【第3回開催レポート】ドラッカーに学ぶ「人と組織のマネジメント対話会」
「廃棄」から始まる、新しい価値のつくり方
〜イノベーション編〜
本レポートは、全4回シリーズでお届けしている「人と組織のマネジメント対話会」の第3回(イノベーション編)の開催レポートです。
第1回目、第2回目の様子は、こちらの記事でご紹介しています。
▼第1回「ITとコミュニケーション編」のレポートはこちら
https://alvas-design.co.jp/column/16469/
▼第2回「マーケティング編」のレポートはこちら
https://alvas-design.co.jp/column/16702/
人と組織のマネジメントには、誰にでも当てはまる唯一の正解があるわけではありません。
だからこそアルヴァスデザインでは、異なる業種や立場の方々が経験や課題を持ち寄り、対話を通じて自社のマネジメントを問い直す、全4回の「人と組織のマネジメント対話会」を開催しています。
本対話会のコンテンツは、PROJECT INITIATIVE株式会社 代表取締役の藤田勝利さんにご監修いただき、ドラッカーのマネジメントに関する考え方を手がかりに設計しました。
2026年9月3日、その第3回となる「イノベーション編」を開催しました。当日は、お客様11名にご参加いただき、3つのグループに分かれて対話を深めました。当日は社内メンバーが各テーブルに2名ずつ加わり、弊社代表取締役CVOの高橋研も、ファシリテーターとして対話に伴走しました。
マーケティングとイノベーションは、顧客創造の両輪である

第1回は「ITとコミュニケーション」、第2回は「マーケティング」をテーマに対話を重ねてきた本シリーズ。第3回となる今回のテーマは、「イノベーション」です。冒頭、高橋からはシリーズを通じて繰り返し紹介されている、こんな話がありました。
「マネジメントにおいて重要なテーマは7つあり、それらは切り離せず、互いに影響し合っています」。セルフマネジメント、組織とチームマネジメントの目的、ITとコミュニケーション、会計とマネジメント、そしてマーケティングとイノベーション。今回はそのうちの「イノベーション」を扱う回です。
続けて紹介されたのが、ドラッカーのこんな言葉です。
「企業の目的は顧客の創造であり、それを実現するためのエンジンがマーケティングとイノベーションである」。
前回のマーケティング編が「顧客にとっての真の価値を探求する」機能だとすれば、イノベーションは「顧客にとっての新しい価値や満足を創り出す」機能です。顧客創造というひとつのエンジンを動かす、いわば両輪。マーケティングで見えてきた「顧客は誰か」「価値は何か」という問いの先に、今度は「その価値をどう新しく生み出すか」を考えていく回だと位置づけられました。
日常に隠れた『イノベーションの種』を探す

本編に先立つ「イノベーションとは何か」という問いかけに、参加者からは身近な商品やモノを例にした発表が相次ぎました。ある参加者からは、行きつけの居酒屋で出会った「焼き鳥のおまかせ串」の話が紹介されました。通常なら一本の串に同じ具材が並ぶところを、あえて5種類の具材を刺し、取り分けの際にお客様同士が揉めないよう工夫している。そんな小さな発見に、会場からは驚きの声が上がりました。ほかにも「フリクションボールペンって、ちょっと前まではなかったですよね」という声や、アルヴァスデザインの会場にある六角形のテーブルを挙げる参加者も。四角いテーブルなら4人までのところ、六角形なら6人が向かい合って座れ、対話がしやすくなる。身近な工夫の中にも、イノベーションの種は隠れていることを実感させる時間になりました。
続いて行われたのは、9つの点を4本の直線だけで一筆書きに繋ぐ、ちょっとしたミニワークです。
答えを知っている参加者がいる一方、大半の方は真剣に悩み、すぐに解けた方はいませんでした。答え合わせのあとファシリテーターの高橋が語ったのは、「普段からイノベーションの入り口を探そうとしていなければ、いきなり渡されても難しい」という気づきです。まさに、この日のテーマを象徴するひとことでした。
ここで紹介されたのが、藤田勝利さんの著書からの一節です。「イノベーションとは、一部の天才のひらめきやギャンブルではない。それは体系であり、仕事である。だれでも学び、身につけることができる」。
イノベーションを特別な才能の産物ではなく、変化をチャンスとして捉え、顧客にとっての新しい価値や満足を生み出す活動として捉え直す。理論パートを締めくくる言葉でした。
『進捗確認』で終わっていないか。見過ごされていた機会

