一瞬で大切なことを伝える技術(三谷 宏治著 2021年 三笠書房社)~「重要思考」で無駄をなくし、本当に大切なことに集中する~
こんにちは。荻原です。
今回も引き続き、トップセールスの本棚をインタビュー形式でお届けします。
本日、インタビューに答えてくださったのは、アルヴァスデザインでチーフプロデューサーとして活躍中の岩脇さんです。
コミュニケーションやビジネス思考の基本を身につけるための一冊として「一瞬で大切なことを伝える技術」をご紹介いただきました。表紙の可愛いペンギンのイラストが印象的な本書から、実務で役立つ「重要思考」の考え方について、詳しくお話を伺いました。
是非、ご一読ください。
目次
1. 「一瞬で大切なことを伝える技術」とはどんな書籍?
荻原:本日はよろしくお願いします。まずは、岩脇さんが選ばれた書籍について簡単にご紹介をお願いします。
岩脇:はい、私が選んだのは『一瞬で大切なことを伝える技術』という本です。著者は三谷宏治さんで、KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院や早稲田大学ビジネススクールの役員教授を務めている方です。
この本はタイトル通り、ロジカルにわかりやすくコミュニケーションを取る方法について書かれています。ただ、一般的なロジカルシンキングの本と違って、より実用的で実践的な内容になっています。
日常のコミュニケーションで「うまく伝えられなかった」「相手の言っていることがなんとなくわかるけれど、具体的に何を言いたいのかよくわからない」といった状況を、どう考えたらクリアにできるかが書かれています。
荻原:なるほど。会話や伝達の本質を体系的に学べる本なんですね。
岩脇:そうですね。特徴的なのは、かなり読みやすく工夫されている点です。表紙がポップなだけでなく、中身も漫画やイラストがたくさん入っていて、シュールで可愛いペンギンのキャラクターが登場します。内容自体は少し難しいのですが、編集者がビジュアル面で読みやすくしているのだと思います。
2. 「重要思考」の考え方から学んだこと
荻原:この本の中で特に印象に残ったことや学びを教えていただけますか?
岩脇:この本の中核となる「重要思考」という考え方が一番印象に残っています。簡単に言うと、表紙にも書かれているのですが「重み×差=インパクト」という公式です。これは、人に何かを伝える際や意思決定をする際のフレームワークになります。
「重み」というのは「何が大事か」を意味します。相手が何を大事にしているのか、または自分が何を大事にしているのかを示します。
そして「差」は「差をつける部分」です。この二つをかけ合わせることで「インパクト」が生まれるという考え方です。
具体例を挙げると、私が今度入社する新入社員の歓迎会の幹事としてお店の選定をするとします。ここで重み(=何が大事か)を考えます。
①新入社員がこれから安心して働けるようになってほしい
②所属チームの全員がなるべく参加してほしい
幹事として、もしこの2つが重みになるとすると、
①出席者全員と落ち着いた空間で会話ができ、時間的にも余裕があってほしい
⇒大きめの個室があるお店で、2時間半コースなど長時間のプランがあるお店を探す
②出席できない、したくないと思わせない配慮をしたい
⇒開催日を業務上余裕のある日にちにし、場所は会社からできるだけ近いお店を探す
という感じで整理ができます。このように考えると幹事としては筋の良い企画ができますし、出席者にも満足いただける可能性が高そうに感じませんか?
荻原:なるほど。幹事としてはこれ以外にも考えることがたくさんあるので、こうやって整理できると迷いがなくなって楽ですよね。
岩脇:そうなんです。この例の場合、他にも、
- 安いお店がいい
- 料理がおいしいお店がいい
- お酒の種類が多いお店がいい
- 景色が綺麗なお店がいい
といった「差」が先に浮かんでしまうことも多いと思います。
でも今回は新入社員の歓迎会で、目的はメンバー同士の親睦を深めることです。「重み」が整理できていないと出席者から、「料理はおいしかったけど、周りがうるさくて新人さんともあまり話せなかったね」「景色が綺麗そうで行きたかったんだけど夜遅くなっちゃうし今回は遠慮しておきます、ごめんなさい」といった声が出てしまうかもしれないですよね。
これでは目的が果たせないので、幹事のミッションとしてもいまいちな結果になってしまいます・・・。
荻原:正しく整理して判断できるから失敗しないんですね。日常生活でも使えるシーンがたくさんありそうですね。
岩脇:まさにその通りです。そして、この考え方は日常生活の中のコミュニケーションでも役立ちます。他人の話を聞くとき、「この人は今何を大事にしているんだろう」と考えることで、相手の言いたいことをいつも正確に理解できるようになります。。
荻原:確かに。非常に汎用性の高い思考法ですね。
3. 「重要思考」を実務に活かした例
荻原:実際に岩脇さんが「重要思考」の考え方を業務に活かされた例はありますか?
