空気の研究(山本七平著 1977年 文藝春秋社)~あえて水を差す勇気を持て〜
こんにちは。荻原です。
今回も引き続き、トップセールスの本棚をインタビュー形式でお届けしていきます。本日、インタビューに答えてくださったのは、30年以上の営業経験をお持ちのマネージャー・岡田さんです。
日本人特有の「空気」という概念を深く考察した名著をご紹介頂きました。
是非、ご一読ください。
目次
1. 「空気の研究」はどんな書籍?
荻原:本日は、よろしくお願いします。はじめに、岡田さんの至高の一冊について簡単にご紹介お願いします。
岡田:はい、私がご紹介したいのは『空気の研究』という本です。1977年に山本七平さんによって書かれた本になります。
この本は発表から約50年近く経っているのですが、今でもテレビ番組などで紹介されることがある書籍です。ただ、この本は非常に難解な表現が多いです。
例えば・・・
「…臨在感的に把握し、その把握を絶対化することによって、空気の支配が確立し、それが全日本人を拘束しているわけである。… 」(山本七平、「空気」の研究、電子書籍 文春文庫(新装版)、2018、366p、P89)
といった具合です。
そのため、読むのにはかなりの根気が必要かと思います。私は辞書片手に悪戦苦闘しながら読み切りました(笑)
何度もページをさかのぼったり、辞書を引いたり、認識の違いが無いか頭の中で身近な事例に置き換えたりを繰り返していました。
荻原:確かに、非常に難解な書籍の雰囲気を感じます。ちなみに「先の文章」はどういう意味なのですか?
岡田:耳慣れない言葉が多い文章ですよね。
例えば、この文章をChatGPTなどで分かり易く表現してもらうと、
「日本人は、その場の雰囲気や空気を非常に重要視しており、それを敏感に感じ取るだけでなく、まるで絶対的なルールのように受け入れています。この「空気」がその場の行動や決定を支配し、人々はその空気に従って行動します。その結果、個人の意見や行動が空気に逆らうことは難しくなり、暗黙の了解や集団の期待が全体に大きな影響を与える文化が形成されています。この空気の支配は、日本社会全体に広がり、生活の中の多くの場面で強く機能しているのです。」
というように表示されます。これならなんとなく意味合いが伝わってきますよね。
荻原:なるほど。これだけの情報量があの一文に入っているのですね。「空気の研究」恐れ入りました。
2. 「空気の研究」との出会い
荻原:本書とはどのようにして出会われたのですか?
岡田:私が本書を知ったのは20代の頃でした。1990年代ですね。私はもともと歴史関係の書籍を読むのが好きだったので、様々な書籍を読んでいたのですが、いくつかの書籍にこの本の話が出てくることがありました。
「山本七平氏が書かれているように、この空気が…」といった感じで引用されているのを見て、「なんだろう、その空気とは?」と思って読んでみたのがきっかけです。最初は本当に難しくて、辞書を引きまくって読んだ覚えがあります。
荻原:確かに!前回のインタビューでもお話ししていただいておりましたね。私もそうやって新しい書籍に出会うことが多いので、共感します!
3. そもそも空気とは?
荻原:より詳細に本書について教えてください!
岡田:もちろんです。この本で述べられている「空気」というのは、日常のビジネスシーンでよく見かける現象なんです。
例えば、会社の会議でこんな場面がよくあります。
上司が「今年はこれでいくぞ」と言った時に、誰も反対していないけれど、心の中では「これ大丈夫かな?」と思っている。でも、この時に「いや、これどうなんですかね?」と言うと「雰囲気が悪くなるかな?」、「上司に失礼かな?」という場の雰囲気=いわゆるその場の【空気】が、みんなを黙らせているわけです。
そして、最も問題なのは、このような状況で誰も意見を言わないまま、プロジェクトが失敗した場合です。誰も明確に反対しなかったため、責任の所在が曖昧になってしまうんです。「みんなで決めたことだから」という言い訳が通ってしまう。
本書でも説明されているのですが、このような空気が生まれる理由について、例えば、調和を重んじる文化であるとか、相手の意図を察する…忖度する文化であるとか、曖昧さを許容し、時に好む傾向があるなど…日本特有の文化的背景があると言えます。
荻原:そういう場面に出会したこともあるので、すごく刺さりました。
岡田:私もあります。考えさせられますよね。
4. 空気への対抗手段はあるの?
荻原:ここまでの話を聞いていると、争うのが難しいことのように感じますが、対抗手段などはないのでしょうか?
岡田:確かに、一筋縄では行かないのは間違いないと思います。ただ、本書では対策についても書かれていて、その一つが「水を差す」というものです。空気に支配された場所の中で、疑問を投げかけたり、意味のある批評を唱えたりする行動を起こしていくことが大切だと述べられています。
「水を差す」という行動を単に物事の「邪魔をする」と捉えるのではなく、「場の空気を打破して本質的な議論を引き起こす行為」として肯定的に扱っています。
荻原:なるほど。疑問を投げかけることは非常に重要ですよね。
岡田:そうなんです。そのためには、次の点を意識することが重要だと思います。
- まずは事実を知ること
- 複数の観点、視点を持つこと
- その事実を受け入れること
- 現状を自分に都合よく、また好悪で判断せず、ありのまま素直に受け入れること
荻原:確かに非常に大切ですね。
5. 「空気の研究」はどんな人におすすめ?
荻原:本書はどんな人におすすめですか?
岡田:基本的には、日本人全員におすすめです。ただし、本書は表現が非常に難解なので、入門編として『超訳 空気の研究』という本もあります。最初にこちらを読んでから原著に挑戦するのが良いかもしれません。
原著は1977年に書かれたものですが、現代でも通用する内容です。それは良くも悪くも、日本人が持つ「空気を読む」という特質が、半世紀近く経った今でも変わっていないということを示しているのかもしれません。特にグローバル化が進む現代において、この「空気」という特質を自覚し、適切にコントロールしていくことは非常に重要だと考えています。
荻原:それは間違いないですね。私も空気に惑わされずに、目的を意識してあえて水を差せるように意識してみたいと思います。ただ、会議の場で、疑問を投げかけるのは少し勇気がいりそうですね。
岡田:そうですね。でも、最初から大きく水を差す必要はありません。例えば「この方向性で間違いないと思いますが、他に考慮すべき点はないでしょうか?」といった具合に、優しく問いかけるだけでも効果的です。新しい視点が出てきたり、議論が深まったりするきっかけになります。
荻原:確かに、そのような柔らかい言い回しなら挑戦できそうです。
岡田:ぜひ試してみてください。あえて一つでも疑問を投げかけることで、場の空気が変わる瞬間を体験できるはずですよ。その一言が新しいアイデアや議論を生み出すきっかけになることも多いです。
荻原:わかりました!まずは「他に考慮すべき点は?」という問いから始めてみたいと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。
岡田:こちらこそ、ありがとうございました。
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営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
荻原エデル
社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。
岡田 剛幸
大学卒業後、大手小売業での販売営業経験を経た後、大手たばこメーカーに転職。営業・マネジメントに加え営業組織の立ち上げを経験。2022年10月アルヴァスデザインに参画。
趣味は読書。歴史、失敗と人の行動が研究テーマ。好きな言葉は「温故知新」