ALVAS JOURNAL

人をつくる言葉(大村智著 2016年 毎日新聞出版)~生きる希望をくれる一冊の言葉集~

こんにちは。石井です。

今回は、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智氏が大切にしていた言葉を集めた書籍をご紹介します。

大村氏は、寄生虫によって引き起こされる感染症の治療薬であるイベルメクチンの発見により、ノーベル賞を受賞されました。

この発見により、中南米やアフリカで流行したいた失明を引き起こす病と、リンパ腺の腫れを引き起こす病への薬として使用されています。

本書は、大村氏が大切にしてきた言葉を掲載しています。その多くは、大村氏が作った言葉ではなく過去の偉人たちが残した言葉です。

なぜ、大村氏がそれらを大切にしたのか、その言葉が与えてくれる希望とは何か?これらのことを考えさせてくれる書籍です。

 

目次

    1. 大村智という人物

    以前、「大村智ものがたり」という書籍をご紹介させていただきました。

    詳しくは、こちらをご覧いただきたいのですが、本コラムにおいても大村氏の生い立ちを簡単にご紹介します。

    大村氏は、山梨県の出身です。小さい頃から、自然と共存することが当たり前の環境で育ち、農作物のお手伝いをすることはもちろんのこと、母親の養蚕(ようさん:ガの幼虫であるカイコを育てまゆを作らせ、それを製糸工場に持ち込み、生糸へ加工する産業のこと)に大きな影響を受けたようです。

    その後、地元の山梨大学に進学し、スキーに熱中することになります。

    その中で、「人のまねをしない」という信念を確立していったようです。実際に、書籍からは下記の言葉が残されています。

    人から教えてもらったことだけをやるのではなく、自分で技術を研究することが大事である。人のまねをしても、その人を超えることはできない。

    その後、社会人になった後も、この「人のまねをしない」という信念を持ち続け、果敢にチャレンジを重ねました。

    教師としてキャリアをスタートしましたが、その過程で生徒の学ぶ姿勢に感化され、自らもドイツ語を学んだり東京理科大学大学院に進学したりしました。

    研究者として、微生物の研究をするようになった大村氏は、常にスプーンとビニール袋を持ち歩いていたそうです。その理由は、土の中にいる微生物を研究するためです。

    結果として、「イベルメクチン」という薬を開発することになりましたが、このきっかけになった微生物は静岡県のゴルフ場の近くの土から発見されたようです。

    このように小さな努力を積み重ねることが、世界レベルで社会に貢献していくことになるのですね。

    2. 大切にしていた言葉

    大村氏が大切にしていた言葉をご紹介します。

    本書籍では、数多くの言葉がご紹介されており、「人生」「仕事」「教育」の3つの観点でまとめられています。本コラムでは、それぞれ1つずつご紹介していきます。

    ■その1:人生

    大村氏は、下記の言葉を「人生」において大切にしました。

    世に処するに 一歩を譲るを高しとなす (洪応明 菜根譚より)

    大村氏は、常に謙虚な気持ちでいることを大切にしてきたのでしょう。

    コツコツと努力を重ねることは、決して簡単ではありません。誰しもが、楽な道を探し、近道を進もうとします。だからこそ、このような謙虚な心は大切なのでしょう。

    営業組織においても、大きな目標を達成するために、やらなければならないことの多くは地道なことではないでしょうか。それを謙虚な気持ちでやり続ける…これこそがリーダーとして求められる姿の1つかもしれません。

    ■その2:仕事

    続いて、「仕事」における言葉をご紹介します。

    研究を忘れた金もうけは罪悪である

    金もうけを忘れた研究は寝言である (北里柴三郎)

    この言葉は、北里大学や研究所の創設者である北里柴三郎氏の言葉です。大村氏は、研修者として本組織と関わりがあったこともあり、この言葉をより重要視してきたのでしょう。

    この言葉の真意には、人の役に立つものは「必ず売れる」という前提があり、「売れる」ことは、その利益を再度研究費に充てることができるというものがあります。

    大村氏は、私費を使って研究備品を購入していた頃もあったようです。そのくらい研究費に惜しまず投資する姿勢がありました。

    だからこそ、その研究費を得るためには、役立つものを世に送り出すという意識が強かったのでしょう。

    営業という仕事は、「売る仕事」と思われることも多いはずです。

    確かに、その側面はあります。しかし、その売上は会社の研究開発費に充てられ、さらなる大きな社会貢献の種を作っていると考えてみましょう。

    そうすると、営業の仕事への誇りも出てくるかもしれません。

    ■その3:教育

    最後に、「教育」です。

    教えるということは 共に希望と夢を語ることだ

    この言葉は、大村氏が吉田松陰に影響を受けて作った言葉のようです。

    世の中には、「どのように教育するか」というHow toは出回っていますが、そもそも教育の根本には希望や夢が必要です。そして、師弟でそれらを語り合うことが大切なのでしょう。

    会社は、理念やビジョンの実現を目指し活動しています。その過程で、メンバーそれぞれの希望や夢が叶えられることは、それほど美しいものはありません。

    営業組織においても、売上数値や目標だけの会議ではなく、メンバーの希望や夢に焦点を当てた1on1の実施も大切になるのでしょう。

    3. おわりに

    いかがでしたでしょうか。

    本日は、大村氏の大切にしていた言葉をご紹介しました。世界で活躍する大村氏の言葉集からは、たくさんの希望を得ることができます。

    ノーベル賞という輝かしい称号を得てもなお、謙虚な気持ちで仕事に邁進する大村氏の姿には大変感銘を受けます。目の前の1つ1つの仕事は小さいものかもしれません。

    しかし、それを愚直に進め、少しずつでも前進することはいずれ世界を驚かす仕事になるかもしれません。

    地道なことでもやり遂げる気持ちで、毎日の仕事に励みたいものです。

    本コラムでご紹介した言葉は、本書籍に掲載されているものの中のごく一部です。ぜひ、気になった方は本書をお手に取ってみてください。

     

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    石井 健博

    ブランドマネージャーとして、マーケティングを担当。
    営業・リベラルアーツ・マネジメントなどのコラムを発信中。
    趣味は、読書・英語学習・ラグビー。5歳息子のパパ。

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