<トップセールスの本棚>人を動かす(デール・カーネギー著 1936年 創元社)~影響力の原点に立ち返る一冊~

こんにちは。荻原です。
今回も引き続き、トップセールスの本棚をインタビュー形式でお届けしていきます。本日、インタビューに答えてくださったのは、チーフプロデューサーとして豊富な営業経験をお持ちの岩脇さんです。
新卒時代から10回以上読み返しているという名著「人を動かす」について、読むたびに新しい発見がある理由や、ビジネスパーソンとして成長する中で変化していく本の捉え方について、詳しくお話を伺いました。
是非、ご一読ください。
目次
1. 何度も読み返す価値がある書籍「人を動かす」

荻原:本日は、よろしくお願いします。はじめに、岩脇さんがおすすめする書籍について簡単にご紹介お願いします。
岩脇:私がご紹介したいのは、デール・カーネギーの『人を動かす』です。世界的なベストセラーで、1936年に出版されて以来、多くのビジネスパーソンに読み継がれている名著です。
実は、本書には非常に個人的な思い入れがあります。新卒で入社する際に課題図書として読まされたのが最初の出会いだったのですが、それ以降、社会人になってから10回以上は読み返していると思います。
荻原:10回以上ですか!それは相当ですね。
岩脇:はい。私は普段、本を読み返すことってあまりないのです。でも、本書に関しては何度も手に取ってしまう。それには理由があって、書いてあることの抽象度が絶妙だからです。
例えば「誠実な関心を寄せる」という一文があるのですが、新卒の頃に読んだときと、今読んだときでは、その言葉から受け取るものが全然違います。
荻原:同じ文章なのに、受け取るメッセージが変わるということですか?
岩脇:まさにそうです。当時は「相手が映画好きなら映画の話をすればいいんだな」くらいに思っていました。でも今この文章を見ると、「相手の関心事」を知ることの難しさと深さに気づかされます。
2. 表面的な理解から本質的な理解へ

荻原:もう少し詳しく教えていただけますか?
岩脇:例えば、ビジネスの場面で考えてみましょう。社外の方と商談をするとき、その人の関心事って、実はその人個人だけのものではないのです。上司がいて、部下がいて、関連部署の人たちがいる。その人たちの思惑も背負っているわけです。
例えば、その方はAという提案に興味を持っているように見えても、実は上司はBのことを重視している。だとしたら、Aばかり話していても結局は話が進まない。むしろ、その方が表面上は興味がなさそうに見えてもBの話をしっかりすることで、会社として前に進めるかもしれない。
荻原:なるほど。「相手の関心事」の捉え方が、経験を重ねることで多角的になっていくのですね。
岩脇:その通りです。色々な経験を積んでいく中で、視野が広がる、角度が増えるという感じでしょうか。映画の話をしておけば良い…と真正面から見ていたものが、斜め上から見たら「あれ?映画の話なんてどうでもいいかもしれない」と気づく。
それが本書の面白いところで、読み手の成長に合わせて、同じ文章から得られるものが深まっていく感覚があります。
3. 本書の核心「人は感情で動く」

荻原:本書の根本的なメッセージは何なのでしょうか?
岩脇:この本のタイトルは「人を動かす」ですが、原題を直訳すると「友達を獲得する方法と人々に影響を与える方法(How to Win Friends and Influence People)」です。つまり、人の感情に働きかけて行動を変える=「影響力を持つ」ということが本質的なテーマだと、私は捉えています。
実際、相手の気持ちを理解し寄り添うことで、自分の提案や行動が自然と相手に伝わるようになる。そうした「人に影響を与える技術」が詰まった一冊です。
そして最も重要なのは、「人は理屈では動かない、感情で動く」ということを言っています。
荻原:感情で動く、ですか。
岩脇:例えば、私があなたをゴルフに誘うとします。あなたがゴルフに興味がないとしたら、「運動になって健康的ですよ」「今なら安くできますよ」といくら理屈を十個並べても、やっぱり動かないですよね。
でも、あなたが今、人生で大事にしていることや価値観に触れるような形で、感情を動かすことができたら、「じゃあゴルフから始めてみようかな」となるかもしれない。その結果、人を動かす、つまりゴルフ場に連れてくることが叶うわけです。
荻原:理屈ではなく、相手の感情に訴えかけることが大切なのですね。
岩脇:はい。そしてそのためには、本書が説く様々な原則が重要になってきます。相手の関心ごとを話題にする、心から相手を褒める、話し始めるときは友好的な話題で話しかける、相手の方が多く話すようにする、相手を批判しない…これらは全て、相手を深く理解し、感情を動かすための手段です。
4. ビジネスでの実践と「影響力」という気づき

荻原:本書を読んだことで、仕事において変化はありましたか?
岩脇:そうですね。本書は私にとって、鏡のような存在です。何か新しいことを学んで「明日からこれをやろう」という感じではなく、自分の状況を再確認したり、メタ認知したりするためのツールという感じでしょうか。
例えば、仕事がうまくいっていないときにこれを読むと、「ああ、こういうことができていなかったのだな」と気づかされます。逆に調子が良いときに読むと、「そうか、今はこれができているから調子が良いのだな」と腹落ちして、安心して仕事ができる。
荻原:自分の状態を客観視するための道具なのですね。
岩脇:そうですね。特に印象に残っているエピソードがあります。前職で、もう限界だと思った時期がありました。やれることは全部やっているのに、会社から求められることが多すぎて…と、目上の方に弱音を吐いたことがありました。
そのとき、その方は一言だけ「影響力」とおっしゃいました。
荻原:影響力、ですか。
岩脇:当時は意味が分かりませんでしたが、後に、パラパラと本書を読み返して、「ああ、これと同じことを言っているのだな」と。本書が説く「人を動かす」というのは、まさに「影響力を及ぼす」ということだったと気が付きました。
5. 「人を動かす」はどんな人におすすめ?

荻原:本書はどのような方におすすめですか?
岩脇:営業がうまくいっていない人に読んでもらいたい、というようなハウツー的なおすすめの仕方ではないですね。むしろ、人との関わり合いの中で仕事をする人で、自分の拠り所となるようなバイブル的なものを持っておきたいと思う人におすすめです。
荻原:バイブル的なもの、ですか。
岩脇:ハウツー本って、一回読んで終わりになりがちじゃないですか。時代とともに変わっていきますし、自分のレベルが上がれば内容も古くなる。それはそれで読めば良いのですが、自分の原点に戻る、我が家のような存在としてのバイブルを持っていると、仕事をしていく上で支えになりますよね。
「そういった一冊にまだ出会っていないな」という人には、本書は損しない選択だと思います。
荻原:確かに、何歳になっても読めそうですね。私も改めて読んでみたくなりました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
岩脇:こちらこそありがとうございました。人との関わりの中で仕事をしていく上で、何度も立ち返れる一冊を持っておくことの価値を、ぜひ多くの方に感じていただけたらと思います。
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【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
荻原エデル
社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。
岩脇泳喜
石川県出身。
前職では大手医療系人材会社にて、新規事業である健康経営事業の営業責任者として従事し、後発の事業ながら2024年には業界No.1の顧客数を達成。その後アルヴァスデザインに入社。
20代まではポンコツ営業パーソンだったため、そこからの成長角度は誰にも負けない自信あり。
二児のパパで、野球好き。DeNAファンで、年に3、4回は横浜スタジアムに応援に行っている。


