同調圧力の正体(太田 肇著 2021年 PHP研究所)第三回「営業組織・営業マネジメントの今後」
こんにちは、高橋です。
全三回にわたる「同調圧力の正体(太田 肇 著 2021年 PHP研究所)」の第三回になります。本日は、「営業組織・営業マネジメントの今後」を考えてみます。
本日は、営業組織と営業マネジメントの今後について考えていきたいと思います。
第三回:営業組織・営業マネジメントの今後←本コラムはこちら
1. 同調圧力の意味と原因(第一回の振り返り)
・同調圧力とは?
同調圧力とは、特定のグループで意思決定や合意形成を行う際に、暗黙のうちに多数派の意見が優先され、決議されることです。
・同調圧力の背景にある原因とは?
1つ目は、「閉鎖性」です。
ある特定のコミュニティに属し、その中でしか通用しない常識や考え方に、知らないうちに染まってしまうことです。
2つ目は、「同質性」です。
上意下達のように、組織で同じ意見や考え方を持つことがよしとされることを指します。
3つ目は、「未分化」です。
他人は他人、個人は個人といったような区別した考え方ができないことを指します。
同調圧力の意味と原因については、ご理解いただけましたでしょうか。
具体例を知りたい方や詳しい内容を見たい方は、ぜひ「第一回:同調圧力の正体とその原因」をご覧ください。
2. 同調圧力の対策(前回の振り返り)
コロナ禍により加速した「同調圧力」に対して、私たちは3つの対策が求められます。
1つ目は、「構造改革戦略」で、会社仕組みを変えていくことを指します。
2つ目は、「適応戦略」で、個人として、ある特定のコミュニティに属さない、染まらないことを指します。
3つ目は、「共存戦略」で、同調ではなく、協力が大切であることを指します。
同調圧力の具体的な対策を知りたい方や詳しい内容を見たい方は、ぜひ「第二回:同調圧力の傾向と対策例」をご覧ください。
3. 営業組織で見られること
私は、日々多くの営業組織に触れていますが、新型コロナウイルスが蔓延した後、特に気になっていることがあります。
それは、
・コロナ以前より、指示命令が多くなった上司
・「上司のメンツをつぶさないようにする」というメンバーの言動
です。
コロナ禍によりテレワークが主流になりましたが、多くの上司はマネジメントに苦戦しているということは、第二回でお伝えしました。
今までであれば、部下メンバーと毎日顔を合わせて仕事をしていましたが、新型コロナウイルスの到来により、突如として「必要な時だけ連絡を取り合う」関係になったのです。
このような環境になったことで起こったことの1つは、「上司が指示命令を増やして、部下を管理する」ようになったということではないでしょうか。
もちろん、部下メンバーを「管理」することは必要です。日々の勤怠や仕事の状況など、テレワークでは全く見えないため、ある程度の強制力も必要でしょう。
しかし、「管理」が行き過ぎてしまい、コロナ以前よりもギチギチのマネジメントをすることで、部下メンバーが疲弊してしまっている営業現場を目にすることは珍しくありません。
また、上司の顔色を伺い、上司のメンツをつぶさないように行動しようとする部下メンバーも増えたのではないでしょうか。
例えば、オンライン商談を想像してみてください。
今までの対面での商談であれば、お客様先に移動する時間、待ち合わせ時間などを使い、商談の事前打ち合わせをすることができました。
しかし、オンライン商談の場合は、意図的に事前の打ち合わせ時間を設定しなければ、上司と部下メンバーの対話時間は作れません。
結果として、多くのオンライン商談では、対面での商談と比較して、事前の打ち合わせ時間が減少したと考えられます。
そのため、オンライン商談では、部下メンバーが上司の顔色を伺い、自分の意見を言うことよりも、上司と同じ意見を持つことにフォーカスしてしまう可能性が増したのです。
反対に、お客様側の視点に立ってみましょう。
私は商談が終わった後、お客様の担当者の方に電話をするということを習慣にしています。
電話をすることで、商談の満足度を確認したり、提出した資料の修正箇所を再確認できたりします。
これは、コロナ以前からやってきたのですが、コロナの前と今ではお客様の担当者の反応が大きく変わったことに気づかされました。それは、電話口で担当者の方がせきをきったように案件について話し出すということです。
私は、つい「商談の中でおっしゃってくださいよ。」と言いかけましたが、これこそ「同調圧力の正体」です。
