コーチングの基本②(鈴木義幸著 2011年 日本実業出版社)お客様へのコーチング
こんにちは。伊藤です。
今回ご紹介する本は2021/5/17の記事でも取り上げた「コーチングの基本」です。
前回は、コーチングの基礎知識、部下育成へのコーチングについて紹介しました。
コーチングの原理を理解することができれば、部下育成の場面においても応用することができることを見ていきました。
<トップセールスの本棚>コーチングの基本①(鈴木義幸著 2011年 日本実業出版社)部下育成におけるコーチング
今回は、第二弾として、営業現場ですぐに活用できる「お客様へのコーチング」について考えていきます。
「営業の現場で、お客様をコーチングする」というのは、なかなか聞きなれないフレーズですよね。
しかし、コーチングの手法を活用すると、お客様への理解が深まるだけでなく、お客様から「この営業はなかなか良い質問をしてくれるな!」という信頼を獲得できます。
では、実際に見ていきましょう。
1. お客様をコーチングするとは?
営業担当者がお客様へコーチングをするには、どのようなことに留意すればいいでしょうか?
前回からの復習もかねて、コーチングの定義を再確認していきます。
「コーチングとは、対話を重ねることを通して、クライアントが目標達成に必要なスキルや知識、考え方を備え、行動することを支援するプロセスである。」
と定義されています。
コーチングは、対象者の目的意識を引き出し、最終的には対象者が自ら成長課題に直面する支援をしていき、対象者が目的に向かって、目標達成のために能動的かつ主体的に取り組んでいくことができる方法です。
それでは、前述した通り、今回は「営業目線」でコーチングを考えてみます。
そもそもコーチングというのは「相手の目標達成を支援するコミュニケーション」ですので、相手の目標自体をどう設定してあげるかが非常に重要です。
つまり、営業担当者は「お客様が抱えている課題」に焦点を当てて話を展開する際に、お客様が言う「その課題は目標に沿っているか」という視点を持つことが重要になります。
つまり、お客様の課題だけではなく、「目標」をも正確に捉える必要があります。その為のヒントとなるのが「インサイトセールス」です。
2. お客様の理念やビジョンの実現を支援するインサイトセールス
お客様の課題が目標に沿っているかを捉えるためには、
「お客様が叶えたい理想や目標は何か?」
「現状課題は果たしてその課題なのか?」
などお客様が描いている未来と現状課題に関する質問を繰り返し、お客様が本当に手にしたいと思っていることに辿り着く必要があります。
これらの質問を駆使することで、お客様の理念やビジョンの実現を支援する営業のことを「インサイトセールス」と呼びます。
ここでは、インサイトセールスにおけるいくつか質問例を挙げてみます。
<インサイトセールス質問例>
「目標を達成することで、お客様からどんな声が聞こえたらいいですか?」
「その目標を設定したきっかけはご自身の過去に由来するのですか?」
「本当にその目標を達成することが叶えたいビジョンですか?」
あくまで一例ではありますが、上記のような質問をすることで、お客様が本当に叶えたい未来を描けているか確認をすることができます。
また、このような質問を繰り返していくことは多くの時間がかかる反面、営業担当者がお客様に真の目標やビジョンを気づかせることができたとき、お客様自身の目の色が変わるはずです。双方にとって、より生産性の高い成果を創出することができるでしょう。
つまり、営業ではお客様が求めている「顕在的なニーズ」に着目するのみではなく、双方向の会話によってお客様の「潜在化されたニーズ」を引き出し、目的意識と現状のギャップから生み出される課題を共通認識として捉えることが大切です。
3. お客様との対話では、この3原則を徹底しましょう
本書では、「コーチングの3原則」についても書かれています。コーチングの3原則とは、お客様(コーチングの対象者)との関わり方におけるマインドのことを指します。
「双方向」「継続性」「個別対応」の3つで成り立っています。これはいずれもお客様との対話で役立つ内容です。
一つずつ見ていきましょう。
・双方向
コーチングで大切な双方向を実現するためには、自分の心を開くこと(=自己開示)と、それによって相手の心も開くこと(=返報性)という2つのキーワードを押さえましょう。
商談やヒアリング時に、双方向による会話のキャッチボールができているかがポイントです。
例えば、お客様の無意識的な気づきを戦略的に起こすために、「質問して答える、それに対して質問する……」という双方向のやりとりを繰り返すことが重要です。
心理学的には、自分の心を開くことを「自己開示」といいますが、相手もそれに応じて心を開いてくれるという「返報性の法則」があります。
つまり、相手に心を開いてほしければ、まずは自分の心を開く必要があります。
目標達成をいち早く実現させるためには、できるだけ早く信頼関係を構築し、お客様自身が安心して話ができる環境を作ることが重要です。
・継続性
お客様との信頼関係を構築していく際は、継続的なフォローが必須になってきます。いかなる業務においても、継続をする難しさを感じて仕事をしている方も多いのではないでしょうか。
営業時における「継続的なフォロー」には重要なポイントがあります。それは「約束」をすることです。
ぜひお客様と週1回でもいいので、目標に向かって進んでいるかどうかお客様と話すことを約束し、その時間をとりましょう。双方向(営業担当者とお客様)が決めた目標を見失わず、前進できるように常に関わる姿勢を忘れないためです。
これが、継続的なフォローであり目標にベクトルを向けさせ、お客様の視座を高める大事な要素となります。
・個別対応
人間は、一人ひとり性格や個性が違うように、お客様のパフォーマンスを上げるための関わり方も一人ひとり異なります。
その人のコミュニケーションスタイル、物事の理解のしかた、得意な学習方法、大事にしている価値観、物事の受け止め方、強みなどによって、関わり方はそれぞれ変わってきます。
上記の3原則は、どれか1つが満たされていればいいというものではなく、常に3つすべてを満たしている必要があります。
ここで重要な点をおさえるとするならば、相手に対して「双方向の対話」を意識しながら、質問を通して内容の深堀りをしていきます。
例えば、お客様が自覚していないような思考パターンや物事の捉え方を顕在化させることで、お客様が達成したい目標や解決すべき課題に対して有効なのかどうかを検証していくことも必要です。
また、お客様との関係構築には時間を要するので、「継続的に」コミュニケーションをとりましょう。
そして、最も忘れてはならないことが、対象者の性格や大切にしている価値観は様々で「十人十色」ということです。お客様一人ひとりの特性に合わせて「個別対応」していくことが重要になってきます。
4. まとめ
今回は、営業におけるお客様へのコーチングに関する話をしてきました。
営業担当者は、お客様の心の拠り所である必要があります。お客様から話しやすくなる対話の提供や、お客様の目標やビジョンに寄り添った課題解決をしていくことがより求められていきます。
ぜひこの本を手に取っていただき、皆さんの営業スタンスやスキルの一助になればと思います。
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【毎週月曜日配信】弊社の社員はじめ、トップセールス経験者が厳選した本をご紹介しています。
営業におけるスキルのみならず、幅広い視点から営業を捉えていたりもします。
ぜひ、営業パーソンにとどまらず様々な職種の方にも読んでいただきたいです。