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マーケターのように生きろ~「あなたが必要」だと言われ続ける人の思考と行動~(井上大輔著 2021年 東洋経済新報社)

 

こんにちは、米山です。

今回ご紹介する本は、「マーケターのように生きろ~「あなたが必要」だと言われ続ける人の思考と行動~ (井上大輔著 2021年 東洋経済新報社)」です。

 

今回、この本を読んだきっかけは、お客様に「あなただから買いたい」と思ってもらうにはどうしたらいいのか、そのヒントが書かれているのではないかと感じたからです。

皆さんも、このようなことはありませんか?

  • 一生懸命、商品説明をしているけど興味を持ってもらえない
  • お客様からのヒアリングを元に提案しても、なかなか響かない

このような悩みを抱えている方に、ぜひ読んでいただけたらと思います。

 

1. マーケターのように生きるとは

マーケティングと聞くと、CMや広告といったプロモーション活動をイメージされる方が多いかもしれませんが、これらはマーケティングの一部に過ぎません。

本書によると、マーケティングには以下の4つの工程があります。

・市場を定義する(価値を提供する相手を誰にするか決める)
・価値を定義する(相手の求めるものを深く探る)
・価値をつくりだす(定義した価値をカタチにする)
・価値を伝える(実現した価値を相手にしっかり伝える)

 

つまり、CMや広告といったプロモーション活動は、価値を伝えるというマーケティングの一部分でしかなく、商品を作る段階からマーケティング活動は始まっているのです。

相手を決め、相手が求める価値を深く探り、その価値をカタチにして、それを相手に伝えることで、相手の持っている価値と交換してもらうという一連のマーケティング活動は、常に相手が主体になっています。

要するに、常にお客様視点で考えて生きるということが「マーケターのように生きる」ということなのです。

営業シーンで考えると、自分の与えたい価値を押し付けるのではなく、お客様が求めている価値を深く探り提供していくということが、「マーケターのように生きる」ということだと考えられます。

 

2. 「知覚価値」と「情緒的な価値」に着目せよ

本書では、「知覚価値」と「情緒的な価値」という考え方があらゆる職種の引き出しを広げる為に役立つとして紹介されています。

一つずつ見ていきましょう。

・知覚価値について

「知覚価値」とは

「相手が感じることができる価値」

を意味しています。

ここで、即戦力人材のヘッドハンティングの営業をしていた頃の私の事例をご紹介します。

産業廃棄物処理を営む企業の社長に対して、
「売り上げアップのために競合他社から優秀な営業部長を採用しましょう。」
という趣旨の提案をしました。

私としては、
「どの会社でも、売上アップには価値を感じるだろう。」
と考えた上での提案でした。しかし、社長はさほど関心を示しませんでした。

なぜ、価値を感じてくれないのだろうか・・・

私は、どうしてもその理由を知りたく、思い切って社長に聞いてみました。
すると、私が想定していなかった理由が返ってきました。

それは、「他社から引き抜くようなことをすると、自分もいつか同じような目にあうのではないか」と考えていたのです。

特に、産業廃棄物処理の業界は横のつながりが強く、どこの誰がどこに転職したという情報はすぐに広まってしまいます。
そのため周りから良く思われない、自分も同じような目にあうと考えていたのです。

私は、優秀な営業人材はどこの企業でも欲しいはずだと考えていたのですが、社長にとっては価値を感じられるものではなく、それ以上にリスクが大きいと感じていたのです。

このように、「自分が感じている価値」と「相手が感じることができる価値」は異なるということは往々にしてあるのではないでしょうか。

まずは、「相手が感じる価値」に焦点を合わせる事が大切なのです。

 

・「情緒的な価値」について

つづいて、「情緒的な価値」について見ていきます。

「情緒的な価値」とは、

使う人によって「役に立つか」ではなく、「意味があるか」を問う価値

を指します。

日本で販売されている天然水を例に考えてみましょう。

一口に天然水と言っても、実は「硬水」と「軟水」に分かれています。硬水はミネラルを多く含んでいるため独特の味があり、軟水はミネラルが微量しか含まれていないのでほとんど味を感じることができません。

日本で売られている天然水の多くが軟水に分類されます。
軟水である以上、「味」で他社製品と差別化を図ることはできませんが、日本では実に様々なミネラルウォーターが販売されています。味だけで商品を区別することは難しいと言えます。しかし、実際購入時にはその時々で感じた「価値」を元に購入決定をしています。

  • ラベルレスな天然水
  • 馴染みのあるブランド
  • お洒落でスタイリッシュなイメージ

このように、味がほとんど同じであったとしても、

「その人にとって意味がある価値」(情緒的な価値)によって差別化は図られる

のです。

実際の営業活動でも常に相手目線になって、相手が本当は何に価値を感じているのかを考えると商談も進みやすくなるのではないでしょうか。

 

3. 価値を引き出す

ここまで価値とは、お客様が価値と感じることができるかによって決まるということをお伝えしました。

では、お客様は何に対して価値と感じるのかを知るためには、何をしたらよいのでしょうか。

マーケターは価値を定義する際に、インタビューやアンケートを行います。
つまりそれは、お客様が何に対して価値を感じるのかは、お客様しか知らないことであるため、直接聞くことが必要ということです。

特に、「情緒的な価値」を聴き出すには難易度が上がります。

いまだにソリューションセールスが主流となっている現代では、商談の際に「課題」を訴求することが多くあります。
そのため、「情緒的な価値」を聴き出す方法を知らない人が多いのです。

それでは、「情緒的な価値」を聴き出すためにはどのようにしたら良いのでしょうか。

それは、

相手に気持ちよく話してもらえるよう、良い聴き手役になること

です。

商談相手がこれまでにどのような結果を残されてきたのか、その結果を得るために何を考え、どのように行動してきたのかという、これまでの経歴や想い入れを聴き出すのです。

こういったコミュニケーションの中から、相手がどのような価値観を持っているのかを仮説を立てながら理解していくのです。

営業担当者は、商品の説明や課題を聞き出すことにフォーカスして商談を行うことが多いです。
しかし、お客様にとっての本当の価値を知りたければ、一旦このような話は棚に置いて、徹底的にお客様を理解する姿勢を持つことが求められます。

情緒的な価値を深く理解できていない営業には、目に見えた課題を解決する提案しかできず、競合との差別化も難しい状況になります。

しかし、お客様の価値観を理解した営業は、未来に向けたクリエイティブな提案が可能です。

このような営業をインサイトセールスと呼びますが、この営業手法を身につけることで、競合はなくなり、お客様との関係性も強固になっていくのです。

 

4. 最後に

いかがでしたでしょうか?

マーケティングと営業は一見関係がないように見えて、実は密接な関わりがあることを感じていただけたかと思います。

他にもマーケティングをどのようにキャリアに活かしていくのかなどが書かれているので、気になった方はぜひ読んでみてください。

 

本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒マーケターのように生きろ

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ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。


米山大輝

埼玉県出身。
新卒で大手スカウト·ヘッドハンティング会社に入社した後、アルヴァスデザインに入社。
サッカー歴16年だが好きな漫画は「スラムダンク」。
美意識が高く、最近は眉毛サロンに興味がある。
座右の銘は「当たり前はない」。

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