部門横断のプロジェクト」が最も心に残っています。
まさに、自分の能力値を超える中で、積極的に志願して参加したプロジェクトだったからです。
部門横断のプロジェクトのテーマは、「事業の再編、制度改革、戦略の企画・立案」に関することが多く、また「他部門との連携」が必須となります。つまり、積みにくい経験を積める場です。
私が若手時代に初めて参加した際には、自分の仕事を「一段高い視座」で、「多角的」に捉えることが出来るようになり、そのことが営業の提案力につながったことをよく覚えています。
皆様には、チャレンジできる機会があれば、積極的に手を挙げてもらうことをお勧めします!
また、「部門横断のプロジェクト」への参加が多くなると、その経験を買われて、自然とプロジェクトへの参加を求められるようになり、「経験を積めるサイクル」が回り始めました。
今では、プロジェクトを通じて、メンバーにいかに成長機会を提供できるかを考え、3つ全ての経験を積める場になるように意識しています。
5. おわりに
『マネジャーの成長のうち7割が直接的な仕事経験、2割が周囲からのアドバイス、1割が書籍・研修からの学びによって決まる』というのが、これまでの研究から導かれているとのこと。
「マネジャーとして一皮むけた経験」に向けて、意識的に「経験から学ぶこと」、「経験を獲得すること」を実践していきましょう!
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【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
猪嶋 孝典
香川県出身。新卒で、大手電機メーカーに入社し、経理を担当。営業への強い憧れから、人材育成・組織開発サービス会社に転職。約10年間、一貫して法人営業に従事。その後、総合商社の人事子会社にて、約7年間、本社社員向け研修の設計及び講師登壇を行う。
2022年9月アルヴァスデザインに参画。座右の銘は、「可能性を信じる」と「挑戦と創造」。