ドラッカーと会計の話をしよう(林 總著 2010年 中経出版) ~会計との向き合い方を学ぶ珠玉の一冊~
こんにちは。松下です。
今回は、林 總氏の「ドラッカーと会計の話をしよう」を取り上げます。2010年と10年以上前の出版になりますが、今の時代でも生きる会計の捉え方が描かれた良書です。
本書では、P.F.ドラッカーの言葉が数多く引用されています。「知の巨人」「マネジメントの父」と言われるドラッカーですが、彼のマネジメント理論の中で「会計」というテーマは一つの重要な要素として取り上げられています。
「会計」というと、財務諸表に関する細かな話を思い浮かべる方も少なくないかもしれません。しかしながら、本書は、財務諸表のイロハについては書かれていません。
イタリアンレストランのオーナーと謎の紳士の物語の中で「会計」に関する大切なエッセンスが描かれます。物語の中で、ドラッカーの数々の名言が起用されていますので、その内容を中心に一部をご紹介します。
目次
1. 利益とは幻想である!?
「経営の究極の目標は何か?」と聞かれたら皆さんはなんと答えますか?
いろいろなワードが頭をよぎりますが、本書の主人公は「利益の追求」と間髪入れず回答しています。
さて、この「利益」とは何のことでしょうか?
会計上は「売上-費用=利益」となります。
つまり、売上から費用を引いた差額のことです。しかし、ドラッカーは利益についてこんな言葉を残しています。
「例えば、事業の目標として利益を強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤らせる。今日の利益のために明日を犠牲にする。」
「会計学の二年生でさえ、損益計算書は化粧ができる」
上記の言葉からも分かるように、どうやら「利益」(※特に事業年度で区切られて算出される短期利益)は信頼するには危うい存在であるといえそうです。
それでは、私たちが着目すべきものは何でしょうか?
2. 利益と儲けは異なる
ここで着目したいのは「儲け」です。
本書では、「利益」は「儲け」とは別物であることが書かれています。
「利益」は「会計上の数字」であることに対し、「儲け」は「稼いだ現金」です。
大切なのは「現金を生み出せているかどうか」です。
それは、「キャッシュフロー」(※一定会計期間にどれだけの現金が流入し、どれだけの現金が流出しているかを明示したもの)としてあらわされます。
この「利益」と「儲け」の概念を一緒に捉えてしまうケースは少なくありません。しかし、これらが何者かを区分けしてと捉えておくとすっきりします。
そして、「儲け」は「新しい価値を生み出せているかどうか」の指標になります。
会計情報で算出される短期的な利益に目を向けるのではなく、「将来的にキャッシュフローを生み出すか?」という視点は、経営層やマネージャーにとってはもちろんのこと、営業パーソンとしても持つべき捉え方と言えそうです。
3. 将来にわたり価値を創造し続けること
さらに、本書では「過去の利益」よりも、もっと大切なこととして
「過去から現在、そして将来にわたって価値を創造し続け、新たなキャッシュフローを生み出し続けること」が挙げられています。
ポイントは、続けるというところにあります。一過性のものではなく、「続く」というところが大事な要素です。
将来の事業を一緒に作り出す存在である営業こそまさに、将来にわたって新たな価値を生み出し続けられるかどうか・・という事は常に持っておくべき視点と言えそうです。
営業現場では、短期的な売上が優先されるケースは決して珍しくありません。しかし、そこに継続性はあるのか、本当にお客様のためになっているのかということは、深く思慮すべき事柄のように感じます。
4. おわりに
いかがでしたでしょうか。
本日は、「ドラッカーと会計の話をしよう」から会計の捉え方について学びました。
私たちは、営業パーソンとして、お客様と会話する際に「会計」を意識する瞬間があるはずです。また、特に、マネージャー層や経営層と対話する際には会社の経営に関わる「会計」に近しい話題がでる瞬間もあるでしょう。
そういった際に、この「会計」についてどのように捉え、会話を繰り広げられるか、一つの指針となるのではないでしょうか。
ご紹介した書籍には、本コラムではご紹介しきれなかったドラッカーの会計の話が盛り込まれています。ご興味のあるかたは是非、お手に取ってご一読ください。
なお、弊社ではドラッカー学会理事の藤田勝利氏をお招きし、ドラッカーの会計をテーマにウェビナーを実施いたしました。「ドラッカーの会計とマネジメントの話をしよう~マネージャーが今身に付けたい『会計』の捉え方とは?」アーカイブをご覧になりたいかたは、是非、お問い合わせください。
本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒ドラッカーと会計の話をしよう
【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。