【第12回】インサイトセールスを始めよう(輸送経済新聞 2021年4月20日掲載記事)最終回
日本のビジネス環境は、この数十年で大きく様変わりした。
終身雇用がなくなり、当たり前のように転職を繰り返す人々がいる。
組織では多様な視点が求められ、「世界に向けて新しいイノベーション(革新)を創出しなければ日本は勝ち残れない」といわれて久しい。
このような時代に、真っ先になくなる職種としてノミネートされているのが「営業」だ。
2014年に英オックスフォード大学がまとめたリポートでは、この先10年でなくなる仕事に「訪問販売員」が入っている。
世間一般でいわれる営業は、あと数年でなくなるらしい。
だが、本当にそうだろうか。
私は、今後も営業は活躍すると考えているし、市場価値はむしろ高まるに違いないと確信している。
これを身に付けよ
ただ、それは時代に合わせて変化し、顧客に価値を提供し続けることができる営業だけだ。
では、顧客に価値を提供し続ける営業とはどういうことなのか。
結論から言おう。
これからの時代に活躍できる営業になるためには、インサイトセールスを身に付けるべきだ。
インサイトセールスとは、顧客の理念やビジョンの実現を支援する営業手法のこと。
この営業手法なら、AIに置き換えられてしまうこともなく、これからの組織が求めることにも対応できる。
これからの組織が求めることにも対応できるというのは、つまり
「外部からの客観的な視点」
が必要だということだ。
企業が成長し続けるために社内で求められることは、「同質化」から「多様化」へと変化した。
従来は、上司や先輩の仕事をいかに早くまねて自分のものにするかが良い成果を生み出す肝であった。
これ自体は、いまの時代でも大切だ。
ただ昨今では、イノベーションを創出するためには、さまざまな視点で物事を捉えて、アイデアを生み出す力が必要不可欠になった。
つまり、社員の多様性が求められるようになったのだ。
このように多様性が求められる時代に、多様なメンバーを採用して育てることが大切であることは間違いない。
一方、組織の多様性を高めるためには、「外部の視点」も大切だ。
なぜならば、いくら組織メンバーの多様性が高いとしても、「外からその組織を見ている人の客観性」には及ばないことも多いからだ。
そこで活躍するのが、これからの営業。
顧客の理念やビジョンを実現するために、時には経営層の考えに寄り添い、時には客観的な視点で批判的な意見も述べる。
これは簡単なことではないが、もし身に付けたのなら、AIで置き換えられることはないだろう。
そうなれば、市場価値もこれからの時代にますます高まっていくはずだ。
営業は未来を創る
インサイトセールスを身に付けると、
顧客に多様な視点を与え、顧客だけでは考えつかなかったアイデアを生み、
それを現実化させるまで顧客と共に伴走することができる。
そして、インサイトセールスを組織で実践すると、会社の市場価値も大きく高まる。
顧客からの反応も変わり、顧客はファンに変わっていく。
その状態になると、営業する側もされる側も営業自体がとても楽しいと感じるに違いない。
営業を楽しむことができれば、それは仕事を楽しむことにもつながる。
仕事を楽しむことができると、それが周りにも波及して組織が明るく活性化されていく。
インサイトセールスは、単なる営業手法にとどまらない。
人生に光をともし、明るい未来を切り開いていく切り札にもなり得るのだ。
さあ、インサイトセールスを始めよう。