ALVAS JOURNAL

インサイト営業では「事前調査」で顧客理解をしよう

こんにちは、高橋です。

皆さまは訪問してきた営業担当者から的外れな質問をされたり、一方的な説明を受けたりしてイヤな思いをしたことはありませんか?

アポイントメントを取っているにもかかわらず事前調査を全くせず、お客様の事業も知らずに訪問してくる営業担当者も世の中には存在します。以前、弊社を訪れた営業担当者から「御社は何の仕事をやっているのですか」と聞かれたことが数回ありますが、その時は面談時間を作ってしまった自分を責めてしまったほどです。

飛び込み営業に代表される“足で稼ぐ”という営業パーソンはこのような事前調査をあまりやらない傾向がありますが、初回訪問は事前調査で差がつくと言っても過言ではありません。

 

事前調査によって得られる3つのメリット

事前調査によって顧客理解を深めることで、次の3つのようなメリットがあります。

①会話の質が上がる

事前調査によって訪問当日の会話の質が上がります。特に多くの情報を持つことで仮説が立てやすくなっていきます。事前調査の精度は仮説の精度と比例するのです。

②自信と落ち着きが持てる

質の高い準備をすることによって「質の高い質問や会話ができるはずだ」という自信にも繋がります。その場で慌てる必要もなくなるので、落ち着いてお客様の表情や声のトーンにも集中できるようになるでしょう。さらにその自信がお客さまに安心感を与えることにもなっていきます。

③結果として信頼を得られる

上記の結果、お客さまからの信頼が得られて次回以降の訪問に繋げやすくなるでしょう。お客様の心理として、忙しい中で時間を割くのであれば有意義な面談ができる営業担当者と話をしたいと思うものです。この信頼の蓄積こそが営業担当者としての資産になっていくのです。

当然ですが、ここまでの話は顧客側にとっても「価値ある時間を過ごせる」というメリットになります。ホームページを見れば分かる様な事柄を説明している時間はお客様にとっても価値ある時間とは言えません。誰しも自分のビジネスを前に進めるための有意義な話に時間を割きたいと考えるものです。

営業担当者が事前の情報収集をしてくると無駄な時間を省くことができ、本題に会話を集中させることができるというわけです。

 

事前調査で調べておくべき顧客情報とは

事前調査を難しく感じる人もいるかもしれませんが、最近はインターネットの普及により本当に楽になっています。

上場企業に至っては訪問前に知っておきたい情報をほとんど入手することができます。財務諸表をしっかり分析して顧客理解を深めるという方もいらっしゃいますが、そこまでする必要はないと思います。10分もあれば調べられるようなことをしっかりと調べていくという姿勢の方がよほど大事でしょう。

調べておくべきは、例えば下表の様な顧客情報です。

〔会社概要〕事業内容 / 代表者名 / 社員数 / 拠点数 / 会社沿革

〔経営状況〕売上、利益などの経営数値の推移 / 業績見通しと課題

〔経営計画〕経営方針 / 経営目標 / 経営戦略

〔商品サービス〕商品概要 / サービス概要 / 新製品情報

〔組織〕組織図 / 役員人事

〔その他〕最新ニュース

ただし、“インサイト営業”ではこれらにプラスして、もう一歩踏み込んだ事前調査が必要です。特に経営者と初めて会うときには、ここが成否を分けるポイントになるのです。

 

インサイト営業において重点的に調べておくべき4つのポイント

基本情報だけでなく、以下の4つを重点的に調べることで面談の質が大きく左右されます。

(1)ホームページ上の経営理念 / ビジョン

会社として大切にしている理念やビジョンについてしっかりと読み込んでおきます。何を大切にしている会社で、今後目指す姿はどのようなものかを理解し、訪問時の会話の材料にします。理念やビジョンは経営者が最も関心がある領域の一つです。

ちなみに、求人サイト上で経営者自らが気合いを入れて理念やビジョンを語っているケースが多々あります。求人サイトもチェックしておくと良いでしょう。

(2)ホームページ記載の経営者挨拶の概要

会社によってはホームページに経営者が挨拶をしているページがあります。このページは経営者が直接文言を書いているケースが多く、経営者の価値観が最も表れているページの一つです。経営者が何を大切にしていて何を目指しているのかなど、理念やビジョンはここにも表現されています。

