ALVAS JOURNAL

芥川龍之介全集1より短編小説:手巾(はんけち)(芥川龍之介著 1986年 ちくま文庫)

こんにちは。石井です。

今回から、ちくま文庫から出版されている芥川龍之介全集(全8巻)の中から、厳選したものを皆さんにお届けします。

芥川龍之介を知らない方はいないでしょう。現在においても、「芥川賞」は大変名誉のある賞ですし、彼の作品は教科書にも取り上げられています。

羅生門、蜘蛛の糸、鼻、蜜柑など、さまざまな短編小説を残した小説家です。

本日は、芥川龍之介の「手巾(はんけち)」をお届けします。

第一回:

 

目次

1. 芥川龍之介という人物(再掲載)

芥川龍之介は、1892年に現在の東京都中央区で生まれました。1927年に睡眠薬を大量に摂取し亡くなったので、享年は35歳です。

亡くなる際に、「ぼんやりとした不安」という言葉を残したことも有名ですね。

さて、芥川龍之介は35年の生涯でしたが、「羅生門」を執筆したのが23歳ですし、「鼻」も24歳の時です。つまり、かなりの早熟と言えます。

夏目漱石に、「鼻」を絶賛され、その後瞬く間に小説界のトップまで登り詰めたのです。

2. 「手巾(はんけち)」という小説

手巾は、「新渡戸稲造」を主人公にした小説と言われています。新渡戸稲造は、旧5,000円札の肖像画になっていた人物であり、「武士道」という書籍が有名ですね。

さて、芥川龍之介が新渡戸稲造の武士道について書いたものが本小説です。

前半部分を簡単に要約すると下記のようになります。

主人公である長谷川先生(新渡戸稲造)は、日本の発展が物質に偏っていることを危惧し、精神的には進歩どころか衰退していると考えていた。そして、それを解決するためには日本固有の武士道による他ないと考えていた。

ここで、注目したいことは、長谷川先生が単に武士道を復刻するだけではなく、欧米各国の基督教的な精神と武士道の一致こそが、相互理解と相互の繁栄につながると考えたことです。

新渡戸稲造は、武士道だけではなくキリスト教からも多大な影響を受けていた人物ですが、彼が武士道とキリスト教の一致を説いている事は、もっとも注目したい点です。

さて、このように当時の日本を憂いていた長谷川先生の元にある女性が訪れます。その女性とは、長谷川先生の昔の教え子の親だったのです。彼女は、長谷川先生に対して息子が病で亡くなったことを告げに来ました。

そこで長谷川先生は、彼女に対して奇妙なことを感じます。それは、「息子が亡くなったにも関わらず、全く平然としていること」です。なんだか、ビクッとしますよね。

そして、その後長谷川先生はもう1つの発見をします。それは、「彼女が机の下で手巾を固く握り、震えていること」でした。つまり、彼女は毅然とした態度を装ってはいたものの、全身で泣いていたのです。

3. 本小説からの学び

私は本小説から、日本の武士道という血を感じずにはいられませんでした。

誰がどう考えても、息子の死は母親にとってつらいに決まっています。しかし、彼女は先生の前で毅然とした態度を取ろうとした、それは精一杯生ききった息子への愛や想いが詰まってこそだと感じました。

私たちは、平和な日本にいると自身や身内の死を考えないで生きることができます。

しかし、私たちが人生を生ききることを考えるならば、やはり死も考えなければならないのではないでしょうか。

そして、誰かの死に遭遇した場合、亡くなった方の人生を想い、背負って私たちは生きていかねばならないのです。

生きていく私たちが精一杯生きることとは、目の前の仕事に打ち込み、世の中に貢献していくことに他ならないと、私は考えています。

人生とは有限です。だからこそ、価値のある仕事をしたいはずです。

営業とは、「誰かの有限の人生を応援すること」でもあります。

お客様の人生をより良いものにするために、営業パーソンは何ができるのか?それを考えるきっかけを与えてくれるのが、本書だと思っています。

4. おわりに

いかがでしたでしょうか。

本日は、芥川龍之介の「手巾」をご紹介しました。私の個人的な解釈や意見を多く含んだコラムでしたが、皆さんにとって何か気づきはございましたでしょうか。

芥川龍之介の小説の多くは短編であり、比較的短時間で読むことができます。

しかし、それを自身の人生と照らし合わせて考えると、多くの時間を要することがわかります。だからこそ、良い学びや示唆を与えてくれるとも言えるのでしょう。

気になる方は是非、お手に取ってみてください。

 

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