ALVAS JOURNAL

なぜ、私たちは自身を幸せにする意思決定をしないのか?

こんにちは、石井です。

私は、2017年より株式会社アルヴァスデザインにジョインしたメンバーで、営業・教育コンテンツ開発・講師登壇、そしてマーケティングなど幅広く仕事をしていきました。

現在は、イギリスにあるリーズ大学のビジネススクールのMBAコースに留学しています。留学期間は、2022年9月から約1年間です。

こちらの留学レポートは、不定期に更新し、イギリス現地のMBAコースでの学びや、国際交流などを配信していく予定です。

過去の記事はこちらです。

リーズ大学MBAの留学記スタートします。
寮の様子を公開しています。
「MBAでどのように学ぶのか」を学ぶ:その1
「MBAでどのように学ぶのか」を学ぶ:その2
キャリアを考える①:キャリアをどう考えるか?
キャリアを考える②:今の時代、履歴書はAIでチェックされると思いなさい。
ケーススタディで意識すべきこと①
ケーススタディで意識すべきこと②
意思決定の際に意識したいファスト&スロー
専門家になる必要はないけど知らないといけないアカウンティング&ファイナンス
意思決定の前に知って得する8つの欠陥
PEST分析に加えて大切なEとL!
5F(ファイブフォース)分析+αが現代の主流!?
戦略でも経済学でも、どっちのクラスでも頻発する3つの産業タイプ
8つの観点で異文化マネジメントを考える
異文化マネジメントの4つのキモ

目次

    1. 意思決定とは?

    私たちは、日々の生活の中でさまざまな意思決定をしています。

    熟考の末の意思決定もあれば、無意識にしているものも含まれます。無意識の状態では、いつも同じような選択をしたり、直感で意志を決めたりしています。

    このように意思決定の機会はたくさんありますが、それによって後の展開が大きく変わることは容易に想像できます。

    身近な例で言うと、毎日ランニングをしようと決めたとします。これは、大変素晴らしい意思決定かもしれません。

    最初の方は、ランニングが継続していましたが、ある日「今日だけは休もうかな」という気持ちが湧いてきたとします。

    仮に、休むという選択をしたら、どのようなことが起こると思いますか?

    健康面から言えば、一日休んだくらいでは、何も変わらないかもしれません。しかし、「一日だけ休む」という意思決定は、次に休みたいと思ったときに、より休みを選択する可能性を高めるかもしれません。

    このように、一回の意思決定は単発で終わらずに、将来にも影響を及ぼす可能性があります

    2. 私たちは、幸せになりたいのか?

    ここから、意思決定のクラスで使用した教材を元にお話を進めていきます。いつもながら、私の和訳&意訳が混ざっていることを、ご了承ください。

    著 者 :Hsee, C. K., & Hastie, R.

    出 版 :2006年

    タイトル:Decision and experience: why don’t we choose what makes us happy? Trends in Cognitive Sciences, 10, (P.31–37)

    さて、タイトルにもある通り、「私たちは幸せになりたいと思っているにも関わらず、不幸せになるような意思決定をしているのは、なぜなのか?」を探っていくクラスに参加しました。

    先ほどのランニングの例のようなことが、身近で起こることはありませんか?

    私は、中期的な幸せを犠牲にして、短期的な幸せを掴みたいと感じることが、しばしばある気がしています。

    皆さんは、どのようなことを思い浮かべますか?

    では、私たちを幸せにする意思決定がなぜできないのか?という要因を見ていきましょう。

    3. 将来予測を狂わす5つのバイアス

    私たちは意思決定をする際に、自然と過去の経験を元にしたり、直感に頼ったりして判断を下しています。

    これらには、5つのバイアスが影響しており、結果として私たちを不幸せにする可能性があると言われています。

    ・その1:Impact bias(インパクトバイアス)

