ALVAS JOURNAL

論理思考は万能ではない(松丘 啓司著 2010年 ファーストプレス)

こんにちは、矢野です。

本日は、論理思考について営業目線で考えてみたいと思います。

営業をしていると「論理思考」が求められるシーンが多いのではないでしょうか。

「問題は何か?なぜその問題が発生しているのか?」など、お客様との対話の中で因果関係をひもとき、提案をする際に筋道立てて説明するなど・・あらゆるシーンで論理思考を活用し、営業活動に従事されていると思います。

さらに、論理思考を磨くためにも日頃から「客観的に物事を捉える」そんな努力をされている方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、「世の中には客観的なものはない。」そう言われたら、皆さんはどう感じますでしょうか?

きっと、多くの方が「え?そうなの?」と驚くと思います。

そして「論理思考は万能ではない」そう明示されているのが本著書です。

 

1. 因果関係分析の落とし穴

はじめに、一般的な営業シーンを考えてみましょう。あなたは営業で、お客様からとある問題の解決を求められたとします。その際、何を行いますか?

きっと多くの方は、問題の原因を探すという行為が思い浮かぶでしょう。「なぜその問題が発生したのか?」を調べて、原因を究明しようとします。そして、その原因となっているものの解決策を提案しようという流れを想定すると思います。

 

整理すると、

「問題を解決したい」

「問題の元になっている原因を探す」

「原因の解決策を提案する」

ということですね。

 

一見すると、とても理にかなった考え方に見えますが、実はすでにこの中に落とし穴があるのです。

 

その落とし穴とは、因果関係分析にあります。まず、因果関係から整理していきたいと思います。因果関係とは、「ある事象A(原因)によって引き起こされた事象B(結果)」と定義できるので、因果関係は時系列になっていることがわかると思います。では、因果関係分析をする際は何をするのかというと、「事象B(結果)から事象A(原因)を探る」、つまり現在→過去に遡ることをします。

例えば、ある人が「道で転んだ」という事象があった際に、その原因となる事象は何かを考えるとします。考えられることは、「小石につまずいた」かもしれないし、「風が吹いて身体のバランスを崩した」かもしれないし、「足腰がそもそも弱い」かもしれません。

 

このように、原因を探そうと思えば複数の事象がすぐに思い浮かびますが、「これだ!」と言えるほどの客観性を担保することは、過去のことなので容易ではありません。これは比較的考えやすい例ですが、ビジネスの世界ではさらに物事が複雑に絡み合っているため、原因を特定することをより一層難しくしています。

 

では、営業がお客様に向かって説明する「これが問題の原因です!」と特定した事象は、いったいどうやって導き出されているのでしょうか。それは、その営業自身が自社の解決策と関連するものを恣意的に「原因」として選択しているケースが多いと言えないでしょうか。

 

先ほどの、ある人が「道で転んだ」例に話しを戻すと、もしあなたがジムを経営している方なら、「道で転んだ」原因は「足腰が弱いから」と結論付けて、「ジムで足腰を鍛えましょう」と解決策を提案するかもしれません。もしあなたが土木関係のお仕事をしている方なら、「道で転んだ」原因は「小石があったから」と結論付けて、「誰もが歩きやすい道を作りましょう」と解決策を提案するかもしれません。

 

実際に、このコラムをご覧になっている方の多くは、自社が提供できる解決策を抱えて日々営業活動に従事しているはずです。つまり、お客様に何かを提案する際には、「自社の解決策を選んでもらうためにはどうしたら良いか?」という前提で提案論理を構成することになります。結果、お客様の問題の原因が、営業にとってただ都合の良いモノにならざるを得ないという、本質とはかけ離れた状態になってしまう可能性を常にはらんでいます。営業は、この認識を忘れずに持たなければならないと私は考えています。そうしないと、ありがた迷惑のオンパレードです…こんなことを営業が繰り返していれば、「営業ってイヤな仕事だな…」なんて声が市場に蔓延するのも無理はありません。

 

2. 今、営業に必要なたった2つのスタンス

では、営業はどうあるべきなのでしょうか。

私からの提案は2つです。

一つ目は、「解決策を抱えたままお客様と対話をするのをやめる」ことです。

これまで、お客様と対話する際に、自社の解決策を頭の片隅に持ったまま話をしていたとするなら、お客様の本来の気持ちや意向を聞き取れていない可能性が高いです。自社の解決策に関連付けた因果関係分析ばかりに気を取られるのではなく、お客様の言葉に耳を傾けましょう。時には自身の価値観をもお客様に開示し、広く深く対話しましょう。

 

二つ目は、「未来に目を向ける」ことです。問題に対する原因を、客観的に捉えることに限界があるのであれば、「これからどうなりたいのか」という未来に目を向けるのです。

当たり前ですが、人それぞれに違った価値観の基に多くの選択(=意思決定)をして生きています。その選択一つ一つが、我々の進む方向を作っているといっても過言ではありません。営業として、過去の原因に目を向けるのではなく、「これからどうなりたいのか」という未来にフォーカスし、その中で起こる様々な選択を支援することが大切になってくるのではないでしょうか。

 

3. インサイトを見抜く

お客様の未来にフォーカスするためには、営業は徹底的にお客様の価値観を理解する必要があります。なぜならば、前述した通り、人は価値観を基に選択(=意思決定)をし、その積み重ねで会社の進路が決定するからです。

一般的に、お客様の価値観を聞き、未来を一緒に創り出す営業はインサイトセールスと呼ばれています。ちなみに弊社でも取り組んでいます。

インサイトとは、洞察という意味ですが、まさにお客様の深い部分を洞察する力が営業に求められるのです。

4. まとめ

いかがでしたでしょうか。皆さんの営業活動に役に立つメッセージはありましたか?

私は論理思考を否定しているわけではありません。私たちは論理思考の限界を知り、その他の引き出しも持っておくことに意味があると思っています。その結果、今の営業の枠を超えることが可能です。自社の解決策に偏った提案から脱却し、お客様の価値観や本質的な意味を反映した調和のとれた提案が可能になると思っています。

本著が、そのきっかけになる一冊となれば幸いです。

 

本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒論理思考は万能ではない

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ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。

こんにちは、オンライン商談は念のためワイシャツを被る矢野です。
2013年に独立系Sierで営業に従事したのち、2016年にアルヴァスデザインに入社。
現在はマネージャーとしてメンバーと一緒になってクライアントの営業支援に従事。

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