外資系コンサルの知的生産術(山口周著 2015年 光文社新書)営業が知っておきたい、知的生産術のポイント3つ
こんにちは。矢野です。
今回ご紹介する本は、「外資コンサルの知的生産術 プロだけが知る99の心得」(山口周著2015年 光文社新書)です。
本屋のビジネス書コーナーを訪れると、「論理思考」や「仮説思考」に関連した書籍がたくさん並んでいます。
私もこういった本は、たくさん読んできたのですが、「実際にどの程度仕事(知的生産)のクオリティが上がったのか?」と問われると、なかなか自信をもって答えることができません。
なぜならば、書籍を読んだその直後は、「なるほど!そういうことか!」と、何か武器を手に入れた感覚になるのに、実際の仕事となるとなかなかうまく活かせていないと感じることがとても多かったからです。
そのもやもやとした思いをかき消してくれたのが本書です。
実際の仕事で役立ち、今も事あるごとに読み返しているおすすめの一冊です。
1. 知的生産とは何か?
そもそも知的生産とは何でしょうか?
本書には、知的生産とは、
「目的に照らして情報を集め、集めた情報を分けたり組み合わせたりして示唆や洞察を導き出し、それをアウトプットとしてビジュアルやレポート文書にまとめること」
と書かれています。例えば、営業でいうと「お客様に対し、新しい情報を分かりやすく提案書にまとめる」なんていうことは知的生産の代表例ですね。
さて、いざ知的生産性を高めようと思うと、「知的生産の考え方やフレームワーク」を学べば何とかなる!そう思いがちです。しかし、本書を読むと、そもそも「思考の技術」だけ高めても知的生産性は向上しないと書かれています。それよりも、「行動の技術」や「心得」が大切なのだと…。
そこで、今回は、営業で活かせる3つの「心得」をご紹介します。
2. 大切な心得3つ
①【「顧客の知識との差別化」を意識する】
知的生産を行う上でまずやるべきことは、何でしょうか?多くの方が「まずは情報収集だ!」と動き始めます。しかしながら、情報収集よりも前にすべきことがあります。それは「知的生産の戦略策定」です。つまり、どのような知的生産物を生み出すと勝てるのか?見通しをつけるのです。
その為に、最も大切なポイントは「差別化」です。一般に差別化というと「競合との差別化」が意識されがちですが、知的生産においては「顧客が持っている知識との差別化」が一番大きな問題になります。
顧客が何を知っているかを正確に把握せずに提案活動などを行うと、顧客の知識を上塗りするだけで新しさのない提案になってしまい、「頑張ったのに全然評価されなかった。」ということになりかねないのです。
「顧客が持っている知識」と今自身が行おうとしている知的生産はどの程度差別化できているのか?ここを意識して活動しましょう。
②【顧客の期待値をコントロールする】
顧客の期待値をコントロールすることは非常に重要です。
その期待値に影響を及ぼす要素として、本書では以下の3つの要素があげられています。
(1)知的生産物のターゲットとなる顧客
(2)顧客が求めている知的生産物の品質
(3)知的生産にかけられる時間・金・人
知的生産のプロセスに入る前に、この3つの要素のバランスはどうか?意識すると良いでしょう。
そして、求められる品質(2)に対してリソース(3)が十分にないと感じる場合は、安易に前に進まないことも大切です。
「まぁとりあえずはじめてみようか」ということでそのまま前に進めて炎上させてしまうことも多く、結果として顧客からの信頼を失くすきっかけになります。
期待を制約条件の中で満たせないと思ったら、まずは顧客と制約条件の調整について話し合わなければなりません。期待値のズレは、時間が経てば経つほど埋めにくくなるため、なるべく早い段階で期待値の調整が必要不可欠です。
③【わかったふりをしない】
これは営業であればついやってしまうことかもしれませんが、顧客にヒアリングやインタビューをする時は、わかったふりをしてはいけません。
具体的な商談において、相手の話していることに多少なりとも疑問や腑に落ちない点があった場合、これを素通りさせることなく明確化する必要があります。良いヒアリングやインタビューであれば、話し手も立て板に水を流すように話してくれます。そのようなとき、何かわからない用語、あるいは論理的に筋が通らないと感じることがあれば、絶対に曖昧なまま聞き流してはいけません。
本書では、その理由を3つ挙げています。
(1)その後の質問力が低下するから
良い質問というのは、「わからない」からできるものではなく、全く逆で「完璧にわかる」からこそできるものです。実感がある人もいると思いますが、鋭い質問ができる人は、相手と同じバックグラウンドに立っている人といえます。「何がわからないかすら、わからない」という時は質問のしようがありません。話し手の論理展開や用語についていけなくなることを「ロストする」と言いますが、ロストすると質問力が著しく低下します。限りある時間でヒアリングやインタビューを通じて最大限のインプットを得たいと思っている営業としては致命傷になるというわけです。
(2)論理的に筋が通っていないことにコアなネタがあるから
辻褄が合わないことにこそ、実は大きなヒントが隠されています。しかし、私たちはこういったターニングポイントがきても「まぁそんなものなのかな・・・」と考えて素通りしてしまう顕著な傾向があります。特に、その筋の専門家や上位職者に対してヒアリングやインタビューをする際は、常に「自分はその専門家ではない」という引け目がつきまとうためです。この「自分は非専門家だ」という引け目が、質問力を大きく低下させる要因になってしまうのです。それを繰り返してると宝物をみすみす逃すことになるので、スルーせずに確認すべきです。場合によっては、相手にとっては確認のための質問が鬱陶しく感じる可能性もありますが、その場で逃した情報は2度と得られないと考えて聞くべきです。
(3)まとめられないから
結果を資料にまとめて提案書としてアウトプットしようと思っても、論理的に筋が通っていないことが沢山あるとアウトプットできません。結局、自分なりに理屈をこねて想像することになります。、こういった状況になるのであれば、その場で聞いてしまった方が、生産的であるし、いい加減なアウトプットを提示しなくて済むのです。。
3. まとめ
いかがでしたでしょうか。
知的生産を行う上での「心得」に焦点を当てて、特に営業で活かせる3つのポイントをご紹介しました。本書には全部で99の技術が述べられていて、いずれも仕事の経験値を蓄えていくにつれて参照枠が広がっていく一冊です。是非、お役立てください。
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営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。