ALVAS JOURNAL

アメリカの大学生が学んでいる本物の教養(斉藤 淳著 2023年 SBクリエイティブ社)~知識から教養へ、思考の質を変える~

こんにちは。荻原です。

今回も引き続き、トップセールスの本棚をインタビュー形式でお届けしていきます。本日、インタビューに答えてくださったのは、現役プロデューサーとして活躍中の松本さんです。

日本とアメリカの教養観の違いを通じて、真の学びとは何かを考えさせられる一冊をご紹介いただきました。「知識」と「教養」の本質的な違いについて、具体的な事例を交えながら語っていただきます。

是非、ご一読ください。

 

目次

    1. 書籍「アメリカの大学生が学んでいる本物の教養」の魅力とは?

    荻原:本日は、よろしくお願いします。はじめに、松本さんのおすすめの一冊について簡単にご紹介お願いします。

    松本:はい、今回私が選んだのは『アメリカの大学生が学んでいる本物の教養』という書籍です。著者は斉藤淳先生で、2023年1月に出版された比較的新しい本です。
    斉藤先生は日本人ですが、上智大学外国語学部卒業後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、イェール大学大学院で学ばれ、イェール大学政治学会助教授まで務められた方なので、日本とアメリカ両方の教育を深く理解されています。

    そんな経歴を持つ著者が、今の日本で一般的とされている「教養」と、本物の教養というのは別物ですよ、ということを紐解いて、今後の教養とはどうあるべきかを書いている本です。

    荻原:なるほど、日本とアメリカの教養の違いについて書かれているのですね。

    松本:その通りです。日本の教養はただ学んでアウトプットして、それを点数化するというものですが、本当の教養は学ぶことだけにとどまらず、学んだことをどう活かしていくかというところまで含んでいます。

    アメリカでは大学生がその教養の中でそれを実践していますが、日本はあくまで学んだことを点数として可視化するだけ…という現状があります。

    荻原:確かに日本ではテストでどうすれば高得点を取られるのかが重要視されがちですよね。

    松本:はい。本書では非常に分かりやすい例えが使われています。それが「水の選び方を学ぶか、井戸の掘り方を学ぶか」という違いです。

    荻原:水と井戸の話ですか。面白い表現ですね。

    松本:本書では、一つの比喩としてこんな表現が使われていました。日本ではコンビニに行けば綺麗な水が売られていて、その水の中で何を選ぶか。アルプスの水を選ぶのか、それとも違うブランドの水を選ぶのかという判断軸は教えてくれます。一方で、アメリカの教養は井戸の掘り方、つまりきれいな水をどうやって生み出すかを学ばせてくれるのです。

    荻原:なるほど。それは知識にも置き換えられるということですね。

    2. 「単に知っていることの価格破壊」という衝撃的な概念

    荻原:本書の中で特に印象に残った内容はありますか?

    松本:一番印象に残ったのは、「単に知っていることの価格破壊」という表現です。つまり、知っているということ自体にはもう価値がないということです。

    荻原:「価格破壊」とは興味深い表現ですね。

    松本:本書では、30年前のハードディスクドライブの値段を例に挙げています。30年前だと20メガバイトのハードドライブが20万円もしました。1メガバイトあたり1万円です。でも今のiPhoneのストレージは512ギガバイトあって、10万円ちょっとで手に入ります。

    荻原:確かに、技術の進歩によって情報の保存コストは劇的に下がりましたね。

    松本:30年前の計算で同じギガバイト数だと51億円したものが、今では10万円ちょっとで手に入る。同じように、知識の貯蔵装置にも、価格破壊が起きています。だから、もう知識を貯めておくこと自体の価値は正直下がっている。知っているだけでは価値ではなく、それは教養とは言えません、という話です。

    荻原:深い洞察ですね。情報の価値が下がっているという話は非常に示唆に富んでいますが、では、「教養」とは、どういう姿勢や行動を指すのでしょうか?

    松本:単に情報を集めるのではなく、その情報がどんな背景やプロセスを経て成り立っているのか、自分で問いを立てて、考え抜く、それが“教養”であると、本書から解釈しました。
    先ほどの例でいえば、「水はどこからどうやってきたのか?どういう経緯で生まれたのか?」までを理解するということです。つまり、「なぜそれが正しいのか?」「この情報はどんな前提で語られているのか?」という思考を通じて、初めて知識は血肉化されるということです。

    著者が伝えたかったのは、「情報を持っているかどうか」ではなく、「情報にどう向き合うか」が、これからの学びにおいて本質的に重要だということだと思います。

    荻原:非常に興味深いです。他にも印象に残った学びはありますか?