イノベーション前編の中心となったのは、一本のショートドラマです。
営業部の上司が、部下から商談の進捗報告を受ける場面が描かれます。部下は、提案しようとしている商品のことや、お客様が他社の事例に関心を寄せていたことまで、丁寧に報告します。しかし上司は「そうか、そうか」と相槌を打つだけで、それ以上踏み込むことなく「その調子で頑張ろう」と会話を締めくくってしまいます。実はこの部下たちの気づきを重ね合わせれば、新しい価値提案につながるヒントが隠れていたにもかかわらず、上司は進捗確認に終始し、イノベーションの芽を摘んでしまっていた、という内容でした。
動画を見た参加者からは、さまざまな角度からの声が上がりました。「上司が違和感に気づけること」と「部下が言いやすい空気をつくること」、両方が必要だという意見が複数のグループから聞かれました。
営業という仕事には、失敗を恐れるあまり優先事項だけに目が向いてしまう傾向があるのではないか、また、「これ、面白そうですね」というお客様の何気ないひとことを、上司が部下から引き出せるかどうかが鍵になる、という声が上がりました。
さらに、この動画が実は「フィードバックの仕方」の教材のようにも見える、という声も上がりました。
上司が自分の意見を押し通し、部下の提案をそのまま後押ししてしまっている。その視点で見返すと、イノベーションという看板がなくても、私たちは日常の業務の中で同じような機会損失をしているのかもしれないという気づきです。
当日紹介された「イノベーションの機会につながる7つの変化の種」(予期せぬ成功・失敗、不一致やギャップ、産業構造の変化など)のうち、この動画にはそのいくつもが見逃されていたことが、あとの解説で明かされます。
さらに、対話の中では、自社の実践例を共有する参加者もいました。
営業成績にあらかじめ基準値を設け、そこから大きく超過したり下振れしたりしたときにこそ「なぜ?」を問う仕組みをつくっている、という事例。
また、成功談は共有したがるのに失敗談は隠したがるという傾向に対して、あえて失敗を共有するプレゼン大会を開いている、という工夫も紹介されました。「予期せぬ成功・失敗を見つけやすくする仕組みをつくる」というマネージャーの役割について、他社の実践から学び合う、貴重な時間になりました。
「廃棄」という、イノベーションの第一歩

休憩をはさんだ後編は、大きく映し出された一枚のスライドから始まりました。
「廃棄することが、イノベーションの第一歩」。
会場のあちこちで、参加者がメモを取る手が止まらない様子が見られました。判断の軸として紹介されたのが、ドラッカーのこんな言葉です。「あらゆる種類の活動、製品、工程、市場について、『もし今日それを行っていなかったとして、改めて行うか』を問わなければならない」。
今日それをやっていなかったとして、明日から改めて始めるか。その問いに「イエス」と言えないなら、それは手放してよいものかもしれない、という考え方です。
前編のドラマには、実は「OK版」も用意されていました(当日は二次元コードから、各自が視聴する形式で紹介されました)。上司が部下の「想定外の相談」を偶然で片づけず、背景まで掘り下げて新しい顧客課題を発見する、見逃さなかった場合の姿です。
この解説をきっかけに、対話は「予期せぬ成功や失敗を見つけやすくする仕組みをつくるなら、どんなアイデアがあるか」という問いへと進みます。
「リーダー自身が失敗談を語ることが、部下の心理的安全性につながるのではないか」という意見も生まれました。ある参加者からは、前回のマーケティング編に参加していなかったにもかかわらず、「お客様になぜ買い続けてくれているのか、直接聞いてみる」という、前回のキーワードそのものを口にする場面もありました。
マーケティングとイノベーションは、企業が顧客価値を生み出すための「両手」であること。回を重ねるごとに、そのつながりが参加者自身の言葉で語られていく様子がうかがえました。
続いて「何かを捨てることで、自社・自部署の魅力がより際立ち、イノベーションを加速できるとしたら、何を捨てるか」という問いには、率直な声が次々と上がりました。
「飲み会の回数」を挙げたグループはひときわ盛り上がり、ほかにも「すべての商談に上司が同席することをやめたい」「上司や社長への“無駄な配慮”のための資料づくりをやめたい」といった声が続きました。約束や責任を重んじるタイプの参加者ほど、実は部下から気を遣われている自覚があるという発言もあり、過去や現在の自分たちの働き方を振り返る、内省的な時間になっていました。
理論の締めくくりとして紹介されたのが、営業現場での身近な事例です。
「顧客情報は一覧表で管理する」という前提を捨て、地図の上に顧客を置いてみることで営業機会を発見した例。
「提案書を完成させてから見せる」のではなく、お客様と一緒にオンラインのホワイトボード上でその場でつくってしまう例。そして「練習相手は人でなければならない」という前提を手放し、AIを相手にしたロールプレイで反復練習の時間を増やす例。それぞれ、当たり前を一つ手放すことで、新しい価値が生まれることを示す事例でした。
常識を見直す夜