営業側も上司と部下で商談前の対話が減っていることで同調圧力が働いていますが、お客様にも働いているのです。
第一回と第二回でお伝えしてきましたが、コロナ禍という環境が長く続くという前提に立てば、私たち営業は従来の考え方や行動を改める必要性が出てくると思います。
では、どのようにすれば良いのでしょうか。
4. これからのマネージャーへの処方箋
1つ目は、マネージャー自身がマネジメントの引き出しを増やすことです。
従来では、指示命令をすることでうまくいってきた仕事も、これからのVUCAの時代では生き残ることが難しくなるはずです。
※VUCAとは、V(Volatility:変動性)・U(Uncertainty:不確実性)・C(Complexity:複雑性)・A(Ambiguity:曖昧性)の頭文字を取ったもので、変化の激しい時代を指します。
確かに、上司の経験からわかるリスクや失敗事例が部下メンバーの学びになることもあります。
しかし、これからの時代には、部下メンバーが「どのように、お客様に貢献していくか」を深く考え、自ら行動していくことが大切になります。
つまり、マネージャーとしては
「仕事内容を教える」だけではなく、「仕事について自ら考える問いを与えること」
が必要になるのです。
2つ目は、マネージャー自身がメンバーと一緒に事業を創造していく気概を持つことです。
マネージャーの多くは、最近の若手営業担当者のITリテラシーが高いことを感じていると思います。また、最新のテクノロジー動向について詳しいことも珍しくありません。
このような状況において、マネージャーは「若手の持っている能力を引き出す」ことが求められます。
今までは、上司にないものを持っている部下メンバーの杭は打たれる傾向にありました。
しかし、これからはこのような杭は、むしろ部下メンバーが持つ能力として評価し、育て、事業の創造へと活かしていく必要があるのです。
3つ目は、マネージャーがメンバーの退職を応援する姿勢を持つことです。
従来では「退職」=「会社への裏切り」という見られ方をされることも珍しくありませんでした。
しかし、これだけ変化の激しい時代、かつ終身雇用も当たり前でなくなった時代において、転職を一度もしないということが珍しくなりつつあります。
このような環境では、マネージャーは退職を卒業と捉え、その後の活躍を応援するべきではないでしょうか。
確かに、私も会社を経営する者として、メンバーの退職に関してはあれこれ考えたいことも存在します。
例えば、これまでメンバーを育成してきた費用はどうなるのか…、OJTしてきた時間はどうなるのか…。
しかし、私はこのような考え方をマネージャーが持つことは、会社ないしは、その業界の発展にもつながらないと考えています。
マネージャーである以上、
一緒に仕事をするときにはメンバーを精一杯育成し、メンバーが次のステージに旅立つときには、快く受け入れ応援する!
こういったマネージャーの姿勢が今後は大切になってくるのではないでしょうか。
5. おわりに
いかがでしたでしょうか。
本コラムでは、「同調圧力」という本の学びから、私自身の営業組織や営業マネジメントに関する考えを述べてみました。
新型コロナウイルスの蔓延にともない、営業組織をマネジメントする人間には苦労が絶えません。
しかし、このような状況になったからには、私たちマネージャーに変化が求められるのです。
マネージャー自身が変化し、営業組織を盛り上げ、結果として「営業が楽しい」と思える人が増えれば、私にとってこれ以上嬉しいことはありません。
第一回目を振り返りたい方はこちらから「第一回 同調圧力の正体とその原因」。
第二回目を振り返りたい方はこちらから「第二回 同調圧力の傾向と対策例」。
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営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
高橋 研
代表取締役 CVO
早稲田大学大学院理工学研究科終了後、株式会社ファンケルに入社。
その後、30歳を節目に営業の世界に飛び込み、多くの会社の教育支援に携わる。
2013年株式会社アルヴァスデザイン設立。2018年「実践!インサイトセールス(プレジデント社)」出版。
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