岩脇:はい、まず一番大きいのは「無駄なことをすることが減った」ということです。以前、私は学習塾を運営する会社で働いていた時期があるのですが、当時は「元気で明るい教室作り」にこだわって教室運営をしていました。講師やスタッフの来客対応や挨拶の声の大きさ、立ち振る舞いなどを重視していたんです。
でも、実際のところ塾の本来の目的は「生徒数を増やすこと」「合格実績を上げること」です。
親御さんが塾を選ぶときに大事にするのは、スタッフが元気かどうかではなく、受験に合格させてくれそうか、つまり合格率や受験知識の量といった専門性の部分なんです。私は「重み」を見誤っていたんですね。
「重要思考」の考え方を身につけてからは、相手が何を本当に大事にしているのかを常に考えるようになりました。そうすることで即対応が必要かどうか、時間をかけてでも質の高い対応が必要なのか、といった判断が上手くできるようになり、仕事の生産性が上がりました。
私の経験上、この判断ミスを引き起こす仕事が一番集まりやすいのがチャットだと思っています。チャットはライトなコミュニケーション手段なので、重要度の低いものから高いものまで幅広い指示や情報が集まってきます。すべてに即対応するのではなく、時には手を止めて重要度を正確に捉えることが大切だと学びました。
荻原:より正確に優先順位の付けられるようになったんですね。
岩脇:そうだと思います。7つの習慣の中でも、「緊急ではないが重要なこと」に対していかに意識的に向き合えるかが大切だと言われていますが、まさにそれを実践できるようになった気がします。チャットの例で言うと、過去の私は「嫌われたくない」「いい人と思われたい」という気持ちから、いつでもどんな内容でもすぐに返信するようにしていましたが、今は本当に重要なことに集中しています。
その結果、「岩脇さんはなかなかチャットを返してくれない」と言う人もたまにいますが、私にとってはそれも進歩の証なんです。
荻原:具体的な例としては、プレゼン資料作成に関してもこの考え方が使えそうですね。
岩脇:そうだと思います!多くの人はスライドデザインの細かい部分、例えばフォントや文字の太さ、枠線の色などをこだわろうとしてしまいがちです。でも本当に大事なのは、「伝えたい内容がしっかり相手に届くかどうか」です。相手の大事に刺さるポイント、つまり「差」の部分をいかに強調させるかといった本質的な部分にこだわるべきなんです。
4. 「一瞬で大切なことを伝える技術」はどんな人におすすめ?
荻原:この本はどのような方におすすめですか?
岩脇:一番おすすめしたいのは「無駄なことをやっている感覚がある人」、「仕事に追われているのに成果が出ていないと感じる人」です。本書の王道的な解釈では「インパクトのある良いことをやりましょう」という前向きなメッセージなのですが、私の経験からすると「無駄なことをやめましょう」という側面も非常に価値があると思います。
日々忙しく、ただひたすら追われている感覚がある人、何をやっても成果が出ないと感じている人は、この本を読むことで、自分の時間やパワーの使い方を見直すきっかけになると思います。
例えば、家庭での電気代節約を考えるとき、照明をこまめに消すことに意識が向きがちですが、実は夏場の電気代の53%はエアコンが占めているそうです。照明の節約より、エアコンの使用時間の短縮や設定温度の調整の方がはるかに効果的ですよね。
これはビジネスでも同じです。
営業の仕事で考えると、プレゼン資料の細かい重箱の隅のようなところにこだわることよりも、商談の中でお客様が本当に求めている課題を正確に深掘りすることの方がはるかに成果に直結します。
私たちはつい「目についた細かい部分」に時間をかけがちですが、本当に大事なことにフォーカスすることが、結果を大きく変えるのです。
荻原:身近な例でよくわかります。確かに限られた時間や資源をどこに使うかを考える上で役立ちそうですね。
岩脇:そうですね。この考え方は応用範囲が広く、コミュニケーションだけでなく、マーケティングにも活用できます。本書の最後の章では、ターゲット顧客が何を大事にしているかを見極め、そこにどうインパクトを与えるかについても書かれています。
荻原:とても興味深いです!今日はとても実用的なお話をありがとうございました。
岩脇:こちらこそありがとうございました。この本の内容をアウトプットすることで、私自身も理解が深まりました。皆さんも仕事の中で、「実はそこまで重要ではないのに時間をかけてしまっていること」はありませんか?
ぜひ、今日から「これは本当にやるべきことなのか?」と自分に問いかけてみてください。本当に価値のあることに集中することで、仕事の成果は大きく変わります。
皆さんも無駄を省き、本当に大切なことに集中する「重要思考」の考え方を身につけていただければ嬉しいです。
本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒一瞬で大切なことを伝える技術
【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
荻原エデル
社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。
岩脇泳喜
石川県出身。
前職では大手医療系人材会社にて、新規事業である健康経営事業の営業責任者として従事し、後発の事業ながら2024年には業界No.1の顧客数を達成。その後アルヴァスデザインに入社。
20代まではポンコツ営業パーソンだったため、そこからの成長角度は誰にも負けない自信あり。
二児のパパで、野球好き。DeNAファンで、年に3、4回は横浜スタジアムに応援に行っている。