ALVAS JOURNAL

胎児の世界 人類の生命記憶(三木 成夫著1983年 中公新書)~乗り越える力、それはすでに私たちの手にある!~

こんにちは。石井です。

今回は、書籍「胎児の世界」をご紹介します。

本書は、東京大学医学部をご卒業され、その後、東京芸術大学において教授をされた三木成夫先生の著作です。

「東京大学医学部」を卒業され、「東京芸術大学」で教授をされていた・・・
このご経歴を見て、なんだか不思議な気持ちを覚えた・・・というのが、本書を取ったときのはじめの所感です。

ただ、読み進めていくとわかります。
私たち人間を知ることは、ただサイエンスの世界ではないということを。そして、とてもミステリアスで、宇宙的で、そして神秘的でもあるのが、私たち人間という存在であることを。

今回は、本書を通じて私たちがどのようにして生まれ、そしてどのようにして壁を乗り越え、そしてこれからどうなっていくのか?ということを考えたいと思います。少しでも皆さんの生きる力にエネルギーが注入されると嬉しく思います。

 

目次

    1. 三木成夫先生

    皆さんは、三木成夫先生をご存じですか?

    恥ずかしながら、私はつい最近まで存じ上げず、たくさん出されている著作の1つも手に取ったことがありませんでした。書籍の多くが、「生命の誕生」に関連したものであり、それは私の重要な興味分野の1つであるにも関わらず・・・

    さて、三木成夫先生は1925年(大正14年)に香川県で生まれた方です。残念ながら、1987年にご逝去されていますが、前述した通り数々の書籍をこの世に残しました。

    代表的な著作としては、このようなものがあります。

    私は、「胎児の世界」を読んだその日に上記の本を全て購入したほど、とてもビビッとくるものがありました。

    三木成夫先生は、著作である「生活とリズム」において、ゲーテの自然科学に傾倒しているわけではないと述べていますが、少なくとも大きな影響を受けていることが伺え取れます。

    ゲーテと言えば、「若きウェルテルの悩み」が有名ですが、自然科学や色彩学をはじめ、さまざまな分野においてその知性を発揮されました。三木成夫先生も、東京大学医学部を卒業後、さまざまな興味分野を広げ、サイエンスだけではない何か神秘的な世界へと自身の夢を運ばせたのだろうと思います。

    さて、本書の中身を見ていくことにしましょう

    2. 私たちは何からできた?


    私たちは、「猿」から「人間」となったのでしょうか。

    これは、本書には書かれておりませんが、「猿から人間へと進化した」というのは「種の起源」で有名なダーウィンの進化論の一説と捉えられています。
    (厳密に言うと、ダーウィンはこのような説を呈したわけではなく、世間の解釈がそうさせたとする意見もあります。)

    三木成夫先生いわく、私たちは「筒」だったようです。
    しかし、ただの筒ではありません。その筒は、私たちの内臓(腸)です。つまり、菌がその中で働いていたと述べているわけです。

    現在の科学では、菌がこの世には元々存在し、その菌が生きるために植物や動物が生まれた・・・とするのが主流になりつつあるようです。
    そうです、私たち人間も「主が菌であり、その菌が生きる場所として人間という箱がある」ということになります。この説にのっかると、私たちはただの筒であり、それ以外のものは後から発生したと考えるのが正しいようです。

    さて、これ以上この分野について気になる方はぜひ本書を手に取っていただくこととし、私たちが母胎の中でどのような成長を遂げてきたのか・・・というテーマに話を展開したいと思います。

    3. 私たちが乗り越えてきたもの


    この章でお伝えしたいことは、私たちは「母胎の中でさまざまな試練を乗り越えた」という事実です。

    ぜひ、「生命とリズム」の表紙に載っている以下の絵を見ていただきたいです。これは、なんだと思いますか?

    魚類ですか?
    それとも、ニワトリですか?
    いや、その他の生物でしょうか?
    もしや、実態のない生物の空想的な絵でしょうか?

    実は、この写真は私たち「人間」なのです。40日前後の私たちは、このような顔をしているのです。どこか、魚類に似てはおりませんか?

    それは、なぜか?

    答えは、私たちは元々海の中で筒として生まれ、その後も海の中で生きてきたからなのです。その後、私たちは肺を発達させ、地上への生活へと移行していきました。

    もしかしたら、途中、両生類のように水陸の両方で生活を経験してきたのかもしれません。

    さて、三木成夫先生によると、私たちは母胎の中で祖先が経験してきた変化を十月十日で経験するのです。これが本当だとすると、大変興味深くはないですか?

    古生代の一億年を数日で復習する胎児の世界

    三木成夫先生は、このような言葉を本書で述べています。ここから読み解けることは、「私たちは母胎の中で、さまざまな変化を経験し、乗り越える力を身に着けた」ということです。なぜならば、過去一億年に起きたことを、総復習するのですから・・・

    祖先が経験したことは良いこともあれば、大変なこともあったはずです。それを、私たちは、母胎から産まれる前に全て経験し、乗り越えるのです。

    だから、私たちは産まれたときに、すでに試練を乗り越える力を持っているのです。

    4. 未来への展望


    今まで、人間が大きく変化をしてきたように、未来に向けてもまた大きな変化を経験することでしょう。

    そんなとき、私たちは「おもかげ」というものを後世に残していくのだと思います。

    ふと懐かしく思うときや、何か見たことや感じたことがあると思うとき・・・
    そんなことはありませんか?

    これは、先祖記憶といって私たちの血に残されているものです。きっと、私たちもこれを後世に残していくのだと思います。

    そんなとき、私は内村鑑三の「後世の最大遺物」という本の一説を思い出します。それは、
    「金は残せないかもしれない、事業も残せないかもしれない、文学や芸術も・・・ただ、崇高な人生を送ってその精神をこの愛すべき地球に残すことはできるでしょう(当社にて編集)」
    という想いです。

    私は、私たちは後世へとどのような面影を残していくのか・・・残すべきなのか・・・
    それを今、生きているうちに考え、その上で力強く生きていきたいものです。

    5. おわりに


    いかがでしたでしょうか。

    本日は、三木成夫先生の書籍から私たちの源や成長、そして未来について考察してみました。

    私たちは、産まれたときすでに「試練を乗り越える力」を持っており、そして「後世に向けておもかげ」を残す存在だと思います。

    これを考えるとき、シューベルトの「冬の旅」にある「よそ者として訪れ、よそ者として去り行く。」(詩の原作は、ヴィルヘルム・ミュラー「冬の旅」)という言葉を忘れずにはいられません。

    今、試練がきても、自分には乗り越える力がすでにそなわっている・・・そんな気持ちで仕事にのぞんでいきましょう!

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    石井 健博

    ブランドマネージャーとして、マーケティングを担当。
    営業・リベラルアーツ・マネジメントなどのコラムを発信中。
    趣味は、読書・英語学習・ラグビー。5歳息子のパパ。

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