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森のような経営 - 社員が驚くほど自由で生き生きする。「心理的安全性」に溢れた組織づくり(山藤 賢著 山田 博著2021年 株式会社ワニ・プラス)~ありのままで調和する組織「森のような経営」に学ぶ持続可能な働き方〜

こんにちは。土岐です。
今回、私自身に生まれた問いが、この書籍を手に取るきっかけとなりました。

  • 組織の中で「あるがままに生きる(働く)」ことは、本当に実現できるのだろうか?
  • 個々の「あるがまま」を尊重し合う組織こそが、これからの持続可能な社会をつくる鍵になるのではないか?

これらの問いに、一つのヒントを与えてくれる書籍だと思います。
今、多くの組織や働く人々が、価値観や働き方そのものが揺れ動く「変化の渦」の中にあります。だからこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
あなたは森に足を踏み入れたとき、何を感じますか?
大地の匂い、葉を揺らす風の音、豊かに息づく生命の存在、その裏側にある死の存在、そのすべてが「調和」という言葉では言い表せない感覚を私たちに届けてくれます。森は、ただ美しいだけではありません。そこには多様性があり、どんな生き物も「今この瞬間にできる最善のこと」だけをして、結果をすべて受け入れて生きています。そして、命の営みが流れてゆきます。

「森のような経営」は、そんな自然、森の在り方をヒントにした考え方です。私たちの組織もまた、完全に計画された秩序や効率だけで円滑に動くものではありません。むしろ、個々の多様性や自律性を受け入れ、それぞれの”ありのまま”を活かし、それぞれがそれぞれなりに調和することで、全体として、持続可能な企業のいのちを継続させる鍵となるのです。

では、この「森のような経営」とは一体どのようなものなのでしょうか。
本記事では、その哲学を紐解き、私たちの働き方や組織づくりへのヒントを探っていきます。

 

目次

    1. 森のような経営とは

    森の中では、動物も植物も、それぞれが自分のペースで命を育んでいます。
    そこに明確な指示や計画があるわけではありません。それでも、森全体は不思議なバランスを保ちながら何百年、何千年、何万年と維持され続けています。木々が競争するのではなく、互いに支え合い、つながりを通じて全体を生かす。個々の木が生きるのも死ぬことさえも摂理だと受け入れ、持続していく。そんな「共生」の仕組みこそが、森の強さの秘密です。

    「森のような経営」は、この共生の仕組みを組織のあり方に取り入れる考え方です。社員やチームがそれぞれの個性を活かし、自由に伸びることを許容しながらも、全体として調和する状態を目指します。
    トップダウンで細かく管理するのではなく、自然な成長を見守り、必要な環境を整える──これが「森のような経営」が目指す世界です。
    たとえば、心理的安全性(安心、安全、大丈夫)を感じられる環境下で、社員が主体的に意見を出し合い、必要に応じて自発的に助け合うことで、互いの成長が相乗的に引き出されるような環境が挙げられます。

    そして、私たち人間もまた、森や獣と同じ「生態系」の一部に過ぎません。その感覚を思い出すことで、一見離れたところにある、「森」と「経営」を融合してみることができるかもしれません。それをどれだけ実感しているでしょうか?
    次の言葉は、私たちの生きる意味を改めて思い起こさせてくれるかもしれません。

    山田
    (中略)獣も森も、言葉は通じない。科学的にも説明できない。だけど、僕らは同じ生態系の中でたしかに今、生きている。そして、今ここで出会って、何かを感じている。「今、ここで生きているよね」と感じている。たぶん、人間の言語にはこの感覚を言い表す言葉がないんです。

    山藤
    うん。うん。

    山田
    あえて言葉にするなら「」としか言いようがない。あるいは「生きる喜び」かな。今、生きているよね。ここに一緒にいられて良かったね、という喜び。この世界は、そういう喜びに溢れている。生きる喜びに溢れた空間にいるんだなと感じると、人間である僕らはだいたい「美しい」と言うんです。

