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ノルマは逆効果 なぜあの組織のメンバーは自ら動けるのか(藤田勝利著 2019年 太田出版)~ノルマに依存しないマインドとは~

こんにちは。阿南です。
今回は、藤田勝利氏の「ノルマは逆効果 なぜあの組織のメンバーは自ら動けるのか」をお届けします。

本書は、「ノルマ」的な方法に頼らずに、社員のモチベーションを高め、高い業績を上げている会社や組織が行っている「マネジメント」の中から、共通原則を見出し、誰もが実践出来るように説明しています。

今回、この本を読もうと思った背景には、近年起こる企業の不祥事があります。

具体的には、徹底的なノルマ管理や行き過ぎた数字管理によって、隠蔽や改ざんなど様々な事案につながっています。

本来的な意味において、企業とは単なるお金儲けが主体ではなく、理念やビジョンの実現を目指し、ビジネスを通して社会に貢献することに意義があると言えます。

では、なぜ企業は収益重視の体質に偏り、結果的にはノルマ偏重の管理になってしまったのか?この問いは大変興味深いものです。

また、そのような管理から脱却するためにはどのように行動すれば良いのでしょうか?

これらの問いを、本書を通して考え、かつ読み解いていこうと思います。

 

目次

    1. ノルマとは


    いきなりですが、皆さんは「ノルマ」という言葉の意味を正確に理解していますか?
    (ちなみに、私はできていませんでした笑)

    ノルマとは

    「半強制的に与えられた労働の基準量」(Wikipediaより)

    という意味です。そして、

    「大抵の場合、時間的強制も付与される。」(Wikipediaより)

    とも書かれています。

    第二次世界大戦以後、シベリアに抑留された兵士たちによって、ノルマという言葉が日本に入ってきました。

    シベリアでは、「必要最低限こなさなければいけない労働量」という意味でこの言葉が使われ始めました。

    しかし、時代の変化によってノルマという言葉がもつニュアンスも変遷してきたように思われます。

    本書では、「本人の意思から離れ、他者から与えられた、本人が主体的に同意していない業績目標値」と定義しています。

    2. ノルマからの脱却


    本書の第3章では、「ノルマのない会社に共通する習慣」を7つあげています。

    • 習慣1 「どこで勝負するのか」が明確
    • 習慣2 「結果」よりも「結果を生む習慣」を重視する
    • 習慣3 「数字」ではなく「顧客」「ファン」を作る
    • 習慣4 コミュニケーションは「情報伝達」ではなく「意思疎通」を目的としている
    • 習慣5 「上下関係」ではなく「信頼関係」で動いている
    • 習慣6 「組織の成長」の前に「人の成長」に徹底してこだわる
    • 習慣7 マネージャーの仕事は「管理」ではなく「動機づけ」である

    上記の中から1つピックアップして考えていきたいと思います。

    習慣3の「数字」ではなく「顧客」「ファン」を作るという視点を見ていきたいと思います。

    • 企業はお客様のためにある
    • お客様に貢献することが大切である
    • お客様に喜ばれる企業になろう

    これらの言葉は、企業が目指す姿を現す典型的なものです。しかし、この言葉はどの程度、現実的と言えるでしょうか。

    実際のところ、多くの企業では、「顧客」が求めている価値を生み出すことよりも、目先の数字を達成することが重要視されているように感じます。

    皆さんは、この現状をどのように考え、思いますか?

    ここで一度、マネジメントの父と呼ばれたドラッカーの言葉を見てみましょう。ドラッカーによると、企業の本来の役割とは「顧客の創造」※であるとしています。ここでいう顧客とは「得意先、ひいきにしてくれるお客さん、ファン」のような意味で使われています。

    要するに、大切なことは「どうすれば、自社の商品やサービスの大ファンになってくれる顧客を増やせるか」という問いを常に持っておくことでしょう。

    つまり、ノルマに頼らない企業で実践されているのは、数字ありきの事業運営ではなく、喜んで購入してくれる顧客(ファン)を生み出すことを第一に行動しているわけです。

    ※「顧客の創造」については、以下のコラムでも触れています。是非、参考にしてください。
    【エッセンシャル版】マネジメント基本と原則②(ダイヤモンド社 2001年 P・F・ドラッカー著 上田惇生編訳)~企業の目的とは?~

    3. ノルマに頼らないマネジメント

    次にノルマに頼らないマネジメントを見ていきたいと思います。

    本書では、藤田氏が考える「良い会社」を定義しています。

    • 高収益な事業を持っている(組織の観点)
    • 社員が友人を誘いたくなるような働きがい、働きやすさがある(人の観点)
    • 社会から好かれている、応援されている(社会の観点)

    その上で、ノルマに頼らずに「良い会社」を目指すためのマネジメント原則を6つ挙げています。

    • 原則1 「使命、ミッション」に立ち返る(人、会社)
    • 原則2 「廃棄」から始める(組織、人)
    • 原則3 「マネージャー」を変える(組織、人)
    • 原則4 「顧客」の視点から、創りなおしてみる(社会、組織)
    • 原則5 「人が自ら育つ」組織をつくる(人、組織)
    • 原則6 「戦略的に正しいことも」よりも「人のモチベーション」を優先する(人)

    この原則の中で、自分がマネジメント研修を提供する側として、最も大切にしているのは原則6の「戦略的に正しいこと」よりも「人のモチベーション」を優先する(人)です。

    人は、理屈では分かっていても、なかなか行動に移すのが難しい生き物です。
    それが論理的・戦略的に正しいと思っていても、社員自らがやってみたい、挑戦してみたい、と思わない限り、実現しないということです。

    個人的には、「モチベーションの源泉」まで理解しておくと、何のために頑張るのかがより解像度が上がると考えています。

    例えば、「お金を稼ぎたい」という気持ちがモチベーションになっていたとしても、その源泉は人それぞれだと思います。

    稼いだお金で海外旅行に行きたい、稼いでいる自分が好きなど、十人十色だと思います。

    この場合、前者のような考え方を持っている社員に対しては、お金と休暇の観点からモチベーションに遡及していくのが効果的ですし、反対に後者のようなタイプは稼いでいる自身の姿を想像させて、動機づけを行うのが効果的だと思います。

    4. おわりに

    いかがでしたでしょうか?
    私は、本書を読んでノルマからの脱却よりも、会社とはどのような存在なのか、また、社会にどのような貢献ができるのかを改めて考えることが出来ました。

    また、ノルマから派生してマネジメントの在り方に関しても学ぶ事ができます。

    もし、今ノルマでがんじがらめになっていて、仕事の価値を見失っていらっしゃる方は是非本書を手にとっていただければ幸いです。

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    阿南 康平

    大学卒業後、システム開発を行うIT系ベンチャー企業に入社。個人事業主や中小企業の経営者に対しての新規開拓営業として、約2年従事。大手企業に対しての営業にチャレンジしたいという思いから、当社の理念に共感して2024年1月に入社。

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