ALVAS JOURNAL

立志の作法 成功失敗をいとわず(渋沢栄一著 2010年 国書刊行会)

こんにちは。石井です。

全4回に渡り、渋沢栄一の書籍をご紹介しています。

第一回:国富論 実業と公益

第二回:徳育と実業 錬金に流されず

第三回:立志の作法 成功失敗をいとわず→今回のコラムはこちら!

第四回:先見と行動 時代の風を読む

今回は、第三回として「立志の作法」をお伝えします。

近代日本を創った渋沢栄一は、どのように志を立て仕事にまい進したのでしょうか。また、成功と失敗をいとわない渋沢栄一の心意気とはどのようなものなのでしょうか。

マネジメントの父と呼ばれているピーター・F・ドラッカーは、渋沢栄一のことを尊敬していたことは有名ですが、渋沢栄一に対してはこのような言葉を残しています。

私は、経営の『社会的責任』について論じた歴史的人物の中で、かの偉大な人物の一人である渋沢栄一の右に出るものを知らない。彼は世界のだれよりも早く、経営の本質は“責任”にほかならないということを見抜いていた。

さて、私たちは渋沢栄一から何を学ぶことができるのでしょうか。

 

目次

    1. 渋沢栄一という人物

    日本資本主義の父と言われている渋沢栄一は、1840年に現在の埼玉県で生を受けます。裕福な農家の家系であり、渋沢栄一も若かりし頃は、農業に勤しむことになります。

    その後、渋沢栄一は上京し、一橋家の家臣として武士となりました。そこで、渋沢栄一に大きな影響を与えたのが徳川慶喜(15代将軍)です。

    徳川慶喜が将軍になると、幕臣(将軍を直接支える武士のこと)になります。1867年に開催されたパリ万博では、将軍の代わりに出席し多くのことを学び、日本に持ち帰ることになります。

    帰国後、大蔵省で仕事をし、その後は銀行の設立や多くの株式会社の創設に携わりました。

    驚くべきことは、創設した会社の多くがいまだに存続していることです。

    このような功績が高く評価され、2024年より新一万円札の肖像画となることが決定しています。

    2. 志の立て方

    渋沢栄一は、本書籍において立志における工夫すべきことを書いています。

    まず自分の頭を冷静にして、そのあと自分の長所である部分、短所である部分を精細に比較考察し、最も得意とするところに向かって志を定めるがよい。

    私たちは、誰一人として同じ人はおらず、長所や短所をそれぞれ持ち合わせています。まずは、それらを分析することからスタートするのが良いと渋沢栄一は述べています。

    そして、ポイントとなることは「最も得意とするところに向かって」という記述です。人生は一度しかない、そして限られた時間しかない、そのような中で社会に貢献するためには、自身の強みを活かすことが重要ということなのだと解釈しました。

    この営業という仕事を一生のものとしようと考えている方も、新しく営業という仕事にチャレンジしたいと考えている方も、「自分の得意」を見つめることで、キャリアの道が拓けるかもしれません。

    3. 成敗とは何か

    第二回の「徳育と実業」においても、渋沢栄一の成功と失敗に対する考え方に触れました。

    本書でも、同じようなことが記載されています。

    成功失敗のようなことは、言ってみれば真心込めて物事を成し遂げた人の身に残る糟粕(そうはく)、つまり酒の絞りかすのようなものである。

    これだけの事業を世に残し、一般的には成功者と見られている渋沢栄一ですが、そんな彼が成功に対してこのような捉え方をしているのです。

    また、このような記載もあります。

    成敗を以(もっ)て英雄を論じる勿(なか)れ

    本当の成功とは、「道理に欠けることなく、正義を外れず、国家社会に貢献を与えるとともに自分にも利益がある」ものでなければならない。

    渋沢栄一にとって、成功や失敗というものは、道理にそって生きることと比較して、大変小さなものだったのでしょう。

    私たち営業パーソンも、目の前の成功や失敗に固執しすぎることなく、「その仕事が道理にかなっているか」「本当に世の中に貢献できるものなのか」ということを考えることが大事なのかもしれません。

    4. おわりに

    いかがでしたでしょうか。

    本日は、渋沢栄一の「立志の作法」をお伝えしました。

    これだけの事業を成功させてきた渋沢栄一ですが、彼の中で成功や失敗は「道理」よりも小さいものだったのでしょう。

    つまり、現世における成功や失敗よりも、もっと大事なことがあるというメッセージです。

    一貫して、社会に貢献することに重点を置き、公利公益を大切にした人物が渋沢栄一です。私利私欲ではなく、常に社会のことを考え抜いた結果、現在でも多くの事業が継承されているのです。

    私たち営業パーソンも、志を立てる際には、渋沢栄一が残したメッセージがヒントになるかもしれません。

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    石井 健博

    ブランドマネージャーとして、マーケティングを担当。
    営業・リベラルアーツ・マネジメントなどのコラムを発信中。
    趣味は、読書・英語学習・ラグビー。5歳息子のパパ。

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