AI時代に提案力の向上は可能? 「これからの提案力」に必須の思考フレームワークとは?(後編)
こんにちは、矢野です。
今回のコラムは、”AI時代に提案力の向上は可能? 「これからの提案力」に必須の思考フレームワークとは?”の後編をお伝えします。
前編では、これからの営業に求められる提案力として、お客様の未来(ありたい姿)を知るだけでなく、未来を知ること、洞察することの重要さをお伝えしました。
「AI時代に提案力の向上は可能? 「これからの提案力」に必須の思考フレームワークとは?」(前編)
この後編では、シリコンバレーでも注目を浴びている、時代の変化(外的環境の変化)を読み取り、未来を構想する力を高める思考フレームワーク、「エクスポネンシャル思考」をクローズアップしてご紹介していきます。
「これからの提案力」を推進する、エクスポネンシャル思考とは?
では、そのエクスポネンシャル思考ですが、ひと言でいうと次のようになります。
「エクスポネンシャル思考は、テクノロジーを俯瞰し、テクノロジーがもたらす未来を予測し、自ら理想の未来を創造する」
(『エクスポネンシャル思考』 齋藤 和紀/著)
エクスポネンシャルが「指数の、指数関数的」を意味するのは、前回もお伝えした通りですが、
指数関数のグラフのように、テクノロジーの進化が急激に進む環境を生き抜く上で、テクノロジーの動向を俯瞰し、それがもたらす未来を予測する力を持つ意味は大きいと言えそうです。
さらに具体的に見てみましょう。エクスポネンシャル思考自体は、カーツワイルのシンギュラリティ大学に代表される一種の考え方ですが、齋藤 和紀氏は著書『エクスポネンシャル思考』で、次のように整理しています。
- ①「エクスポネンシャル・テクノロジー」を俯瞰的に把握する力
(社会基盤や産業基盤に大きな変化をもたらす)「エクスポネンシャル・テクノロジー」を俯瞰的に把握する力は技術系・非技術系に関係なく、人として、組織のリーダーとして、必須の教養であり能力である。
個々のテクノロジーの理論や生産方法、売上予測などといった小さな視点で見るのではなく、そのテクノロジーが他のテクノロジーとどう絡み合い、地球・人類・社会に「どのようなインパクトを及ぼすのか」にフォーカスするのが、エクスポネンシャル・テクノロジー俯瞰力。技術そのものを知らなくても、そのインパクトが理解できていればよい。
- ②イノベーターマインド
「10%アップを目指すより10倍を目指す」、イノベーターマインドが必要。未来に恐怖を抱いて自らを安全圏において論じるオブザーバーになるのではなく、理想とする未来を自ら作り出すイノベーターとならなければならない。
- ③ムーンショット構想力
ムーンショット(=壮大な夢)を掲げ、自らの創り出そうとするイノベーションに周辺を巻き込む。掲げたムーンショットが組織の志となり、仲間を引き付ける。やがてそれが技術の集積につながり、投資を生む。
①のエクスポネンシャル・テクノロジー俯瞰力が、エクスポネンシャル思考のOS(オペレーティングシステム)にあたり、そのOS上のアプリケーションレイヤーとして、②のイノベーターマインド、③のムーンショット構想力が乗る。
ちなみに、①のエクスポネンシャル・テクノロジーにあたるものとして、人工知能のほか、ロボティクス、バイオ技術、バーチャル・リアリティなど、28のテクノロジーが列挙されていますが(2018年時点)、齋藤氏は、ひとつの研究領域に特化して専門化しすぎるのも現代では危険なこととして、警鐘を鳴らしています。
バーチャル・リアリティ(VR)の技術は、現実世界での移動を破壊する可能性があり、大量輸送を前提としたモビリティのために今開発されている技術が一瞬にして無駄になるかもしれない。一過性のブームにとらわれず、テクノロジー全体を俯瞰することが何より大切なことであると強調しています。
このように、先述の著書『エクスポネンシャル思考』では、いくつかのエクスポネンシャル・テクノロジーに焦点を当て、それらがもたらす未来について詳しく紹介しています。ご興味のある方は、一読されることをおすすめします。
『エクスポネンシャル思考』 齋藤 和紀/著
これからも、お客様をエクスポネンシャルにリードする
お客様をけん引し続ける上で、直線的(リニア)な成長をしていては、やがてはお客様に追いつかれてしまう可能性が高いと言えます。
重ねて強調しますが、エクスポネンシャル思考で触れた「エクスポネンシャル・テクノロジー俯瞰力」、「イノベーターマインド」、「ムーンショット構想力」を持つことで、テクノロジーがもたらす未来を予測するだけでなく、自ら理想とする未来を創造し、お客様の「ありたい姿」を実現することが可能となるでしょう。つまり、お客様からエクスポネンシャルにリードを取り続けることができるのです。
エクスポネンシャル思考を身につけるワークショップでは、そのステップとして、価値観を再確認(軸の確認)する作業を行います。そこでは、業界に求められている本質的な価値観を再確認し、変化する時代にもブレない本質的な価値観とは何かを振り返ります。
製造業として定義されていたトヨタが、サービスとしての移動を標榜し、エア・モビリティ(人が乗れるドローン)への参入を表明しましたが、「自動車を作ること」以上に「より高品質な移動を追求すること」に価値を置いていることを示しています。これは、自社の本質的な価値観に基づく行動の一例といえるでしょう。
理念実現型営業であるインサイトセールスでは、お客様がどんな状態を目指し、どんな理念を掲げているのかをしっかり押さえた後、「ビジョンを実現するために自社に何ができるか」、つまり自社の価値観をぶつけていきます。
単に未来志向と称して、テクノロジーの動向に迎合した事業をお客様に提案するといったことは、インサイトセールスの観点からも、エクスポネンシャル思考の観点からも、筋違いであることはお分かりいただけるかと思います。
価値観の再確認もそうですが、エクスポネンシャル思考は、インサイトセールスととても親和性の高いフレームワークです。AI時代にあっても提案力を向上し続けるために、「これからの提案力」を推進するエクスポネンシャル思考を、ぜひ身につけて頂きたいと思います。
弊社では、Exponential Japanと共同で、「エクスポネンシャル思考」の体得・実践を目的とした研修プログラム「エクスポネンシャル思考ワークショップ」を提供しています。
- ただ「生き残る」のではなく、自社の事業を通じて世の中にイノベーションを起こしたいと考えている
- 人材開発を通して事業の成長を生み出したい、という想いを持っている
- ビジョンを大切にし、1人ひとりがリーダーシップを発揮する組織を創りたい、という想いを持っている
- メンバーが働きがいを感じられる組織を創りたい、という想いを持っている
- 自社内に未来志向でワクワクする場を創りたい、という想いを持っている
このような考えをお持ちの企業様にオススメしております!
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※本コラム後半のまとめ
- 「エクスポネンシャル・テクノロジー」を俯瞰的に把握する力は技術系・非技術系に関係なく、人として、組織のリーダーとして、必須の教養であり能力である。
- エクスポネンシャル思考で触れた「エクスポネンシャル・テクノロジー俯瞰力」、「イノベーターマインド」、「ムーンショット構想力」を持つことで、テクノロジーがもたらす未来を予測するだけでなく、自ら理想とする未来を創造し、お客様の「ありたい姿」を実現することが可能。つまり、お客様からエクスポネンシャルにリードを取り続けることができる。
- 顧客を深く理解し、顧客の「ありたい姿」の実現を支援するインサイトセールスにとって、エクスポネンシャル思考はとても親和性の高いフレームワーク。
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