<トップセールスの本棚>読まない人に、本を売れ。(永松茂久著 2025年 ライツ社)~「伝える」から「届ける」へ~

こんにちは。荻原です。
皆さんは、営業活動をしていて「この商品の良さが、もっとうまく伝わればいいのに」と感じたことはないでしょうか。
本書のタイトルを見て、「自分には関係ない話かも」と思った方もいるかもしれません。しかし、このタイトルは「飲まない人に、酒を売れ」と置き換えても成立します。本書が伝えているのは、「興味のない相手に、どう届けるか」というビジネスの本質。出版業界に限らず、営業の最前線に立つ皆さんにも深く刺さる問いです。
目次
1. ビジネスの基本は「お客様ファースト」

著者の永松茂久氏は、3坪のたこ焼き屋から商売を始め、その後ベストセラー作家へと歩みを進めた人物です。最初に書き上げた原稿は、自分が「書きたいこと」を中心にまとめたものでした。しかし、出版社の営業担当者・原口大輔さんの率直な一言がきっかけで、チームは方向を大きく変えることになります。
日本一の納税王としても知られる実業家・斎藤一人氏も、著者にこう伝えています。
「私は『どうすれば読者の心がもっと軽くなるか?』を第一に考えてるんだよ」
さらには、
読む側の人は、その著者が本当に読者を大切に思って伝えているのか、それとも自分を良く見せたくて書いているのかを、すぐに見抜くから
と。
これは、営業の現場でもまったく同じことが言えるのではないでしょうか。
商品の機能説明を流暢に語れるAさんと、お客様の課題に寄り添いながら「こういう場面で役立てていただけますよ」と伝えられるBさん。
どちらの話が心に残るでしょうか。おそらく多くの方がBさんと答えるはずです。ところが、いざ商談の場に立つと、つい自分の知識を披露する側に引っ張られてしまうことがあります。
ビジネスの出発点は、自分が伝えたいことではなく、お客様の側にある。本書は、この当たり前でいて難しい原則を、生きたエピソードを通じて改めて気づかせてくれます。
2. 福沢諭吉も実践していた「届ける工夫」

本書の冒頭には、時代ごとの日本一売れた本が紹介されています。明治で一番売れた本は、福沢諭吉の『学問のすゝめ』でした。
福沢諭吉といえば、幕末から明治にかけて日本の近代化を牽引した啓蒙思想家です。彼の書物が当時これほど広く読まれた背景には、徹底した「読者目線」があります。福沢諭吉は本を書くたびに「どうすればもっと分かりやすく読者に価値を届けることができるか」を常に考え抜いたといいます。
当時、知識や学問を文章に書き記すことは、専門家が専門家に向けて行うものでした。しかし福沢諭吉は、広く一般の人々に届けることを意識し、読む人の立場から発信し続けた。どれほど正しい内容であっても、読み手に届かなければ意味がない。その信念が、明治の日本で最も多くの人に読まれた本を生み出したのです。
「届ける工夫」は、時代を超えて変わらない商売の本質です。本書で描かれるベストセラーチームも、全く同じ発想で動いていました。「読者目線で、すべてを逆算して設計する」その考え方こそが、ミリオンセラーの根幹にありました。
3. 「読まない人」は、営業現場にもいる

本書の中で、著者のチームが最終的にたどり着いた読者像があります。それは「ローカルの郊外スーパーに買い物に来た主婦」でした。
ビジネス書に詳しい人でも、ヘビーな読書家でもなく、むしろそうでない人たちにこそ届けること。
営業の現場に置き換えると、「読まない人」とは、自社の商品にまだ接点を持っていないお客様のことです。
長年の付き合いがある既存顧客ばかりに営業活動が偏っていると感じたことはないでしょうか。しかし本来、最も大きな市場は「まだ自分の商品を知らないお客様」の中にあります。
また本書では、すばる舎の営業担当者が、売れ行きが鈍くなった書店に何度でも足を運び、棚の提案や工夫を重ねながら粘り強く関係を築いていく姿が描かれています。うまくいかなかった書店にも「もう一回やりませんか」と戻っていく姿勢。
これは営業担当者であれば誰もが共感するシーンではないでしょうか。
「相手がどんな言葉なら受け取れるか」から始めること。それが新たな市場を開くきっかけになるのだと、本書は改めて教えてくれました。
4. おわりに

いかがでしたでしょうか?
『読まない人に、本を売れ。』は、出版業界の話でありながら、読み進めるほどに「これは営業そのものだ」と感じる場面が随所にあります。プロダクトファーストではなく、お客様ファースト。自分が伝えたいことではなく、相手が受け取れる言葉で届けること。そして、うまくいかなくても諦めずに戻っていくこと。
どれも「言葉にすれば当たり前」のことかもしれませんが、日々の忙しさの中でいつの間にか見落としてしまいがちな視点でもあります。本書を読み終えたとき、明日の商談でお客様に伝える言葉が、少しだけ変わるかもしれません。そんな予感のある一冊です。
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【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
荻原エデル
社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。

