代表的日本人~二宮尊徳編~(内村鑑三 2012年 致知出版社) 道徳心を真ん中にすえた経済改革の実行者
こんにちは。石井です。
今回は、キリスト教の思想家である内村鑑三の著作である「代表的な日本人」の第三弾として、「二宮尊徳編」をお伝えします。
二宮尊徳は、二宮金次郎のことです。薪をかついで読書をしている二宮金次郎の像は、全国に多数あるため、目にした方も多いはずです。
二宮尊徳は、道徳心に重きを置き、農地を改革していきました。自ら率先して動く姿勢からは、多くのことを学び取れます。
1. 二宮尊徳という人物
二宮金次郎、のちの尊徳が生まれたのは、1787年のことです。16歳で孤児になり、二人の弟とも離れ離れになり、一人で父方の叔父の家に移り住むことになります。
尊徳は、昼は働き、夜は読書をする生活を叔父の家でしていました。しかし、叔父から「油がもったいない!」という理由を突き付けられ、読書をやめさせられます。
当時、夜に読書をするためには、光が必要です。そのために、油を燃やし明るくしていたのです。しかし、裕福でもない叔父の家では、油を節約するために読書をやめざるを得ませんでした。
そこで尊徳は、自分のお金で油を買うことができるようになるまで、読書をやめて働くことにしました。一生懸命働いて手にしたお金で油を買い、尊徳も読書の時間を作ることができるようになりました。
しかし、また叔父から「お前のことを養っているのだから、お前の時間はない。」ということを言われ、またしても読書をやめざるを得なくなりました。
そこで尊徳は、「家で使う薪を野山に取りに行くときにだけ、読書をしよう」と決めたのです。二宮金次郎像では、薪を担いで読書をしていますが、以上のようなストーリーがあるのです。
2. 道徳的な経済改革
さて、尊徳はどのようなことを成し遂げたのでしょうか。
まず、注目すべきは農地の改革です。財政に苦しみ、飢餓におそわれている農地を改革することが尊徳のミッションだったのです。
「他人に対する思いやり」を養うことができれば、貧しい農民も平穏な暮らしをすることができると信じ、道徳心に重点を置いた改革をします。そして注目すべきは、尊徳の行動です。
まず、自分の故郷を離れ、自分の家を犠牲にすることから始めたのです。これこそが、背水の陣とも言えるべきことです。
また、農地改革の際には、農民に「働く動機が誠実かどうか」を徹底的に見定めました。本著によると、働き手の中に一人前の仕事もできない老人がいたそうですが、この老人は誰もやりたがらない「根堀り」という仕事に前向きに取り組み、休むことなく働き続けたそうです。
これを見た尊徳は、この老人を一番に評価し、対価を与えたそうです。
このストーリーからもわかるように、尊徳が大切にしたことは「徳」であり、不純な動機による仕事は一切排除しました。
3. 人のために生きる
尊徳は、数々の農地改革により多額の資金を手にしました。
しかし、お金を手にした尊徳は、以前と変わることなく、人のために尽くす人生を送ることになります。
困った人がいたら率先して助け、農業器具を与えたり、アドバイスを施したりしました。これは、まさに尊徳の「徳」を表すエピソードです。
尊徳は、
「不正になした富は本当の富ではない」
という言葉を残しています。自ら、誠実に得た富は、また誠実に生きる人々の助けに使うということが、尊徳の一貫した思いなのでしょう。
4. 営業担当者が得られる教訓
まず、私たち営業担当者は、売上という経済的な指標を目標にせず、「誰のために」「どのような貢献をするか」ということに焦点を当てるべきだと思います。
売上を無視しようということではありません。売上はあくまで営業活動における結果です。大切なことは、誠実に仕事をして、お客様に貢献をすることです。
現在の営業組織の多くでは、「ノルマ」という数値目標が存在し、これに偏重したマネジメントが行われています。会社を経営するためにKGIやKPIという目標数値管理は必要である一方、過大な「ノルマ」に追われ数字の達成が目的化しているケースが多々あります。
その結果、不正とまではいかずとも、誠実な心が欠けた営業活動になってしまうということもあるのではないでしょうか。
5. おわりに
いかがでしたでしょうか。
本日は、二宮尊徳編ということで、道徳心に重きを置いた経済の話をしました。
私たちは、株式会社として営業活動をしているため、売上を出すことは大切です。しかし、売上を出すことだけを追いかける営業活動には意味がないということを、本書からも学び取れます。
自ら率先し、「徳」を大切にして生きることこそ、これからの時代を創り上げる営業担当者に求められることなのではないでしょうか。
次回は、中江藤樹編です。
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