    山藤 賢 (著), 山田 博 (著)、『森のような経営 – 社員が驚くほど自由で生き生きする。「心理的安全性」に溢れた組織づくり』(2021年 株式会社ワニ・プラス)Chapter3より

    森がそうであるように、組織もまた、計画や言葉だけでは成り立たない生きた空間です。「今ここで生きている」という実感が、一人ひとりを支え、全体を動かしていく原動力になるのではないでしょうか。

    2. 未来を”あえて”見通さないアプローチ

    森の中では、すべてが計画通りに進むわけではありません。そもそも森に計画はなく、ビジョンや目標もありません。その時々の日当たりや雨量、気温といった環境の変化に応じて、植物や動物たちは柔軟に適応しながら生きています。

    未来を完全に見通すことができないのは、私たちの組織も同じです。その不確実性を恐れるのではなく、「予測しないからこそ開かれる可能性」を信じること。それが、「森のような経営」が私たちに教えてくれることの一つです。

    未来を見通そうとせず、変化にしなやかに対応する組織。その根底にあるのは、一人ひとりが自分らしくありのままでいられる環境です。

    3. ありのままのうつくしさ


    森にある木々や草花は、虫や菌や動物たちは、それぞれが「ありのまま」の姿で生きています。まっすぐ育つ木もあれば、曲がりくねって伸びる木もある。そのすべてが森全体のバランスを支え、美しさを作り出しているのです。

    人間の組織もまた同じです。ありのままでいることが、周囲に安心感を与え、全体に良い影響を及ぼします。
    幸福学の観点からも、「ありのままに因子」(独立や自分らしさを象徴する要素)が幸福感と深く関わっていることが示されています。

    山田
    (中略)ちなみに、この「ありのまま」ってすごくわかりにくい言葉で、あまり使われてこなかった気がするんです。でも最近は状況が変わりつつあって、慶應義塾大学大学院教授の前野隆司先生が提供している 幸福学における「幸せの4つの因子」の1つにも「ありのままに因子」(独立と自分らしさの因子)が入っています。科学的な調査でも、ありのままでいることが、幸せにつながるという研究結果が出ている。

    山藤
    はい。

    山田
    誰かがありのままでいると、まわりの人は安心するんです。「ありのままでいていいんだ」「飾らず、あんなふうに振る舞っても大丈夫なんだ」と安心を与えることになる。

    山藤 賢 (著), 山田 博 (著)、『森のような経営 – 社員が驚くほど自由で生き生きする。「心理的安全性」に溢れた組織づくり』(2021年 株式会社ワニ・プラス)Chapter3より

    私たちが自然体であることで、組織全体にも自然な調和と活力が生まれます。それは、森がその多様性の中で美しく調和している姿そのもの。

    無理に形を整えようとするのではなく、そのままの姿を受け入れ、尊重し合うことで、組織はより豊かに息づいていくのです。

    4. おわりに


    「森のような経営」は、言葉では簡単に言い尽くせない感覚や喜びを教えてくれる哲学です。それは、計画や効率だけに縛られた従来の組織運営とは全く異なるアプローチです。
    一人ひとりが自分のありのままの姿でいられること。その自然なつながりが、組織全体をしなやかで持続可能なものへと導いていきます。

    森の中で感じる「生きる喜び」を、私たちの働き方や組織の中にどう取り入れていけるか。その問いが、これからの未来を紡ぐヒントになるのかもしれません。
    そしてその未来は、あなた自身の「ありのまま」から始まるのです。

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    土岐優

    石川県金沢市出身。音楽大学(ハープ科)卒業後、ファンマーケティングのリーディングカンパニーに勤めたのち、プロデューサーとしてアルヴァスデザインに参画。2024年10月よりナレッジ・マネジメント部を立ち上げ、ナレッジコーディネーター兼ラーニングデザイナーとして奔走中。趣味は内面探求、読書、マインドフルネス瞑想。好きな言葉は「強がらなくても大丈夫。どんなあなたも大好きだから。」

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