ALVAS JOURNAL

【第8回】アポイントメントの取り方 ~ いま、生き残るための営業術(輸送経済新聞 2021年3月9日掲載記事)

 

「『ごあいさつ』でしたら、お忙しいと思うので結構ですよ」

―経営層へアポイントメント(訪問の約束)を取ろうとした際に、こんな断られ方をしたことがある営業担当者は多いはずだ。
年末年始やビジネスの節目で営業側が顧客経営層にあいさつをするということは慣例的に行われていたが、昨今「ごあいさつ」という名目ではなかなかアポイントメントも取りにくくなっている。

もちろん、あいさつ自体に反対しているわけではないが、あいさつを目的とした商談のアポイントメント取得が難しくなっている現状はしっかりと認識すべきだ。次の一手をどこに打つか考える必要がある。
前回の記事で、「インサイトセールス」と呼ばれる顧客の理念に伴走する営業手法では、「顧客経営層との対話が肝だ」と伝えた。
今回は、対話の起点ともいうべき顧客経営層へのアポイントメントの取り方について解説する。
経営層とのアポイントメント取得に苦戦している営業担当者の多くは、一つ大きな勘違いをしている。それは、「経営層とあいさつすること」自体に大きな価値があると思っていることだ。そうではなく、いま一度アポイントメント取得の基本に立ち返らなければならない。

3つの価値を伝える

基本というのは何かというと、商談目的を明確にして、端的に顧客に伝えることだ。
加えて、実際に私が経営層とアポイントメントを取得する際に伝えるようにしている
「3つの価値」があるので、紹介しよう。

1つ目は、「商談内容」の価値を伝える。

内容は簡潔に、経営層と担当者層の双方に価値のある伝え方をすべきだ。
例えば、このようなセリフで。「経営層の理念やビジョンのお話をお伺いした上で、弊社からご提案させていただいたほうが、ご提案内容や方向性にブレがなくなると思います。ぜひ、直接経営層の方からお話をお伺いできませんか」

2つ目は、「自社ならでは」の価値を伝える。

競合の存在を意識しない営業は、ほとんどいない。
だが、競合を意識してアポイントメントを取ろうとする営業も、残念ながらほとんどいない。
多くの業界で商品やサービスの同質(コモディティー)化が進み、なかなか差別化が難しい時代だ。
そういった環境をしっかり認識し、手ごわい競合や既存ベンダーがいる前提で「なぜわれわれと商談をすべきなのか」を明確にする必要がある。自社にできて他社にできないことを、しっかりと明文化させる必要があるのだ。
「御社と同業種・同規模での成功事例がございます。○○の点は弊社でしかできないポイントになります」といったセリフを使おう。

いま商談をすべき

3つ目は、「いま商談をすべき」価値を伝える

ことだ。会社の中では、重要だが緊急でないものがたくさんある。
一方で営業側から見るとまだ顧客の中で事案として曖昧な状況、いわば「川上の段階」から営業担当者が入り込めるかどうかはとても大切だ。
もしも「それはまだ来年度のことなので、その時期になったら改めて経営層を紹介しますよ」といった言葉をもらったら、いま商談をすべき価値を提示しよう。

私の場合は「ビジョン実現に向けて他社の成功事例や失敗事例などを集めておくと、いざ準備を始められる時にもスムーズにお仕事を進めることができると思いますが、いかがでしょうか」と伝えている。

以上の3つの価値を、ありがちな顧客の心理とひも付けて表にまとめた。
実際にアポイントメントを取る際に参考にしてほしい。

代表取締役 CVO
早稲田大学大学院理工学研究科終了後、株式会社ファンケルに入社。
その後、30歳を節目に営業の世界に飛び込み、多くの会社の教育支援に携わる。
2013年(株)アルヴァスデザイン設立。著書に「実践!インサイトセールス(プレジデント社)」。

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