【エッセンシャル版】マネジメント基本と原則⑩(ダイヤモンド社 2001年 P・F・ドラッカー著 上田惇生編訳)~目標管理をする上で大切なことは?~
こんにちは、石井です。
これまで複数回にわたって、P・F・ドラッカーの「エッセンシャル版 マネジメント基本と原則」を取り上げています。
本日はその第十回目として、「マネジメントにおける目標管理」を考えていきます。
ドラッカーのマネジメントは、ややアカデミック性が高く、現場で応用するには一定の障壁があると考えられていることもあります。
そこで今回は、ドラッカースクールを卒業生である藤田勝利氏の著作「ドラッカースクールで学んだ本当のマネジメント(日経BP 2021年)」も参考にしながら読み解いきます。
第1回:マネジメントの基本と原則とは?
第2回:企業の目的とは?
第3回:戦略計画とは?
第4回:仕事の生産性とは?
第5回:仕事の働きがいとは?
第6回:マネジメントとチーム作りとは?
第7回:マネージャーの2つの役割とは?
第8回:マネージャーの5つの仕事とは?
第9回:マネジメント人材の開発とは?
目次
1. マネジメント人材の開発(前回のあらすじ)
ドラッカーは、「マネージャーは育つべきものであって、生まれつきではない。」という言葉を残しているように、マネジメント能力は後天的に身につくものであるという立場を取っています。
つまり、会社にとって優れたマネージャーを採用することも一手ですが、育成することに力を入れる必要があります。
これを示唆する言葉として、ドラッカーはやや極端な表現をしています。
マネジメント開発は、人事計画やエリート探しではない。それらのものはすべて無駄である。有害さえある。
では、どのように育成していけば良いのでしょうか。
ドラッカーは、マネジメント開発をする上で大切なことは「成果をあげさせる」としています。
その上で、実施してはならないことは、「メンバーの性格を変えることや、人の改造をすること」だと指摘しています。
これらのメッセージから、ドラッカーが、いかにメンバー一人ひとりが持ち合わせた「強み」を意識してマネジメントをしていくことを大切にしていたか、その想いを感じることができます。
2. 目標管理の「目標」
ドラッカーが本書で述べている「目標管理」で、最も学ぶべきポイントは「目標」への考え方であり、それをどのように「管理」していくのかということだと思います。
まず、「目標」を考えてみます。
ドラッカーは、目標に関して3つの提言をしています。
・目標は自らの率いる部門があげるべき成果を明らかにしなければならない。
・他部門の目標達成の助けとなるべき貢献を明らかにしなければならない。
・他部門に期待できる貢献を明らかにしなければならない。
目標について、多くの会社や組織で①を考える機会は多くあると思います。半期や年間を通して、どのような成果を出したいのかということから逆算をして目標に落とし込むことは一般的な考え方です。
しかし、②と③はいかがでしょうか?
これは、ドラッカーがいかにより良い組織を創っていくことを念頭に置いていたのかを推察できるメッセージだと考えています。
会社全体の目標を達成するために、私たちは組織を持ちます。しかし、それぞれの組織が目標を持つと、組織としての目標を達成することが一番に優先されるということはよくあることではないでしょうか。
これを、一般的な言葉では「部分最適」と言います。
確かに、組織が持つ目標の方が達成までの道筋は見えやすく、実務と連動したイメージを持つこともできます。
しかし、私たちが忘れてはならないことは、「会社としての目標達成」です。つまり、「全体最適」を考えた結果が組織を作ることであり、組織独自の目標を設定することにつながっているということです。
組織の目標の先に、会社の目標が見えない状態は避けるべきことなのです。
3. 目標管理の「管理」
続いて、「管理」を見ていきましょう。
この言葉は、マネジメント:Managementが語源です。ドラッカーの目標管理とは、英訳すると、Management by Objectiveです。
さて、目標をマネジメントする上で大切なことは何でしょうか。
ドラッカーが強調していることで、私たちが学ぶべき大切なことは2つあります。
1つ目は、「短期的視点」と「長期的な視点」を考慮することです。
ビジネスにおいて、短期的に目標を達成したいという圧力は、さまざまな場面で発生します。例えば、期末の締めを直前に控えると、多くの営業担当者は値下げをしてでも短期的に売上を出すことに集中します。
しかし、マネージャーとして「これらの短期的な活動は、本当に正しいのか?」ということを問いかけることが必要です。
もちろん、短期的な成果創出を目指す行為の全てが悪いわけではありませんが、長期的な事柄も視野に入れた活動をしていくことも必要なのです。
2つ目は、量的に測ることができることだけにフォーカスしないということです。
裏を返せば、質的なことにも注力すべきであり、メンバーの成長や仕事への態度などさまざまな観点で目標を見つめ、マネジメントしていく必要があるのです。
4. おわりに
いかがでしたでしょうか?
本日は、ドラッカーのマネジメントの「目標管理」について考えてみました。
日常的に目標を持つことは一般的ですが、それをどのようにマネジメントしていくのかを深く考える機会はなかなかありません。
まずは、ドラッカーが考える目標とは何か?そして、それをどのようにマネジメントしていくのか?ということを知ることが大切です。その上で、自社や自身にあったマネジメントスタイルを考えていくべきなのでしょう。
次回は自己管理を考えていきましょう。
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石井 健博
ブランドマネージャーとして、マーケティングを担当。
営業・リベラルアーツ・マネジメントなどのコラムを発信中。
趣味は、読書・英語学習・ラグビー。5歳息子のパパ。