ALVAS JOURNAL

オーセンティックコーチング(苫米地 英人著2022年 サイゾー社)~現状の外側にゴールを設定し人生を変革する~

こんにちは。荻原です。

今回も引き続き、トップセールスの本棚をインタビュー形式でお届けします。
本日、インタビューに答えてくださったのは、現役プロデューサーとして活躍中の高谷さんです。

コーチングの新しい視点と人生を根本から変える方法論として「オーセンティックコーチング」をご紹介いただきました。一般的なコーチングの概念を覆す、挑戦的な内容が詰まった一冊です。
ぜひ、ご一読ください。

 

目次

    1. 「オーセンティックコーチング」とは?

    荻原:本日は、よろしくお願いします。はじめに、高谷さんのおすすめの一冊について簡単にご紹介お願いします。

    高谷:はい、今回私がご紹介するのは『オーセンティックコーチング』という本です。「本物のコーチング」という意味です。著者は苫米地英人(とまべち ひでと)さんという認知科学者の方です。

    認知科学とは、情報処理の観点から特に人間の知的な働きや性質を理解しようとする学際的な分野です。人間の心がどのように働くのか、心理学、情報科学、言語学、人類学など複数の学問分野の知見を統合している比較的新しい分野です。

    この本は、認知科学に基づいたコーチングの手法を体系的に紹介しています。著者の苫米地英人さんは、カーネギーメロン大学の博士号を持ち、ジョージ・メイソン大学サイバー研究所の研究教授や早稲田大学の客員教授なども務められている方です。師匠であるルー・タイスさんというアメリカのコーチの方と一緒に、認知科学に基づいたコーチングのプログラムを開発してきました。

    荻原:かなり学術的な背景を持つコーチング法なんですね。一般的なコーチングとはどう違うのでしょうか?

    高谷:通常のコーチングでは仕事の効率を上げたり、メンタルを整えてパフォーマンスを向上させたりすることが目的とされることが多いですが、この認知科学に基づくコーチングでは、そのコアな部分は「ゴール設定をすること」だと明確に定義しています。しかも、ここでいうゴールの概念も一般的なものとは全く異なります。

    一般的なコーチングでは「共感」や「傾聴」が重視されますが、このコーチングではむしろそれらは「やってはいけない」とさえ言われます。人生丸ごとを変えるような強力なアプローチなんです。

    荻原:聞いているだけでワクワクするコーチング法です!

    2. 「現状の外側」というゴール設定の新概念

    荻原:本書の核心部分について詳しく教えていただけますか?

    高谷この本の最も重要な概念は、「現状の外側にゴールを設定する」というものです。まず、「現状」とは何かを定義する必要があります。現状とは、今の自分を取り巻く環境全体です。現在の仕事、生活、収入、自分が心地よいと感じるもの、心地よくないと感じるものなど、すべてを含みます。

    そして「現状の外側」とは何かというと、今の自分では実現不可能なもの、あるいは自分がゴールとして想定できないようなものを指します。

    例えば、「仕事で成功してお金持ちになりたい」「マネージャーになって社内で評価され、ゆくゆくは社長になる」といった目標は、一般的にはかなり高い目標に思えるかもしれません。しかし、この認知科学のコーチングでは、それらはあくまで「現状の延長線上にあるゴール」でしかないと考えます。

    荻原:それは興味深いですね。一般的には立派な目標と思えるものでも、自分の現状の延長線上にあるものは「真のゴール」ではないというわけですね。では、どうやって「現状の外側」のゴールを設定するのでしょうか?

    高谷:これが難しいところなんです。人は無意識的に自分の「ブリーフシステム」と呼ばれる信念体系の中でしか考えられないからです。

    ブリーフシステムとは、自分が今まで培ってきたモラルや常識、価値観のことです。人間の行動の約90%は無意識によるものだと言われていますが、それらは全てこのブリーフシステムに基づいています。

    例えば、

    • 大企業に就職すれば社会的に評価される
    • 安定した収入が得られる仕事を選ぶべき

    といった考え方もブリーフシステムの一部です。

    あるいは、営業現場でも、「こういう提案はお客様に刺さらない」と決めつけてしまうような、無意識の判断基準はないでしょうか。これらもブリーフシステムの一つです。

    このブリーフシステムを変えないと、「現状の外側」にゴールを設定することは不可能です。自分では大きなゴールを設定したつもりでも、実は今までの自分のパターンの延長線上にあるものになってしまうんです。

    荻原:なるほど。では、コーチの役割は、クライアントのブリーフシステムを変えることにあるのですね?

