ALVAS JOURNAL

物語思考(けんすう(古川健介)著 2023年 幻冬舎)~ キャラ設定から始める、新しいキャリアの描き方〜

こんにちは。荻原です。

今回も引き続き、トップセールスの本棚をインタビュー形式でお届けしていきます。本日、インタビューに答えてくださったのは、アルヴァスデザインのプロデューサーとしてご活躍中の高谷さんです。

キャリアの転換期に自身の背中を押してくれた一冊として「物語思考」をご紹介いただきました。ビジネスパーソンの新たな可能性を開く思考法として、ぜひご一読ください。

 

目次

    1. 「物語思考」はどんな本ですか?


    荻原:本日は、よろしくお願いします。はじめに、高谷さんのおすすめの書籍について簡単にご紹介お願いします。

    高谷:私がご紹介したいのは『物語思考』という本です。2023年9月に出版された比較的新しい本になります。著者のけんすうさんは、受験生向けサービスを立ち上げてKDDIグループに売却した経験を持つ起業家で、現在は投資家としても活躍されている方です。

    本書は一般的な自己啓発本とは一線を画していて、著者が「栄養ドリンク的な本ではない」と明言しているのが特徴です。つまり、単に読んでやる気が出たり気持ちが高揚したりする本ではなく、具体的な「ハウツー」に徹底的にフォーカスした実践的な一冊なんです。

    荻原:なるほど。具体的にはどのようなアプローチなんでしょうか?

    高谷:本書で提唱されているのが「物語思考」というアプローチです。簡単に言うと、自分を物語の主人公として捉え、その主人公がどう行動すべきかを考えながら人生を切り開いていく方法論です。

    荻原:それは面白そうですね!興味深いです。

    2. 「物語思考」について、もう少し詳しく教えていただけますか?


    高谷:本書では、最初に「自分の頭で考えないことが大事」と説いています。一見矛盾しているようですが、これは「既存の枠に囚われずに発想を広げる」という意味です。

    例えば、年収300万円の人に「理想の収入は?」と聞くと、たいてい600万円や700万円といった現実的な範囲の答えが返ってきます。これは無意識のうちに自分に制限をかけている状態です。本来なら2,000万円でも3,000万円でも目指せるはずなのに、私たちは知らず知らずのうちに「現実的な範囲」という枠に自分を閉じ込めてしまっています。

    荻原:なるほど。自分で自分の可能性を狭めているわけですね。

    高谷:そうなんです。本書では、そういった自己制限から解放されるために、まず自分の「キャラ設定」を行うことを提案しています。
    本書の中では、矢沢永吉さんの例が特に印象に残りました。矢沢さんは実際には庶民的な方なのに、「矢沢永吉」というキャラクターとしては一泊100万円のホテルに泊まるような破天荒な行動をするといいます。これは「矢沢だったらどうする?」という視点で行動を選択しているからなんです。

    このように、自分自身を物語の主人公として捉え直すことで、今までの「普通の自分」の殻を破ることができる。それが物語思考の本質です。

    荻原:なるほど、キャラクターを設定することで、自分の固定観念から解放され、普段の自分では考えつかないような大胆な選択肢が見えてくるわけですね。

    高谷:はい。さらに重要なのは、このアプローチによって失敗への恐れが軽減される点です。物語として考えたとき、何も起こらない平凡な展開なんて誰も読みたくないですよね。むしろ失敗があって、それを乗り越えていく過程こそが魅力的な物語になるんです。

    例えば、会社での企画提案や新しいプロジェクトの立ち上げなどの場合。普通に考えると「失敗したらどうしよう」「周りからどう思われるだろう」という不安が先に立ちます。でも、これを物語として捉えると、その失敗や困難さえもストーリーの重要な要素として活かせますよね。むしろ、そういった山場があった方が、より魅力的な物語になります。

    荻原:それは目から鱗ですね。そう考えると、失敗すらも魅力的に感じられてきます。

    高谷:そうなんです。著者は「波風の立たない、何も起こらない日常なんて、誰も読みたくない」と言っています。人生を物語として捉えることで、チャレンジや失敗への恐れが、むしろワクワクする展開への期待に変わっていく…それが物語思考の大きな特徴であり、魅力です。

    3. 本書では何かワークは紹介されていますか?


