【第7回】 経営層との対話法 ~ いま、生き残るための営業術(輸送経済新聞 2021年3月2日掲載記事)
多くの営業組織が理想に掲げるのは「顧客の経営層と関係構築をしたい」ということ。
だが、現実は「うまく経営層に営業ができない」と嘆きの声を耳にする。
原因は経営層への営業の多くで、手法を間違っていることにある。
対話に焦点を当てた「インサイトセールス」を行えば、成功する可能性を高められる。
インサイトセールスでは、顧客の理念やビジョンを引き出すことがポイントだ。
では、具体的にどのような対話をすればよいのだろうか。
肝となる「経営者との対話法」について解説する。
おじけづかない方法
「うまく経営層に営業ができない」という嘆きの声を深掘りしてみよう。
当社は2014年2月~16年2月、「経営層への営業活動がうまく進まない理由は何か」
をテーマにアンケート調査を行った。
筆者は当初、「忙しいから会ってもらえない」「紹介してもらえない」
といった理由が大半を占めるかと考えていたが、結果は違った。
回答の多くは、
「経営層と話した経験がないから不安」
「経営層との対話の観点が分からない」
といったものだった=グラフ
要するに、営業担当者側がおじけづき経営層に声を掛けていないだけ。
ならば、話は簡単だ。営業担当者側の対話技能を高めて、経営層との対話への自信を高めればよい。
初めて経営層と対話をするときは不安になると思うが、顧客経営層との対話がうまくいく秘けつは「対話の観点」にある=表。
営業の基本は顧客の関心領域に論点を合わせることだが、経営層の関心領域は「経営理念」と「ビジョン」であり、ビジョン実現への「戦略」だ。
商品やサービスが関心の重心でないことを理解しなければならない。
この基本を押さえた上で、実際の対話構成を紹介する。
まず対話の序盤では「経営層の過去」に焦点を当てることを勧めたい。
創業の経緯や創業期の苦労話、過去の輝かしい経歴など、経営層は語りたいことをたくさん抱えている。
それらを傾聴すべきだ。この話はまさに「経営理念」と重なる部分になる。
過去の話をすると、話は自然と現在に近づく。
現在の話は、大きく2つを捉えるべきだ。
それは、経営層にとって
「うまくいっていること」
と
「うまくいっていないこと」
にある。
何を聞き出すのか
多くの営業担当者は、うまくいっていないことを聞くと、すぐに自社の商品やサービスを紹介したくなる。だが、経営層は商品やサービスの話にさほど強い関心がない。
未来にある「ビジョン」に視点をずらしていこう。
最後は、その未来を実現する上で必要な「戦略」を徹底的に傾聴すべきだ。
この流れで経営層と対話ができれば成長が加速するだろう。
経営層が持つ幅広い知識や価値観に触発されるためだ。
経営層から信頼され、営業が楽しくなる。
商品やサービスが中心ではなく、人と人との関係を築くこと。
それが営業の面白さだ。