ALVAS JOURNAL

<トップセールスの本棚>“秒速”プレゼン術(戸田覚 著 2020年 日経BP)~テレワーク時代に求められる、情報を絞って伝える力~

こんにちは。根建です。

本日は、プレゼンテーションの達人として知られる戸田覚氏による『“秒速”プレゼン術』をご紹介します。

著者の戸田氏は、数多くのビジネス書を手がけ、日経クロストレンドで「刺さるプレゼンの極意」を連載されているプレゼンテーションの専門家です。

本書が書かれたのは、テレワークが一気に広がった時期です。オンラインでのプレゼンやミーティングが当たり前になり、これまでの対面を前提としたやり方では、なかなか相手の心をつかめないと感じた方も多いのではないでしょうか。

「秒速プレゼン」とは、その名のとおり、1枚のスライドを長々と見せるのではなく、要素を絞ったスライドをテンポよくめくっていく手法です。

プレゼンと聞くと、営業担当者にとっては身近なようでいて、実は苦手意識を持っている方も少なくないかもしれません。本書の考え方は、商談やオンライン提案の場面に、そのまま活かせるものばかりです。

本記事を通じて、「伝わるプレゼン」とはどういうものかを、相手の視点から見つめ直すきっかけをお届けします。

 

目次

1. スライドは「読ませる」より「見せる」

本書がまず大切にしているのは、1枚のスライドに情報を詰め込みすぎない、という考え方です。

私たちはつい、伝えたいことをすべてスライドに書き込もうとしてしまいます。しかし本書では、文字の多いスライドはかえって逆効果だと言います。

なぜなら、文字がびっしり並んだスライドを見せられると、人は自然とそれを「読む」ことに気を取られ、話し手の説明が耳に入らなくなってしまうからです。

本書が示す目安は明確です。1枚のスライドに載せる文字数は16文字以内、読むのが得意な人でも25文字以下が望ましいと言います。

例えば、新しい業務システムを提案する場面を考えてみます。「導入により作業時間を削減し、入力ミスを防ぎ、属人化も解消できます」と一枚に書き込むのではなく、「作業時間を半分に」という短い言葉だけを大きく映す。残りは口頭で語る、というイメージです。

スライドはあくまで話の補助であり、主役は話し手自身の言葉です。お客様に「読ませる」のではなく「見せる」。この発想の転換だけでも、提案の伝わり方は変わってくるのではないでしょうか。

2. 1枚1メッセージで、テンポよくめくる

次に本書が説くのは、スライドを「分解する」という考え方です。

従来は、1枚のスライドに複数の項目を箇条書きでまとめることが多かったのではないでしょうか。本書は、その箇条書きをあえてバラして、1つのメッセージにつき1枚のスライドにすることを勧めています。

そして、平均1分以内のテンポで、次々とスライドをめくっていきます。1枚にかける時間が短いからこそ、聞き手は飽きることなく話についてきてくれるのです。

新しい視覚情報が次々と現れることで、そのたびに相手の注意が呼び戻される、という効果もあります。

例えば、商品の特長を3つ伝えたいとき、1枚のスライドに3つ並べてしまうと、お客様の目は先回りして3つすべてを読んでしまいます。そうなると、いま話している1つ目への集中は薄れてしまいます。

一方で、特長を1枚ずつに分け、「まず1つ目です」と話しながらめくっていくと、お客様の意識は今この瞬間に語られている1点に集まります。

情報を絞ることは、伝える内容を減らすことのように思えるかもしれません。しかし実際には、一つひとつを確実に届けるための工夫なのです。

3. オンラインだからこそ、最初の3分が勝負

三つ目にご紹介するのは、オンラインならではの時間の感覚です。

本書によれば、オンラインのプレゼンでは、聞き手はおよそ3〜5分で集中力が切れ、離脱しはじめると言います。

対面であれば、多少前置きが長くても、その場の空気で最後まで聞いてもらえることもあります。しかし画面越しでは、つまらないと感じた瞬間に、相手の意識は手元の別の作業へと移っていってしまいます。

だからこそ本書は、最初の3分以内に相手の心をつかむことが重要だと言います。

例えば、オンライン商談の冒頭で、いきなり会社概要や製品の歴史から話し始めるとどうでしょうか。お客様は「自分に関係のある話はいつ始まるのだろう」と感じ、早々に関心を失ってしまうかもしれません。

一方で、開始してすぐに「今日は、御社の◯◯という課題が、どうすれば解決できるかをお話しします」と切り出せば、お客様は「自分ごとだ」と感じ、画面の向こうで姿勢を正してくれるのではないでしょうか。

限られた時間の中で、最初の数分に何を持ってくるか。オンラインが当たり前になった今だからこそ、あらためて問い直したい視点です。

4. おわりに

いかがでしたでしょうか。

『“秒速”プレゼン術』は、情報を足すのではなく、削ることで伝わるプレゼンを教えてくれる一冊です。

スライドは読ませるより見せる。1枚1メッセージでテンポよくめくる。そしてオンラインでは最初の3分で心をつかむ。本書が伝えるこれらの考え方は、プレゼンに苦手意識のある方にも、すでに場数を踏んできた方にも、新しい気づきをくれるのではないでしょうか。

私自身、振り返ってみると、これまでは伝えたい一心で1枚のスライドに情報を詰め込みすぎていたと痛感しています。今後は本書の考え方を指針に、1枚あたりの情報量を思い切って削ぎ落とす手法を自らの資料作りにも取り入れていきたいと考えています。そうすることで、資料作成の時間を短縮し、よりお客様と向き合うための準備に時間を充てられるように変えていくつもりです。

本記事ではご紹介しきれませんでしたが、本書にはスライドを短時間で作るための時短テクニックや、発表者ツールの使い方など、明日から試せる工夫も数多く紹介されています。

明日のオンライン商談で、まずは1枚のスライドから文字を1行削ってみる。その小さな一歩が、伝わるプレゼンへの入り口になるのかもしれません。

本記事が、情報を絞って相手に届けるプレゼンを考えるきっかけになれば幸いです。

本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒“秒速”プレゼン術

〇トップセールスの本棚とは?
【毎週月曜日配信】営業担当者なら読んでおきたい一冊を、毎週厳選してご紹介しています。
営業スキルに直結するものから、視野を広げてくれるものまで幅広くセレクト。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。

根建 良司

大学卒業後、医療業界に長く従事。その後、組織マネジメントに携わったのち、営業コンサルにも興味を持ち、現職に至る。好きな言葉は、ある物語に登場する大旦那の一言。「人間なんてものはな、無駄なことがしたいがために、普段から額に汗して働くんだ」。

RELATED ARTICLES よく読まれている記事

営業の本質が問われる
時代の到来。
熱い気持ちを輸送経済新聞
「いま、生き残るための営業術(全12回)」で表現しました。