    高谷:はい、例えば、「10年後になりたい自分を100個書き出す」というワークがあります。一見、100個も書けない…と思うかもしれませんが、制限を外して考えることで、自分でも気づかなかった可能性が見えてきます。

    他にも「自分がテンションの上がることは何か」「逆に何に興味がないか」「どんな時に充実感を感じるか」といった、自己理解を深めるための問いかけが体系的に準備されています。

    特に面白いのは、「なりたくない状態」を書き出すワークです。例えば「満員電車での通勤は嫌だ」「お金に困りたくない」といった否定的な思いがあるとします。これらの想いを、逆に理想の状態を具体的に描くヒントにするのです。

    荻原:なるほど。ワークを通じて自己理解を深めていくわけですね。

    高谷:そうです。さらに「なりたい状態に近い人は誰か」「その人は様々なシーンでどんな行動をするか」といったモデリングのためのワークも用意されています。これは先ほどお話しした矢沢永吉さんの例のように、具体的なロールモデルの行動パターンを分析して、自分のキャラクター設定に活かすためのものです。

    重要なのは、これらのワークが単なる「やってみましょう」という投げかけではなく、ステップ・バイ・ステップで具体的に何をすべきかが示されている点です。
    例えば、ロールモデルを分析する際も「朝起きてから夜寝るまでの行動を30分刻みで書き出してみる」「重要な場面での意思決定の基準を3つ挙げる」といった具合に、実践的なレベルまで落とし込まれています。

    荻原:理論を実践に落とし込むためのツールが充実しているのですね。

    高谷:はい。また、これらのワークは一度やって終わりではなく、定期的に見直して更新していくことを推奨しています。例えば、3ヶ月に一度見直すことで、自分の変化や成長を確認する。そういった継続的な実践のための具体的なスケジュールまで提案されています。

    荻原:そこまで徹底されているんですね。これは確かに栄養ドリンク的な書籍ではなさそうですね。

    4. どのような方に本書をお勧めしますか?


    高谷特に20代、30代のキャリア形成期の方におすすめです。30歳前後は、キャリアで悩む時期だと思います。
    「このまま今の仕事を続けていくべきか」「違う業界に挑戦すべきか」といった岐路に立つことも多いはずです。
    その時期に陥りがちな「自分で可能性に制限をかけてしまう」という罠から抜け出すためのヒントが、本書にはたくさん詰まっています。

    また、「やりたいことが見つからない」「行動に移せない」という課題を抱える方にも効果的です。本書は単なるモチベーションを上げるための本ではなく、具体的な行動指針を示してくれます。特に、これまでの自己啓発本で満足できなかった方には、新しい視点を提供してくれると思います。

    荻原:具体的にどういった変化が期待できるんでしょうか?

    高谷:まずは、日々の時間の使い方を見直すきっかけになります。例えば、仕事から帰って2時間の自由時間があるとして、それを漫然とYouTubeやNetflixを見て過ごすのか、それとも自分の理想の姿に近づくために投資するのか。本書を読むことで、そういった日常の選択の重要性に気づかされます。

    特に印象的なのは、本書が教えてくれる「長期的な視点」です。目の前の快適さや安定を選ぶのか、それとも理想の物語に向かって一歩を踏み出すのか。その判断基準を、「自分の人生という物語」という視点から考え直すことができます。

    荻原:なるほど。単なるキャリア設計だけでなく、日々の具体的な行動にまで影響を与える本なのですね。

    高谷:はい。最後に付け加えたいのは、本書は、年齢に関係なく、人生の転機を迎えている方にもおすすめだということです。40代、50代であっても、自分の新しい物語を描き始めることはできます。むしろ、人生経験が豊富な分、より深い物語を紡ぎ出せる可能性があると思います。

    荻原:なるほど。年齢を重ねることで、より深みのある物語を描けるというのは、とても希望が持てるお話ですね。多くの方にとって、新たな一歩を踏み出すきっかけになりそうです。本日は貴重なお話をありがとうございました。

    高谷:こちらこそありがとうございました。インタビューを通じて、言語化ができてとても楽しかったです。

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    荻原エデル

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    高谷 政志

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    営業一筋のキャリアから未経験で人材開発領域に転身。現在プロデューサーとして従事。
    奈良県出身。2児のパパ。

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