(3)外部サイトや雑誌などのインタビュー記事

いろいろなメディアに出て自分の想いや今後のビジョンを語る経営者は少なくありません。インタビュアーが経営者から想いをうまく引き出して記事にまとめているケースも多々あります。この様な記事に目を通しておくと、経営者の想いや会社が目指す方向性が手に取るように伝わってくることがあります。

(4)顧客企業を取り巻く市場環境の変化

その顧客企業を取り巻く市場環境の変化を調べておきます。業界内における競合や市場規模を把握することはもちろん、新たな法制や人口動態変化など、今後その業界で戦う上で看過できない環境変化についての情報を集めましょう。

この様な事前情報があることで、お客様の関心領域に沿った本質的な会話ができるはずです。ぜひとも手を抜かないようにしておきましょう。

突然ですが、私が大好きな言葉を紹介します。

もし、あなたが問題の一部でなければ、あなたはソリューションの一部にはなれない。

これは、個人や組織の変容を図る組織開発の大家、ビル・トルバート氏の言葉です。

とても冷静でありながら、前向きな言葉だと思いませんか。

社内で起きている問題を解決したい時、

クライアントにコンサルティングを行う時、

さらには社会課題に対峙する時まで、

あらゆる場面で必要な心構えではないかと私は思っています。

 

問題の構造を見落としてはいけない

ビル・トルバート氏の言葉のとおり、問題を解決しようと思ったら「問題の一部」でなければなりません。

これは、知人が上司に言われたダメな会話の例です。

上司「キミはさ、もっと積極的にチャレンジしないと成長しないよ!」

 

知人「はい……」

 

上司「チャレンジしないと成果は得られないし、限界が分からないし……(以降、チャレンジしないことのデメリットを延々と語る)」

 

知人「(いやいや、何かするとすぐに否定して芽を摘むのはあなたでは……)」

 

これは上司が問題構造を見落としてしまっている一つの例ですが、1対1の関係ですら問題を見落とすのですから、社内全体・社外・社会と広がれば、どんどん見落としてしまいます。

ただ、「問題の原因の在り処」として指摘された側には、意外と正しく問題構造が見えていたりするのです。「自称・解決者」と「他称・問題児」のやり取りは水掛け論に陥ってしまうことが免れない、といえるでしょう。

 

問題を構造で捉え、自分が果たす役割を考えよ

私はどうしているかと言いますと、初めて研修をさせていただくクライアントであっても、「過去に研修を行ってきた研修会社が、受講生となるクライアントの社員にどのような影響を与えてきたか」という点を考えるようにしています。

つまり、過去の研修提供者が自分ではないとしても、同じ「外部の研修会社」「研修・教育業界」という括りで捉え、その一人として“当事者意識”を持って考えるようにしています。

研修を受講される方からは、“いつもの”外部の研修会社の人、と見られるからです。

では、当事者意識を持って具体的に何をすべきかと言うと、その問題を「構造で捉える」ということです。あらゆる物事はお互いに影響し合っていますから、その問題を構造で捉え、その構造の中で「自分が果たす役割」を考えるべきなのです。

問題が起きた時に、「ああ、もうだめだ」というように『物事の終着点(BAD END)』として捉えてはいけません。「自分に何ができるだろうか」というように『解決(HAPPY)のスタート地点』と捉えるべきなのです。

 

当事者意識を持つことがすべての始まり

先ほどのダメな上司の例で言えば、こう対応すべきではないでしょうか。

知人「私は積極的にチャレンジしないとダメでしょうか……」

上司「あなたのチャレンジを私が妨げているとしたらそれは良くない。しっかり変えたいから、何かあれば教えてくれるかな」

知人「……!!!」

こんな対話ができる上司でありたいものですよね。一方的に必要性を説くよりも、実に効果的な解決策だと思います。

人材育成の場において、「責任感を持たせたい」という言葉をよく伺います。また一方で、「イマドキの若者は責任を取りたがらないから管理職にならない」といった風潮があるという話も、同じように耳にします。実態はともかく、こういった話を聞くたびに「責任」という言葉について考えてしまいます。

「責任感」の考え方については、良い意味で「重荷」として捉えた方がやる気も出る、という方もいると思います。ここでは、何が正しいかと言いたいわけではありません。

ただ、どんな問題に対しても当事者意識を持つことがすべての始まりであり、「重荷」という捉え方がその邪魔をするのであれば、心構えを変えてみるのも良いのかも知れません。

さて、皆さんは今、何の当事者でしょうか?

 

 

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