<トップセールスの本棚>営業の科学(高橋浩一著 2024年 かんき出版)~「購買者の仮面」の裏にある素顔を見抜く~

こんにちは。荻原です。
本日は、TORiX株式会社代表取締役であり、4万人以上の営業を支援してきた高橋浩一氏による『営業の科学 セールスにはびこるムダな努力・根拠なき指導を一掃する』をご紹介します。
「がんばっているのに、なかなか成果が出ない」
営業に携わる方であれば、一度はこのような悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。あるいは、部下やチームメンバーからこうした相談を受けた経験のある方もいるかもしれません。
本書は、営業1万人とお客様1万人、計2万人への大規模調査に基づき、営業における「急所」を科学的に解き明かした一冊です。本記事を通じて、日々の営業活動を見直すきっかけとなる視点をお届けします。
目次
1. 「ガンバリズムの罠」から抜け出すために

営業の現場では、「もっと行動量を増やそう」「とにかく訪問件数を上げよう」といった指導が行われることがあります。
行動量そのものが大切であることは間違いありません。しかし、著者の高橋氏は、方向性の定まらない努力を続けることの危険性を「ガンバリズムの罠」と名づけています。
「ガンバリズムの罠」とは、思考停止のまま行動量だけを増やし、的外れな努力に陥ってしまう現象のことだそうです。特に、マネージャーが「目標達成へのプレッシャー」のような抽象的な指導に依存している組織で起こりやすいと言います。
例えば、受注率が伸び悩んでいるチームに対して「もっと気合を入れろ」「訪問件数を1.5倍にしろ」という指示が出されることがあります。しかし、お客様が本当に求めていることを把握しないまま訪問回数だけを増やしても、成果につながらないケースは少なくありません。
では、どうすればこの罠から抜け出せるのか?
著者は、努力の「量」ではなく、営業の「急所」を押さえることが重要だと述べています。急所を外した状態では、どれほど努力しても報われない。逆に、急所を押さえた努力は、少ない行動量でも大きな成果につながると言います。
そして、その「急所」こそが、次にご紹介する「購買者の仮面」の裏にある素顔、つまりお客様の本音なのです。
2. お客様がつける「購買者の仮面」とは何か

営業活動の中で、お客様から「検討します」「今は忙しいので」「もう少し安くなりませんか」といった反応を受けた経験は、多くの方にあるのではないでしょうか。
著者はこうした表面的な反応を、「購買者の仮面」と呼んでいます。これは、お客様が営業担当者に対してとっさに取る防御的な態度であり、必ずしも本音とは限らないのだそうです。
本書では、代表的な5つの仮面が紹介されています。
1つ目は「はぐらかしの仮面」です。
お客様が質問に対して曖昧な回答をする背景には、情報を開示することへの不安が隠れていると言います。
2つ目は「忙しさの仮面」です。
「今ちょっと忙しくて」という言葉の裏には、「この営業担当者に時間を使う価値があるのか」という本音があるケースが少なくないそうです。
3つ目は「いきなりの仮面」です。
初回から「見積もりをください」と言われた場合、お客様が重視しているのは対応のスピードだと著者は指摘しています。
4つ目は「とにかく安くの仮面」です。
価格だけを求めているように見えるお客様も、実は判断基準が明確でないため、価格を頼りにしている場合があります。
5つ目は「検討しますの仮面」です。
「社内で検討します」という言葉の裏には、意思決定に伴う面倒さや不安から現状維持を選びたいという心理が隠れていると言います。
ここで大切なのは、こうした反応を額面どおりに受け取って対応してしまうと、お客様の本音にたどり着けないまま商談が終わってしまうということです。
例えば、「検討します」と言われたときに「わかりました。ご検討よろしくお願いします」と引き下がってしまうと、お客様が実は抱えていた不安に気づくことができません。結果として、案件が自然消滅してしまうこともあるのではないでしょうか。
3. 仮面を外す「武器」を手に入れる

では、どうすれば「購買者の仮面」を外し、お客様の本音に近づくことができるのでしょうか?
著者は、仮面のタイプに応じた「武器」を持つことが大切だと述べています。
例えば、「はぐらかしの仮面」に対しては、質問の前に「枕詞」を添えることが有効だそうです。「差し支えなければ」「ちなみに」といったひと言を添えることで、お客様に「答えなくてもいい」という小さな言い訳を用意する。これにより、お客様が安心して本音を話しやすくなると言います。
「いきなりの仮面」に対しては、「高速ラリー」が有効です。初回の問い合わせに対して、早い段階で仮提案を返すことで、スピード感のある対応を期待するお客様の信頼を勝ち取ることができるそうです。
「とにかく安くの仮面」に対しては、お客様と一緒に判断基準を作るというアプローチが紹介されています。価格以外に何を基準にすべきかを整理し、お客様自身が納得のいく選択をできる状態をつくることが重要だと著者は指摘しています。
「検討しますの仮面」に対しては、「助け舟」の出し方が鍵になります。お客様が意思決定を先送りしている場合、次のステップを具体的に提案することで、前に進むきっかけを提供できると言います。
こうした「武器」を一つひとつ増やしていくことが、ガンバリズムの罠から脱出し、お客様の本音に基づいた提案活動へとつながっていくのです。
本書の特徴は、これらの手法がすべて2万人の調査データに裏付けられている点にあります。個人の成功体験ではなく、データとロジックに基づいた「再現性のある武器」として整理されているため、チーム全体で共有し活用しやすい構成になっています。
4. おわりに

いかがでしたでしょうか。
『営業の科学』は、「がんばっているのに成果が出ない」という悩みに対して、精神論ではなく科学的なアプローチで答えを示してくれる一冊です。
お客様の表面的な反応に振り回されるのではなく、その裏にある本音に目を向けること。そして、本音に気づくための「武器」を一つずつ増やしていくこと。この積み重ねが、営業活動の質を大きく変えてくれるのかもしれません。
「がんばり方を変えてみよう」と思える小さな気づきを、ぜひ明日の商談から試してみてはいかがでしょうか。
本記事が、日々の営業活動を見つめ直し、新たな打ち手を見つけるきっかけになれば幸いです。
本日ご紹介した本のAmazonリンクはこちら⇒営業の科学(高橋浩一著 2024年 かんき出版)
【毎週月曜日配信】営業担当者なら読んでおきたい一冊を、毎週厳選してご紹介しています。
営業スキルに直結するものから、視野を広げてくれるものまで幅広くセレクト。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
荻原エデル
社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。

