ALVAS JOURNAL

坂口安吾全集より青春論(坂口安吾著 1936年 ちくま文庫) ~宮本武蔵からみる変化に柔軟な考え方とは~

こんにちは。阿南です。

今回は、ちくま文庫から発表されている「坂口安吾全集」の中から、「青春論」をお届けします。

坂口安吾と言えば、「堕落論」で有名ですよね。また、太宰治織田作之助などと並び近現代日本文学を代表する1人です。

今回は、「堕落論」ではなく、「青春論」の1節、宮本武蔵にフォーカスして見ていこうと思います。

青春論」は、

  • わが青春
  • 凋落に就いて
  • 宮本武蔵
  • 再びわが青春

この4つから構成されており、3つ目の章から宮本武蔵が登場します。

様々なエピソードを交えて、宮本武蔵の剣術に対する考え方や人生観などを紹介しています。

今回は、その中の1つで都甲太兵衛のエピソードをご紹介します。

 

目次

    1. 宮本武蔵と都甲太兵衛

    晩年、武蔵が仕えていた細川家で「うちの家来の中でお前のメガネにかなうような剣術の極意に達した者がいるか」と聞かれます。

    そこで、武蔵が「一人だけございます」と言い、都甲太兵衛という人物を推奨します。

    実は、この都甲太兵衛という人物・・・は、非常に剣術が下手で、またいつ切られて殺されるのかと考えただけで夜も眠れないという生来の臆病者でした。

    しかし、太兵衛はいつ殺されてもいい覚悟を持てば救われるのだという確信に至り、様々な工夫を凝らして死に対しての恐怖を和らげたというのです。

    武蔵曰く、このいつ殺されてもいいという心構えが武道の極意だというのです。

    その後、太兵衛は江戸で家老になりますがその時不思議な手柄をあげます。

    ある時、見栄っ張りのお殿様が一晩で庭を作って見せると他のお殿様に豪語してしまいます。慌てたお殿様は、都甲太兵衛を呼び出して一晩で庭を作ってくれと頼みます。

    そこで太兵衛は二つ返事で引き受けて、一晩で見事な森を含んだ庭を完成させます。

    この一件について、後に武蔵は、「十智」という書にて下記の言葉を残しています。

    智慧のある者は一から二へ変化する。ところが智慧のないものは、一は常に一だと思い込んでいるから、智慧が一から二へ変化すると噓だと言い、約束が違ったと言って怒る。然しながら場に応じて身を変え、心を変えることは兵法の大切な極意なのだ

    2. 仕事に活かせる考え

    いかがでしたか?

    自身が持ち合わせていない心構えから、自身よりも劣る人材を推挙出来る武蔵の観察眼の鋭さたるや目を見張るものがあると思います。

    また、「智慧のあるものは場に応じて、身も心も変えることができる者だ」、―と断言できるのはこの時代の武士道の考え方からすると真っ向から反対しているようにも見えますが、なかなか理にかなっていると思います。

    なぜならば、当時の剣法では決められた型をそのまま学ぶ形式主義が全盛期で、武蔵のような変化を推奨する考え方は受け入れられなかったからです。

    しかし、武蔵は相手に応じて変化に対応することが兵法の極意と述べ、実際に多くの剣豪を決闘で打ち負かしています。

    ご紹介したエピソードからは、様々なことを仕事に落とし込んで考えることが出来ます。

    1つ目は、実力的にみて若輩者の太兵衛をお殿様に推挙できたことです。

    現代の職場において、本件を考えてみましょう。例えば、職場において「最近入社したメンバーで一番見込みのあるメンバーは誰?」のようなコミュニケーションをしたことや、聞いたご経験はありませんか?

    その際に、曖昧な理由で選ぶのではなく、明確な意図を持ち、推薦する人が持つ特有の強みを考慮して選出してあげることは、とても重要ではないでしょうか。

    これは、マネジメントにおける「メンバーの強みを活かす」というドラッカーの考えにも関連することだと思慮します。

    2つ目は、太兵衛のニーズをくみ取る力です。

    先程ご紹介した太兵衛のエピソードで、太兵衛は見事に一晩で庭を作り上げました。もっとも、庭に埋めた木には根がついていなかったので3日と持たないものだったわけですが…。

    しかし、お殿様としては、一晩で庭さえ作れれば良かったわけです。もっと言えば、庭ができたことで自分のメンツがつぶれないこと、周りの人達に自分の力を誇示出来れば良かったのです。

    この後が無い状況で、太兵衛はそういったお殿様の潜在的なニーズをくみ取ることにも長けていたわけです。

    営業の現場でも、お客様から少しハードルの高い要求や、時には無理難題に近いリクエストをいただくこともあるかもしれません。

    その時に、「お客様がなぜこんなことをおっしゃるのか」、「お客様の依頼の背景にはどんなものが隠れているのか」といったことを思考し、お客様の状況や性格などをもとにもう一歩踏み込んで考えてみると良いかもしれません。

    3つ目は、武蔵の晩年の言葉から読み取れる、変化への対応力です。

    現代社会は、未知のウイルスやAIの進化、複雑な国際情勢など、変化の目まぐるしい激動の時代です。そんな時代で生き残るには変化に対応していかなければなりません。

    個人的な解釈ですが、武蔵の言葉にある「」とは場所だけではなく、「時代」のような時間的側面も含まれていると考えています。

    時代の変化に応じて、考え方や取り組みを変えていかないと、生き残りをかけた勝負には勝てないと読み取ることもできます。

    3. おわりに

    いかがでしたでしょうか?

    今回は、宮本武蔵や都甲太兵衛に焦点を当ててお話していきましたが、この他にもたくさんの人物が登場し、坂口安吾なりの「青春」について独自の見解を述べています。

    また、坂口安吾自身はあまり宮本武蔵を評価していないのも本書の味わい深い点だと思います。

    どれも興味深く、味のある作品となっていますので是非手に取っていただければ幸いです。

     

    本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒青春論

    〇トップセールスの本棚とは?
    【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
    営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
    ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。

    阿南 康平

    大学卒業後、システム開発を行うIT系ベンチャー企業に入社。個人事業主や中小企業の経営者に対しての新規開拓営業として、約2年従事。大手企業に対しての営業にチャレンジしたいという思いから、当社の理念に共感して2024年1月に入社。

    RELATED ARTICLES よく読まれている記事

    営業の本質が問われる
    時代の到来。
    熱い気持ちを輸送経済新聞
    「いま、生き残るための営業術(全12回)」で表現しました。