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ストーリーとしての競争戦略-優れた戦略の条件(楠木 建著 2010年 東洋経済新報社)~優れた戦略家こそストーリーを大事にする~

 

こんにちは、荻原です。

本日は、一橋大学大学院の教授である楠木 建氏が書かれた、「ストーリーとしての競争戦略」をご紹介したいと思います。

本書は、2010年に出版されたことを皮切りに幾度となく再販され、経営書としては異例の25万部を売り上げた超人気ロングセラーです。

そんな本書では、現代に生きる営業担当者が持つべき必須スキルである「戦略構築力」を底上げしてくれるデザインになっています。

  • 良い戦略の立て方が分からない
  • 優れた戦略を立て、効率よく成果を上げたい
  • 自身の市場価値を今まで以上に高めたい

こんな方に特におすすめの一冊となっています。

500ページと比較的ボリューミーな本書ではありますが、それだけにとても読み応えのある一冊となっております。

本記事では、私が独断と偏見で選んだ特に営業担当者が知っておくべき内容の一部をご紹介します。

目次

    1. 戦略が持つ重要性

    「戦略」と聞くと経営者などの上位職層の人が扱う事柄というイメージが一般的ではないでしょうか。

    実際、辞書で確認しても

    「戦いに勝つための大局的な方法や策略。戦術より上位の概念。」

    という意味を持っていることがわかります。

    そのため、営業担当者には関係のない言葉のように感じる方も少なくないでしょう。

    しかし、実は営業担当者として「戦略を立てる」という能力は必須であるだけでなく、戦略を立てないといけないシーンは多々あります。

    • テレアポで多くのアポイントメントを取得する
    • 二回目以降の商談率を高める
    • 企画書の承認をもらう

    これらは、営業担当者であれば、多くの方が遭遇するシーンであると思います。

    もちろん、テレアポをはじめとする営業活動において、質よりも量を求めることも大切です。ただ、やみくもに電話をかけ続けるだけでは、一向に成果に結びつかない可能性があるということもわかります。

    二回目以降の商談を獲得するためにも、「次回は、○○をお話させてください。」という言葉を放つだけで、次回の商談がセットされることは稀でしょう。

    企画書の承認をもらう際にも、どのような企画書を書けば良いのか?どのような稟議フローなのか?などを把握してから行動に移すべきです。

    これらの行為には、必ず戦略が必要です。この戦略があって、初めて競合他社との競争に勝つことができると言えるのです。

    営業活動を数年行うと、意識せずとも戦略を立てて仕事をするようになります。ただ、そこに優劣はあります。それ故に、競合他社に勝ったり負けたりするわけです。

    では、競合に勝つための「優れた戦略」とは何なのでしょうか。そのことについて考えるヒントが、本書では語られています。

    「優れた戦略とは何であるか?」については次章で確認していきましょう。

    2. 優れた戦略=バカなる戦略

    本書では、一貫して優れた戦略というのを以下のように定義しています。

    思わず人に話したくなるような面白いストーリー。そして、戦略を構成する要素が噛み合い、全体の動きと流れが動画のように見えてくる戦略。(引用)

    では、上記の戦略とは、どのような戦略をさすのでしょうか?

    それは、「バカなる戦略」

    つまり、「バカな!」しかし「なるほど!」と思わせるような戦略です。

    (ちなみに、バカなるは本書ならではの造語になります。)

    具体的には、競争相手が非合理的であると考える要素をあえて戦略に組み込むというものです。

    一見すると非合理だけど、実は非常に合理性のある戦略ということです。

    一般論として、私たち営業担当者が実行しやすい戦略というのは、「合理性を追求した戦略」であると言えます。

    具体的には、

    • 無駄を削ぎ落とした、ロジック全開の企画書
    • これまでに培われたセオリーを意識した戦略立案

    です。

    しかし、上記のような戦略の先に待っているのは、熾烈な価格競争と模倣戦争に他ならないのです。それだけでなく、悲しいことに例えその競争に打ち勝ったとしても得られる利益は少ないことが多い…と本書では語られています。

    次の章では、そんなバカなる戦略を実施して成功した企業である「スターバックス」の事例をご紹介したいと思います。

    3. 事例:スターバックスのバカなる戦略

    皆さんご存知の通り、スターバックスは営業担当者も利用する機会の多い圧倒的な地位を確保している大手コーヒー店です。

    今でこそ有名になっているスターバックスですが、初めて日本に進出してきた頃はかなり辛辣な意見を様々なメディアや株主から言われたそうです。

    なぜなら、スターバックス社が採択した、店舗拡大方針がフランチャイズ方式ではなく、直営店方式であったからです。

    通常、店舗を拡大する際に最も採択されやすい方式は「フランチャイズ方式」です。

    それは、フランチャイズ方式が、もっとも経営側に利益をもたらしやすい構造になっているからです。

    フランチャイズ方式とは、簡単に言えば、店舗の運営を一般人に任せ売上の一部を頂く方式です。

    つまり、お店の看板を貸してあげる代わりに、売上の一部をください。ということです。この手法のメリットは、圧倒的にコストがかからないということです。なぜなら、土地代や商品代などのお店を開店させるために必要な資金は全て借りる側が出す必要があるためです。

    一方、直営店方式は、自社で店舗を運営する方式のことを指します。

    直営店方式の場合、出店先決め、人件費など開店をするのに非常に多くの資金を要してしまうことから、拡大をしようとした際には、利益が出しづらい経営形態と言えます。

    実際、店舗拡大をする非常に多くの会社が採択するのがフランチャイズ方式であることからもその異例さが分かるかと思います。例)セブンイレブンなどのコンビニ、居酒屋、ドトールを始めとした多くのコーヒー店などがその代表例であります。

    しかし、スターバックスは直営店方式を採択したのにも関わらず、現在の圧倒的地位を獲得することに成功しています。

    これは、スターバックスの経営のコンセプトが「サードプレイス」であることに起因しています。

    スターバックスが目指しているサードプレイスとは、簡単に言えば、最高の居心地の提供なのです。

    そのため、場所選びや店舗スタッフ教育を行うことこそが、現在の繁栄につながったと言えるのです。

    もしフランチャイズ方式で店舗拡大してしまっていたら、利益を追求のために店舗オーナーが回転率を高めたりするなどして、このサードプレイスのコンセプトを崩しかねなかったのです。

    これが、一見すると非合理であるが、実は非常に合理性のある戦略ということです。

    つまり、バカなる戦略ということです。

    4. おわりに

    いかがでしたでしょうか。

    バカなる戦略は、合理性のみを追求しているとなかなか辿り着けないです。

    現在、世界で成功している企業の多くが、蓋をあけるとバカなる戦略であったりします。

    本書では、上記で上げたスターバックス以外にも数多くの事例が掲載されていますので、他の具体的事例を知りたい方は、ぜひ本書を手に取っていただけたら幸いです。

    本記事が、少しでも日々の営業活動の一助になれれば幸いです。

    本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒ストーリーとしての競争戦略-優れた戦略の条件(楠木 建著 2010年 東洋経済新報社)

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    ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。

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