<トップセールスの本棚>ドリルを売るには穴を売れ(佐藤義典著 2006年 青春出版社)~お客様が本当に「買っている」ものは何か~

こんにちは。荻原です。
本日は、マーケティングコンサルタントである佐藤義典氏による『』をご紹介します。
著者の佐藤氏は、早稲田大学を卒業後、NTTで営業やマーケティングに携わり、その後アメリカの大学でMBAを取得された、マーケティングの専門家です。
タイトルにある「ドリルを売るには穴を売れ」という言葉を、皆さんは聞いたことがあるでしょうか。
これは、ドリルを買いに来たお客様が本当に欲しいのは、ドリルそのものではなく、ドリルが開ける「穴」である、という考え方を表しています。
本書は、この一言に込められたマーケティングの本質を、初心者にもわかりやすく解き明かしてくれる入門書です。しかも理論を並べるだけでなく、閉店寸前のイタリアンレストランを立て直していく物語が並行して進むため、読み物としても楽しみながら学べる構成になっています。
マーケティングと聞くと、営業担当者にとっては少し縁遠い分野に感じられるかもしれません。しかし本書の内容は、日々の商談やお客様への提案に、そのまま活かせるものばかりです。
本記事を通じて、「売れる」とはどういうことかを、お客様の視点から見つめ直すきっかけとしてお届けします。
目次
1. お客様は「ドリル」ではなく「穴」を買っている

まず、本書がもっとも大切にしている考え方からご紹介します。それは、お客様が買っているのは商品そのものではなく、その商品がもたらす「価値」だ、というものです。本書では、この価値のことを「ベネフィット」と呼んでいます。
例えば、ドリルを買いに来たお客様が本当に求めているのは、ドリルという道具ではありません。そのドリルで開けることのできる「穴」です。さらに言えば、その穴を使って棚を取り付けたい、好きな絵を飾りたいといった、暮らしの中の願いこそが、本当に買いたいものなのです。
これを営業の場面に置き換えてみると、どうでしょうか。
私たちは商談の中で、つい自社商品の機能や性能を一生懸命に説明してしまうことがあります。「この製品はこんなに高性能です」「他社にはないこの機能があります」というように。
もちろん、商品の説明は大切です。ただ、お客様が本当に知りたいのは、その機能によって自分の仕事や生活がどう良くなるのか、という点なのではないでしょうか。
本書では、ベネフィットには大きく分けて二つの側面があると言います。
一つは、便利になる、時間が短縮できるといった「機能的なベネフィット」。
もう一つは、使っていて気分が良い、安心できるといった「情緒的なベネフィット」です。
例えば、ある業務システムを提案するとします。「作業時間が半分になります」と伝えるのは、機能的なベネフィットです。一方で、「手作業に追われるストレスが減り、余裕を持って仕事を進められるようになります」と伝えると、お客様は自分の働き方が変わる様子を思い描きやすくなります。これが情緒的なベネフィットです。
同じ商品でも、お客様にとっての「嬉しさ」に翻訳して伝えることで、提案の伝わり方は大きく変わってきます。お客様は「穴」を買いに来ている。この視点を持つだけで、商談での言葉の選び方が変わってくるのではないでしょうか。
2. 「誰に売るか」を絞る勇気
次に本書が説くのは、「誰に売るのか」を決めることの大切さです。
マーケティングの世界では、これを「セグメンテーション」と「ターゲティング」と呼びます。お客様をいくつかのグループに分け、その中から「この人たちに売る」と狙いを定めることです。
本書の中で印象的なのは、「狙うために絞る」という考え方です。すべての人に好かれようとすると、かえって誰の心にも深く刺さらない。だからこそ、対象を思い切って絞り込むことが、結果的に強い提案につながるのだと言います。
営業の現場でも、同じことが言えるのではないでしょうか。
例えば、新しいサービスを売り出すとき、「どんな会社にも役立ちます」と伝えてしまうと、聞いているお客様は「自分のことだ」とは感じにくいものです。
一方で、「御社のように、少人数で多くの案件を抱えている部署にこそ効果があります」と伝えると、お客様は急に自分ごととして受け止めてくれることがあります。
絞ることは、お客様を減らすことのように思えて、少し怖く感じるかもしれません。
しかし実際には、狙いを定めることで、その相手に響く言葉を選べるようになります。
自分の商品は、どんなお客様の、どんな場面で、もっとも価値を発揮するのか。それを一度立ち止まって考えてみることが、提案の質を高める第一歩になるのかもしれません。
3. 選ばれる理由をつくる三つの軸

三つ目にご紹介するのは、「差別化」という考え方です。お客様に選んでもらうためには、競合と比べて「あなたから買う理由」を用意する必要があります。本書では、その差別化のパターンを大きく三つの軸で整理しています。
一つ目は「手軽軸」です。安い、早い、便利といった、手に入れやすさで選ばれる方向性です。
二つ目は「商品軸」です。品質が高い、性能が優れているといった、商品そのものの良さで選ばれる方向性です。
三つ目は「密着軸」です。お客様一人ひとりに寄り添い、きめ細かく対応することで選ばれる方向性です。
本書では、この三つの軸すべてで一番になろうとするのではなく、どれか一つを選んで磨くことが大切だと言います。
そしてこの考え方は、会社や商品だけでなく、営業担当者自身の提案スタイルにも応用できます。
これは、営業パーソン自身の「選ばれ方」にも当てはまる話ではないでしょうか。
例えば、レスポンスの速さで信頼される人もいれば、商品知識の深さで頼られる人もいます。また、お客様の事情を誰よりも理解し、細やかに動くことで選ばれる人もいます。
大切なのは、自分はどの軸でお客様に価値を届けるのかを、はっきりさせることです。すべてを平均的にこなそうとするよりも、「この人に頼めば安心だ」と思ってもらえる強みを一つ持つこと。それが、競合の多い市場で選ばれ続けるための鍵になるのです。
4. おわりに
いかがでしたでしょうか。
『ドリルを売るには穴を売れ』は、マーケティングの基本を、物語とともに楽しく学べる一冊です。
お客様が買っているのは、商品ではなく価値である。誰に売るのかを絞る。そして、自分が選ばれる理由を一つに定める。本書が伝えるこれらの考え方は、専門的なマーケティング担当者だけでなく、日々お客様と向き合う営業パーソンにとっても、大きなヒントになるのではないでしょうか。
本記事ではご紹介しきれませんでしたが、本書には、レストラン再生の物語の続きや、商品・価格・売り場・販促を整理する「4P」という考え方も丁寧に描かれています。
明日の商談で、「お客様が本当に欲しい『穴』は何だろう」と一度問いかけてみる。その小さな問いが、提案を変える一歩になるのかもしれません。
本記事が、お客様の視点から「売れる」を考え直すきっかけになれば幸いです。
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【毎週月曜日配信】営業担当者なら読んでおきたい一冊を、毎週厳選してご紹介しています。
営業スキルに直結するものから、視野を広げてくれるものまで幅広くセレクト。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。
荻原エデル
社内では、デザイン関係や営業支援をメインで担当しています!最近は動画編集も始めました。
趣味は筋トレ、空手、映画鑑賞、読書。インドア人間です。