    松本:はい。たくさんありましたが、特に「正解の根拠まで考えてみる」というところは私によく刺さりました。正直なところ、正解って、今の時代では、結構あやふやな定義がなされていると思います。正解が一つではないということも多いですよね。

    荻原:確かにそれはそうですね。

    松本:歴史の授業でよく使われる例ですが、今までは1192年が「いい国作ろう鎌倉幕府」で覚えていたけれども、つい数年前に1185年に変更されました。今まで正解だと思っていたものが、実は正解ではなかったということです。

    荻原:確かに、定説が覆されることはありますね。

    松本:はい。それは、1192年が実は正解ではないのではないか?と考えた人がいるから1185年に変わったのであって、「いい国作ろう鎌倉幕府」が正解だと思い込んでいたら、もうそこまでで終わっていた話になります。

    荻原:確かにそれはそうですね。思考を止めてはいけないということですね。

    松本:そうです。正解の根拠としてなぜ1192年に鎌倉幕府ができたのか、こういう理由だから、この理由はこうだから…と深堀して考えていった時に、「あれ、実は違うのでは?」ということが発生する。

    A=Bがその世界の共通の認識だとされていても、なぜA=Bなのかというところまでしっかり理解して考えていくことが教養であって、時代によってA=BもA=CやDになることを理解できていることが教養だと本書では説明されています。

    3. 教養は現場で活きる

    荻原:この本を読んで、実際に日常生活で変わったことはありますか?

    松本:学びたい欲が以前よりも確かに湧いてきているなという感じがしています。本書には「学ぶ機会は日常に溢れている」という章もあって、難しい知識だけが教養ではないということが書かれていたからかもしれません。

    荻原:確かに考えてみればそうですよね。何か具体的に日常の中での学びについて書かれていましたか?

    松本:例えば、コンビニに行くという一つの動作だけでも得られることはとてもたくさんあります。おにぎりのパッケージの裏側を見て、どの工場から運ばれてきたのか、この地域のこのコンビニでは、この工場から来ていて、そこの生産ラインや経済活動の中心がどこにあるのか、そういったことを自分の中で考えることができるということですね。

    荻原:確かに、身近なものから学べることは多そうですね。

    松本:今までその表面上の綺麗なところしか見てこなくて、それが正しいと字面だけ見て思っていたことが、なぜ正しいのかというところまで考えたくなったというのが大きな変化です。

    荻原:教養への第一歩を踏み出したということですね。普段の営業現場でも活かせそうですね。

    松本:そうですね。営業でもまさに同じだなと思います。たとえば、「なぜお客様が自社を選んでくださっているのか?」とか、「なぜその要望が今、出てきたのか?」といった問いを立ててみる。
    ただ言われたことを鵜呑みにするのではなく、その背景や理由を深掘りしていくことで、見えてくる課題が変わってきます。
    表面的なニーズだけを追うのではなく、その背後にある「構造」や「文脈」を読み解こうとする姿勢が、結果としてお客様との信頼にもつながっていくと感じます。

    荻原:たしかに、目の前の言葉だけで判断してしまうと、本当のニーズを見落としてしまうことってありますよね。
    「なぜ?」と一歩踏み込んで考える習慣があると、提案の質も変わりますし、お客様との関係も深まる気がします。
    教養って、もっと学問的で遠いものだと思っていましたが、実は営業現場でもすぐに活かせる“思考の土台”なのですね。

    4. 「アメリカの大学生が学んでいる本物の教養」はどんな人におすすめ?


    荻原:この本はどのような方におすすめですか?

    松本:どんな方でも面白いと思えると思いますが、特に学ぶことに対して道に迷っている方にはぜひ読んでほしいですね。私自身がそうだったのですが、とりあえず本を読んどけという精神で手当たり次第にいろんなビジネス書を読んでいるような方です。

    荻原:学び方に迷いがある方ということですね。

    松本:学び方が具体的に書いてあるわけではないのですが、どう思考を巡らせることが自分にとって一番いいことなのかはわかったなと思います。自分が興味のある範囲で教養の考え方や思考を意識していけば、必然と他のところでも「これは何故なのだろうか?」という思考は根付くんじゃないかなと思っています。

    荻原:入り口として、興味のある分野から始めるということですね。

    松本:そうです。自分が興味ある分野、知りたいと思ったことを「これは教養だ」って思いながら思考を巡らせることがスタートかなと思っています。年齢層や役職問わず、どの方にもおすすめできる本だと思います。

    荻原:最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

    松本:この本は、単に知識を蓄積するだけでなく、なぜそうなのかという根拠まで考える思考の習慣を身につけるきっかけになる一冊だと思います。クリティカルシンキングの癖をつけるという意味でも、日常の学びの質を変えたい方にはぜひ読んでいただきたいですね。学ぶということの本質について、きっと新しい発見があるはずです。

    荻原:本日は貴重なお話をありがとうございました。知識と教養の違いについて、深く考えさせられるインタビューでした。

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    〇トップセールスの本棚とは?
    【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
    営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
    ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。

    荻原エデル

    社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
    趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。

    松本 有加里

    群馬県出身。
    大学卒業後、人材派遣会社で営業→事務と経験し2024年9月からアルヴァスデザインに入社。
    趣味はアニメ・映画鑑賞。世界で一番嫌いなものは虫。

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