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<トップセールスの本棚>多忙感(菅原洋平著 2025年 サンマーク出版)~効率化しても忙しさが消えない本当の理由〜

こんにちは。荻原です。

本日は、営業担当者の皆さんに向けて、ある本をご紹介したいと思います。

「タスク管理ツールを導入したのに、なぜか追われている感覚が消えない。」

「効率化すればするほど、新しい仕事が押し寄せてくる気がする。」

こんな声を、営業の現場でよく耳にします。実は、その悩みに真正面から向き合った書籍が2025年11月に登場し、発売わずか5日で重版がかかるほどの反響を呼んでいます。

本日ご紹介するのは、作業療法士であり脳のしくみの専門家として知られる菅原洋平氏の著書「多忙感」です。菅原氏は14万部超のベストセラー「あなたの人生を変える睡眠の法則」や「すぐやる!『行動力』を高める”科学的な”方法」など数多くのヒット作を手がけてきた方で、脳科学と臨床の両面からアプローチする著者ならではの切り口が光ります。

日々数字を追いながら多くのタスクをこなす営業担当者の皆さんにとって、本書で語られる「忙しさの正体」は、きっと身に覚えのある話ばかりだと思います。特に営業の現場に響くポイントを中心に、本記事でお伝えしたいと思います。

 

目次

1. 「多忙」と「多忙感」は別物だった

本書の出発点は、非常にシンプルな問いかけです。

「忙しさには実は2つの種類があります。1つ目は多忙――実際にやることが多い状態。そして2つ目はやることが多いと『感じてしまう』状態です。これを『多忙感』と呼びます。」

やることが実際に多い「多忙」と、やることが多いと感じてしまう「多忙感」は、まったく別物だということです。

例えば、こんなシーンに心当たりはないでしょうか。

あるベテランの営業担当者Aさんは、月末のある朝、顧客へのフォローメールを書き終えた瞬間、上司から「例の提案書、今日中に仕上げておいてくれ」と声をかけられました。さらに同僚からは「さっきの案件、ちょっと相談いいですか?」と続きます。実際のタスク量はそれほど変わっていないのに、Aさんの頭の中はその瞬間から「やらなきゃいけないことが山積みだ」という感覚でいっぱいになってしまいました。

これが多忙感です。

著者によると、多忙感が強くなると現れる三大症状があります。物忘れが増える、ぼーっとする時間が増える、気づけば「時間が溶ける」感覚に陥る。営業の現場で感覚が鈍ってしまうと、お客様の大切なサインを見逃したり、重要な商談の準備が後回しになったりと、パフォーマンスへの悪影響は計り知れません。

2. なぜ多忙感は生まれるのか

では、多忙感はどのようにして生まれるのでしょうか。著者は、2つの要因がそろったとき、脳が勝手に忙しさを増幅させると説明しています。

その2つとは、「脳疲労」と「外乱」です。

「脳疲労」とは、意思決定の連続やマルチタスク、情報過多によって脳のエネルギーが少しずつすり減っていく状態のこと。デスクワークで体はさほど疲れていなくても、脳は激しく消耗しています。

「外乱」とは、自分の意思とは無関係に注意を奪いに来るものです。電話の着信音、チャットの通知、未読を示す赤いアイコン。現代の営業担当者は、こうしたデジタル外乱に一日中さらされています。

この2つが組み合わさると、脳は実際のタスク量以上に「忙しい」と感じてしまいます。つまり、多忙感の方程式は「脳疲労 × 外乱 = 多忙感」です。

ここで興味深いのは、疲れているときほどメールやチャットをチェックしてしまうという逆説です。「早く返信しなければ溜まってしまう」という焦りから、脳が疲弊しているにもかかわらず外乱に飛びついてしまう。かゆいところをかけばかくほど悪化するように、これが多忙感をさらに深めてしまいます。

もう一つ、別の事例をご紹介します。

新人営業担当者のBさんは、ある日、重要な商談に向けたプレゼン資料の作成に集中しようとPCに向かいました。しかし作業を始めて10分も経たないうちに、社内チャットの通知が3件、メールが2通届きます。「すぐ確認しないと」と思って確認すると、それぞれ返信が必要な内容で、対応しているうちに1時間が経過していました。結果、肝心のプレゼン資料には一行も手をつけられず、焦りと疲弊感だけが積み重なってしまいました。

このBさんが体験したことこそ、まさに多忙感の連鎖です。

3. 効率化が多忙感を悪化させる皮肉

ここで、多くの営業担当者が陥りがちな落とし穴があります。「多忙感があるなら、もっと効率化しよう」という発想です。

しかし著者は、効率化がかえって多忙感を悪化させることがあると指摘しています。理由は明快です。

効率化によって早く作業が終わると「余白」が生まれます。しかし多くの人は、その余白を瞬時に別のタスクで埋めてしまいます。結果、スケジュールはパンパンになり、脳が息をつく暇がなくなります。さらに、「商談の合間にメール返信」「資料を作りながら通知チェック」といったマルチタスクは、実態として脳が高速でタスクを切り替えているだけであり、そのたびに集中をリセットしてエネルギーを消耗しています。

ツールを増やせば増やすほどこなせるタスクの量は増え、その分だけ脳への負荷も高まっていく。効率化のループから多忙感が生まれるという、なんとも皮肉な現実です。

4. 多忙感を解消するアクションプラン

では、どうすればよいのでしょうか。

著者が提唱する根本的な解決策は、「リアクション(外部刺激への反応)」を減らし、「アクション(自分で選んで動くこと)」を増やすことです。外部から突き動かされる時間が多いほど脳は「やらされている感」に覆われ、多忙感が膨らんでいきます。

その中でも、今日から実践できるアクションとして特にお勧めしたいのが、「即座に応じない」という習慣です。

誰かから話しかけられたとき、あるいはチャットで問い合わせが来たとき、反射的に応答するのではなく、「今この作業をしている最中なので、15分後(または30分後、1時間後)に対応します。それまで少しお待ちいただけますか」と伝えることです。

これは、決して相手を雑に扱うことではありません。むしろ、自分の集中を守ることで、相手により質の高い対応を届けるための配慮です。そして、この小さな習慣こそが「行為主体感」、つまり「自分が選んで動いている」という感覚を取り戻す第一歩になります。

著者の言葉を借りれば、こういうことです。

「自分で選んで、自分のペースで、自分なりのやり方でやっていて、順調に進んでいると思えれば、どんなにタスクの数が多くても、多忙感にはなりません。」

営業の現場では、即レスが美徳とされる文化が根強く残っています。しかし、常に外部刺激に反応し続けると、長い目で見れば集中力と判断力の消耗が積み重なり、本来発揮できるパフォーマンスを下回ってしまいます。

自分の時間と注意を守ること。それが、お客様により良い提案を届けるための、土台になるのです。

5. おわりに

いかがでしたでしょうか。

本日ご紹介した「多忙感」は、脳科学の視点から「忙しさの正体」を解き明かし、私たちが日常的に見過ごしている習慣の盲点を教えてくれる一冊です。

効率化ツールの導入に躍起になる前に、そもそも自分の脳がどんな状態にあるのかを知ること。これが、本書が提唱する根本的なアプローチです。

ページ数も多すぎず、平易な言葉で書かれていますので、忙しい合間にも読み進めやすい本です。「最近なんとなく疲れが取れない」「仕事はこなしているのに充実感がない」と感じることがある営業担当者の方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒多忙感

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ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。

荻原エデル

社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。

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