    高谷:その通りです。コーチ自身も「自己適用」という概念を重視します。コーチ自身が「現状の外側のゴール」を設定し、そこに向かう体験をしていないと、クライアントに対して説得力を持ってコーチングすることはできません。
    言ってしまえば、「自分もやっていないことを人にすすめても、響かない」ということですね。自己適用ができているコーチは、自身の実体験をもとに語れるので、相手にとっても“生きたロールモデル”になりますし、信頼感もまったく違います。
    だからこそ、このコーチングを学ぶ人はまず「自分が変わること」「自分の人生に適用すること」が何より大切と言われています。

    荻原:「言葉」ではなく「生き方」で語るのが、コーチの本質なんですね。自己適用ができている人の言葉には、無条件で人を動かす力があるのだろうと思いました。

    3. 人生全体を捉える「バランスホイール」

    荻原:他にも重要な概念はありますか?

    高谷:もう一つ重要なのが「バランスホイール」の概念です。この認知科学のコーチングでは、仕事だけが成功しても人生全体の成功や幸せにはつながらないという考え方をします。

    人生を構成する7つの領域

    • 職業
    • 健康
    • 趣味
    • 家族
    • 生涯教育
    • ファイナンス
    • 社会貢献

    それぞれでゴールを設定することが重要だと説いています。

    バランスの取れた人生を送るためには、これらすべての領域でゴール設定をする必要があるんです。

    特に興味深いのは職業についての考え方です。本書では、職業は単にお金を稼ぐための手段ではなく、「自分の機能・能力を社会に提供するもの」だと定義しています。現代は資本主義社会なので、その機能提供の対価としてお金をもらっているに過ぎません。

    お金を得ることを第一目的にすると職業選択を間違えてしまうと指摘しています。むしろ、自分が無意識的にやってしまうこと、人から止められてもやりたいと思うこと、そういった自分の本質的な機能や能力を職業にできれば最も理想的だというわけです。

    荻原:それは深い考え方ですね。目標設定の具体的な方法として何かアドバイスはありますか?

    高谷:やりたいことが分からない人には、まず「趣味」の領域でゴール設定することをおすすめしています。趣味は人の役に立つ必要がなく、純粋に自分が心から楽しめることを追求できるからです。

    趣味で「現状の外側のゴール」を設定して、それに没頭することで、そのマインドの使い方が磨かれます。例えば、スクールの同期には、モノマネが好きな人がいて、大勢の前でモノマネの舞台に立つというゴールを設定した人や、挑戦できていなかったピアノを駅のストリートで演奏するというゴールを掲げた人もいました。

    そうした経験を通じて、「こんなチャレンジングなことができた」という自信が生まれ、それを職業などの他の領域にも応用できるようになるんです。

    4. 「オーセンティックコーチング」はどんな人におすすめ?

    荻原:この本はどんな方におすすめですか?

    高谷:やはり、現状に全く満足していない人、現状を変えて「自分は何者かになりたい」と思っている人におすすめです。年齢や階層は問わず、自分の中でモヤモヤを抱えている方に特に効果的でしょう。

    また、すでにコーチングを受けたり提供したりしている人で、「何か物足りない」と感じている方にもおすすめです。共感や傾聴ではなく、根本的に人生を変革するような強力なアプローチを求めている方には、新しい視点を提供してくれます。。

    ただし、現状に満足している、または「そこそこでいい」と思っている方には向いていません。自分が大きく成長したい、変わりたいというマインドを持っている人だけが、このコーチングから真の価値を得られるのだと思います。

    荻原:コンフォートゾーンから飛び出したい人にこそ効果的なアプローチなんですね。今回は非常に興味深いお話をありがとうございました。私もぜひ読んでみたいと思います。

    高谷:こちらこそありがとうございました。少しマニアックな内容ですが、本当に人生を変えたい方には強くおすすめできる一冊です。

    本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒オーセンティック・コーチング

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    荻原エデル

    社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
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    高谷 政志

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    営業一筋のキャリアから未経験で人材開発領域に転身。現在プロデューサーとして従事。
    奈良県出身。2児のパパ。

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