この日の対話を象徴する言葉として、多くのグループから挙がったのが「常識を見直す」でした。
これまでの回では「これから何をすべきか」という前向きなToDoが語られることが多かった一方、今回は過去や現在の自分たちの仕事のあり方を振り返る、内省的な発言が目立ったといいます。あるグループでは、配布されたチェックリストを片手に、「今の上司が、かつて部下だったころに感じていた“当たり前”」を一つひとつ見直す対話が活発に交わされていました。
最後のリフレクションで語られた「明日から実践したいこと」も、素直な言葉であふれていました。
「イノベーションの種はすでに足元に落ちている。常に意識して行動していきたい」「イノベーションは義務感でやるものではなく、“ワクワクできるか”で考えたい」「部下を圧迫していたかもしれないと反省した。」「上司も部下も楽しみながら向き合うことが、結果としてお客様への価値にもつながっていく。」そんな気づきを、参加者それぞれが持ち帰りました。
参加者の声
対話会終了後のアンケートでは、ご回答いただいた9名のうち7名が5段階評価で最高の「満足」、2名が「やや満足」とご回答いただきました。肯定的な評価(満足・やや満足の合計)は、3回連続で100%です。

「イノベーションの種」は、もう足元に落ちている
第3回の対話から見えてきたのは、イノベーションとは特別な才能によるひらめきではなく、日常のなかにすでに転がっている変化の兆しに気づき、活かしていく営みだということです。予期せぬ成功や失敗、ちょっとした違和感。それらを「単なる出来事」で終わらせず、「機会」として問い直せるかどうか。そして何かを新しく始めるためには、時に何かを手放す勇気も必要になります。
第1回・第2回にすでに参加していた顔ぶれが多かった今回は、回を重ねるごとに参加者同士のつながりが深まっていることを感じさせる一夜でもありました。テーブルをまたいだ会話、懇親会での自然な交流。「対話会」という場そのものが、少しずつ育っている様子がうかがえました。
本対話会は、いよいよ最終回となる「会計とマネジメント編」へと続きます。
【今後の開催スケジュール】
■第4回 会計とマネジメント編
2026年11月5日(木)18:30~21:30
数字を「管理」のためではなく、“意思決定”のためにどう活かすかを学びます。
会場:アルヴァスデザイン新橋ワークショップ会場(新橋駅 徒歩1分)
参加費:2,000円(税込)/回 ※1社につき2名様までご参加いただけます
<このような方におすすめです>
・管理職育成や次世代リーダー育成を担当している人材開発・人事部門の方
・自社の当たり前を見直し、新しい価値づくりのヒントを探している方
・他社のマネジメント事例から、自社の取り組みを見直したい方
・自社のなかだけでは得にくい、新しい視点や問いを求めている方
<参加して持ち帰れること>
・自社のマネジメントを、異なる角度から見直す視点
・他社の管理職や人材開発担当者が実践している工夫
・ドラッカーの原則を手がかりに、自社の“当たり前”を問い直すための視点
・「廃棄」という発想を、自社の現場に落とし込むためのヒント
▼第4回のお申込みはこちら
https://alvas-design.co.jp/information/15730/
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
(執筆:株式会社アルヴァスデザイン)
