ALVAS JOURNAL

【第9回】 顧客開拓のポイント ~ いま、生き残るための営業術(輸送経済新聞 2021年3月30日掲載記事)

「企業が存続する上で、インサイトセールスは肝になるぞ」―。

そう私に話してくれた経営者がいる。
東日本大震災が発生した際、彼は自社商品の値上げを余儀なくされた。
すると、顧客から多くの罵声を浴びてしまった。

一方、値上げに快く応じてくれた会社も多く存在したという。
値上げに応じてくれた顧客は例外なく、経営者と良好な関係を築けていたというわけだ。
企業を支えているのは人である以上、「経営層との関係構築」が必要不可欠であることがよく分かる話だ。

いまこの話を思い出したのは他でもない、まさに私たちが新型コロナウイルスと闘っているからだ。震災からはちょうど10年になったが、改めて顧客開拓という切り口で企業の存続について考えてみよう。

売り上げに固執しない

2020年はコロナ禍に見舞われた。
多くの経営者が「昨年度の売り上げを維持できれば御の字」と思ったに違いない。同年4月、私は社内に向けたメッセージとして「いままで私たちと一緒に仕事をしてきた顧客を、何よりも優先して助けよう」と伝えた。

会社の数字を見ると、まずは売り上げのことを考えなければならない状況だった。
ただ、私たちは数字のためだけに営業をしているのではない。
あえて売り上げに固執しないメッセージを出すのは不安でもあるが、信念は貫くつもりだった。

なぜなら私は、「顧客の理念やビジョンの実現」を念頭に置いたインサイトセールスの体現を大切にしていたからだ。
そして1年がたとうとしているいま、この信念は間違っていなかったと感じている。事実、顧客からの信頼は高まり、顧客経営層との関係も強固になっている。
新型コロナが「営業の本質」や「インサイトセールスの意味」を深めてくれたのだ。

大切な3つのこと

もちろん企業としては売り上げがなければ存続できない。
だから、顧客と短期的な目線で商談することを否定はしない。
ただ、私は顧客と中長期的な関係でありたい。
新型コロナのような「苦」があっても、これから訪れるはずの「楽」も共にしたい。
そんな「真のパートナー」と仕事がしたいのだ。

真のパートナーと仕事をすることは、顧客開拓をしていく上での重要な観点とも言える。
では、真のパートナーと出会うために大切にすべきことは何だろうか。
3つ紹介しよう。

1つ目は、理念やビジョンの実現を一番に考えている会社かどうかだ。

これは、表面的な情報だけでは読み取ることが難しい。例えば、ホームページ上であれば採用ページで何よりも「会社の在り方」を大切にしているかを見るとよい。そして、地域密着型かどうか、創業者一族の経営かどうかを調べる。さらに、実際に訪問した際に話を聞いて判断していくことになる。

2つ目は、情熱的な経営層や管理職層がいるかどうかだ。

理念やビジョンは、中長期的な視野でつくられていることが多い。
そのため、例えば任期が迫っている経営層は、そもそも理念やビジョンを最優先にしていない可能性がある。
一方、会社の進む方向性と自身のやりたいことが合致している管理職層とは、とても良い関係性を築ける可能性がある。

3つ目は、顧客のポテンシャルだ。

顧客層が拡大する可能性が高い場合、ビジネスは中長期的に拡大する。そうなるとその企業は、社会に認められ、社会から求められているとも言える。

インサイトセールスとは、単に売り上げを上げるためのスキルではない。
人の生き方に寄り添い、顧客と共に良い社会をつくっていく生き方なのだ。

代表取締役 CVO
早稲田大学大学院理工学研究科終了後、株式会社ファンケルに入社。
その後、30歳を節目に営業の世界に飛び込み、多くの会社の教育支援に携わる。
2013年(株)アルヴァスデザイン設立。著書に「実践!インサイトセールス(プレジデント社)」。

RELATED ARTICLES よく読まれている記事

営業の本質が問われる
時代の到来。
熱い気持ちを輸送経済新聞
「いま、生き残るための営業術(全12回)」で表現しました。