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同調圧力の正体(太田 肇著 2021年 PHP研究所)第一回「同調圧力の正体とその原因」

 

こんにちは、高橋です。

本日から、三回に分けて「同調圧力の正体(太田 肇 著2021年PHP研究所)」を元に、営業組織や営業マネジメントについて考えていきたいと思います。

 

早速ですが、皆さんは「同調圧力」という言葉をご存知でしょうか。

恐らく、本コラムをお読みいただいている皆さんは

・どこかで聞いたことがある

・なんとなく意味はわかる

といった答えが返ってくることが多いと思います。

 

私自身は、「同調圧力」という言葉自体を聞いたことはありましたが、営業組織や営業マネジメントというシーンに当てはめて同調圧力という言葉を考えたことはありませんでした。
しかし、本書を読み進めていくと、新型コロナウイルスによる営業職の働き方の変化や営業組織のあり方の変化に大きく関連していることがわかりました。

「同調圧力」というと、少し固い言葉のイメージを持ちますが、本コラムでは、「営業組織」や「営業マネジメント」に置き換えて、日々の仕事を連想しやすい形でお伝えしていきます。

今回は全三回のうち一回目です。

■第一回:同調圧力の正体とその原因←今回のコラムはこちら

■第二回:同調圧力の傾向と対策例

■第三回:営業組織・営業マネジメントの今後

 

1.「同調圧力」とはなにか?

まずは、「同調圧力」の意味を確認してみましょう。

同調圧力とは、

特定のグループで意思決定や合意形成を行う際に、暗黙のうちに多数派の意見が優先され、決議されること

です。

例えば、営業会議を10人で実施していたとします。
その際に、9人が同じ意見を持っていた場合、残る1人は9人の意見に暗黙のうちにあわせ、結果として9人の意見が決議されることです。ポイントは、「暗黙のうちに」です。

 

もう一つ事例をご紹介します。案件の目的について考えてみましょう。
お客様との商談の際に、「本案件は、何のために行うのですか?」という目的をヒアリングすることは営業にとって必須です。
この質問をした際に返ってくる回答の中に、「この案件は、うちの会社では毎年やっているんですよ。」というものがあります。確かに、毎年行う周年行事というものの大切さもわかりますが、周年行事をやること自体が目的ではないはずです。
しかし、組織に長く属していると、案件の目的を意識することよりも、上司や先輩からの指示に従うことが仕事であると「暗黙のうちに」思い込み、目的を問い直すということをしなくなるのです。

では、この同調圧力というものが新型コロナウイルスとどのような関係があるのでしょうか。
同調圧力が起こる原因を探ることで、考察していきたいと思います。

 

2. 同調圧力が加速する1つ目の原因:閉鎖性

本書では、同調圧力が起こる背景には3つの原因があるとしています。
新型コロナウイルスの影響も考慮しつつ、考えてみましょう。

1つ目は、「閉鎖性」です。
「閉鎖性」とは、ある特定のコミュニティのみの人間関係しか持たないことを指します。

新型コロナウイルスが蔓延して以来、私たちの多くがテレワークを経験しました。
依然として、出社は最低限に抑え、自宅で仕事をする方も多いと思います。このような状況では、当然ですが「飲み会」のような親睦会も少なく、新しい人との出会いも減っていきます。

そうなると、私たちはより一層FacebookやLINEなどを使い、特定のコミュニティに属すようになっていきます。
もちろん、これらのコミュニティに属すること自体が悪いことではありません。
しかし、特定のコミュニティに属し続けることは、その中での常識に暗黙のうちに従い続けることになってしまう可能性も秘めています。先ほどお伝えした、「暗黙のうちに」が当てはまります。

営業組織に当てはめてみましょう。
私たちは、組織の中で仕事をすることで、組織の常識や考え方を学びながら成長します。
しかし、それが行き過ぎてしまうと、組織の中だけでまかり通る常識や考え方をするように知らないうちになってしまい、結果として「部分最適」が優先される可能性があるのです。

 

3. 同調圧力が加速する2つ目の原因:同質性

2つ目は、「同質性」です。「同質性」とは、多様性を認めないと言い換えることもできます。
イメージとしては、上意下達で上司と同じ考えを持つことが良しとされるなどが当てはまります。

例えば、このような営業現場です。

上司から、「飛び込み営業で成果を出してこい!」と言われ続けるが、部下メンバーはもっと良い方法があると感じている…しかし、上司の言葉に逆らうこともできずに従うことになる…。

もちろん、「同質化」というものが全て「悪い」というわけてはないと思います。
例えば、上司の経験からわかるリスクや失敗事例は、部下メンバーにとって大きな学びになることもあります。
しかし、営業組織の考え方や営業のやり方などの全てを「同質化」していくことの弊害の方が、今後は大きくなっていくかもしれません。

なぜならば、上司の真似をし続けることだけでは、新しい考え方やアイデアは生まれず、これからの多様性(ダイバーシティ)の富んだ世の中で活躍し続けることは難しいからです。
同質性が高い営業組織は、規律が高く同じ行動をすることは適している反面、「暗黙のうちに」全員が同じ結論に導かれるということになりかねないのです。

 

4. 同調圧力が加速する3つ目の原因:未分化

3つ目は、「未分化」です。「未分化」とは、自分は自分、他人は他人という考え方ができないことを指します。

昨今、「メンバーシップ型」と「ジョブ型」という働き方が話題になっています。
従来の日本は、前者である「メンバーシップ型」です。つまり、一人ひとりの仕事の分担に不明確で、チーム全体で成果を出していくスタイルです。一方、後者である「ジョブ型」は仕事の分担が明確で個人に仕事が割り当てられているイメージです。

私たちの多くは、「メンバーシップ型」で仕事をしています。
例えば、営業メンバーの評価をする際に、営業マネージャーは同じメンバー内の意見や印象を、暗黙のうちに評価に取り入れる可能性があります。

また実際に創出した成果以外にも、組織への忠誠心にフォーカスされて評価が高まる可能性もあります。

このような評価方法自体が悪いことではありませんが、私たちの多くが「暗黙のうちに」メンバーの意見や印象を加味して、評価を下している可能性があるのです。

「未分化」とは、個人の意見を強く持たないことであり、結果としてはチームの多数派の意見が決議されていくことになるのです。

 

5. おわりに

いかがでしたでしょうか。

今回は、同調圧力の意味とその原因について、営業組織の事例を交えて考えてみました。
私は、同調圧力の全てが悪いとは思いません。しかし、コロナ禍で加速する「同調圧力」について見識を高め、「同調圧力」について知った上で営業組織をマネジメントしていくということは、今後とても大切になると思っています。

新型コロナウイルスによって、働き方が大きく変わったいま、営業組織の中で起こっている「同調圧力」について学んでみるのも良いかもしれません。

 

次回は、「第二回:同調圧力の傾向と対策例」をお届けします。

 

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代表取締役 CVO
早稲田大学大学院理工学研究科終了後、株式会社ファンケルに入社。
その後、30歳を節目に営業の世界に飛び込み、多くの会社の教育支援に携わる。
2013年株式会社アルヴァスデザイン設立。2018年「実践!インサイトセールス(プレジデント社)」出版。

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