    私たちは、特に感情的になったシーンや出来事を過大評価することがあります。仕事でもプライベートでも、人間は感情のある動物ですから、さまざまな想いを感受します。

    過去のこのような経験は、自身の意思決定にも影響を及ぼします。

    例えば、感情的になったシーンにおいては、Focalismといって中心的なエピドート以外のものが記憶として排除され、周りにあった影響物がなかったかのように扱われることがあります。

    また、感情的な出来事を経験した後、人間はそれを合理的に処理しようとすることもあります。この働きでは、感情的になったシーン自体の影響が弱まることがあります。

    ・その2:Projection bias(投影バイアス)

    現状の状況が続くと感じて、正確な予想ができないことを指します。現状を必要以上に、そして過度に未来に反映してしまうこととも言えるでしょう。

    これは、会社における目標数値や次年度の予算を決める際にも起こり得ることでしょう。

    その年に特有だったはずのことが、まるで常態化しているもののように捉えられて、将来を予測すると期待以上の成果を得られなかったという結果が待っている可能性があります。

    ・その3:Distinction bias(区別バイアス)

    何かを選ぶ際に、似たもの同士の差に目を向けすぎて、それが本来の意思決定に影響を及ぼすことです。

    例えば、A4クラスとA5クラスの和牛のハンバーガーがあったとします。価格は少し高くても、せっかくだからA5にしようかな…というような意思決定の機会に遭遇したことはありませんか。

    でも、実際に食べてみたところでA4とA5の違いはわからないかもしれません。

    このように似たもの同士を並べられると、その違いに焦点を当てすぎてしまうというのが本バイアスです。

    ・その4:Memory bias(記憶バイアス)

    私たちの記憶は、不確かなものです。当然のことながら、記憶違いによる将来予測は間違った方向に進む可能性もあります。

    加えて、Peak End Rule(ピークエンドの法則)も影響を及ぼします。これは、ある事象に対して、最も感情が高まったときと、その事象の終わりの印象だけで、全体の印象を記憶してしまうことです。

    どこかに旅行に行ったときも、最も感情が高まったときと、終わりの印象が良ければ、私たちは全体の印象も良いものとして記憶する傾向にあるようです。

    ・その5:Belief bias(信念バイアス)

    信じることが、意思決定に影響を及ぼすバイアスです。

    具体例をご説明します。

    例えば、パリの旅行に無料で招待されたとします。これは、大変喜ばしいことですね。

    また、一方でハワイの旅行も同様に無料で招待されました。これも、大変嬉しいことです。

    ただ、パリとハワイの無料の旅行のどちらかを選択してください。と言われたら、どのような気持ちになりますか?

    確かに、嬉しい気持ちもありますが、どちらかを失った気持ちになりますよね。

    これは、信念バイアスの中の1つである比較効果による感情の変化です。

    私たちは意思決定をする際に、そのものを見るよりも比較することで、どっちかの選択肢を選んだら失ってしまう何かを考えます。

    例えば、パリを選ぶと、海で過ごす時間を失ったような気持ちになり、ハワイを選ぶと歴史的な博物館には行けないという気持ちになります。

    3. おわりに

    いかがでしたでしょうか。

    今回は、私たちの意思決定が、なぜ自身を不幸せにするのかを考えてみました。5つのバイアスのどれかに、当てはまるものはありましたか?

    もし、ご自身の意思決定がバイアスに当てはまっているものがあれば、似たようなシチュエーションにおいて、冷静に意思決定をしてみようと心掛けてみることも良いかもしれませんね。

    次回は、本コラムの続きで「意思決定をしたのに、なかなかその通りに行動できない私たち」というテーマです。

    ~イギリスであったこんなこと⑰~

    イギリスの寮の避難訓練は、半端じゃありません。

    日本のように、事前にアナウンスされずに、早朝に訓練が実施されることもあります。

    確かに事前にアナウンスされては、本番と似たシチュエーションになりませんから、より実践的です。笑

    石井 健博

    ブランドマネージャーとして、マーケティングを担当。
    営業・リベラルアーツ・マネジメントなどのコラムを発信中。
    趣味は、読書・英語学習・ラグビー。5歳息子のパパ。

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